tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

「労資」関係の復活?

2008年03月12日 11時00分07秒 | 労働
「労資」関係の復活?
 今日、3月12日は2008年労使交渉における大手の集中回答日です。結果は後ほどお明らかになるでしょうが、利益は伸びていても、賃上げは昨年とあまり変わらないものというのがマスコミなどの報道から感じられる所です

 労使関係というのは、どちらかというと新しい言葉で、昔は「労資」関係でした。総労働対総資本などといわれ、労働者と資本家の対立関係がもともとの「労資」関係だったわけです。しかしいわゆる「 経営者革命」ということになり、資本家(株主)は背後に後退して、経営者(使用者)が労働組合の交渉相手となる様になって、「労資」関係は、「労使」関係になってもう長い期間がたちました。

 日本の場合には特にそうですが、経営者というのは、どちらかというと、資本家の代弁者というより、「労働と資本の間の調整者」というような立場で、労働側にも十分の理解をもちながら、労働と資本の間の付加価値配分(労使交渉)にあたってきたように思われます。

 「労資」交渉が「労使」交渉になったことで、むき出しの利害対立が多かった交渉のあり方が、より理性的、合理的、論理的なものになってきたことは否めない事実と思います。

 しかし、最近再び状況が変わってきました。M&Aが盛んになり、投資ファンドの活動が活発になってきたことです。物言う株主が増えてきたのです。資本主義ですから資本の動きが活発になるのは当然かもしれませんが、駄洒落を言えば、以前はIRといえば(industrial relations=労使関係)だったのが、最近ではIRは(investors relations =株主関係)だとみんな思っています。

 そのせいで、財務省の「法人企業統計」などで見ても、利益処分の中で株主配当は急増しています。以前は安定配当などといっていましたが、企業防衛の立場からも配当率を上げざるを得なくなったのでしょう。配当は法人税を払った後の純利益から払うものですから、企業にとっては金利は安いが、配当コストは高いということになり、その分内部留保が大きく圧迫されています。内部留保はコスト・フリーのお金で、企業発展の原動力ですから、経営学上は問題です。

 しかも、増配要求の強いいわゆる「投資ファンド」は安定株主ではありません。さらに、この内部留保への圧迫は、利益計上の前の付加価値分配、つまり賃金への分配にも当然影響を与えます。今までは、安定配当の下で、経営計画でも、「内部留保と人件費のバランス」を中心に考えればよかったのですが、そこに法人税付きの配当への分配が入ってくるわけです。

 資本が投資ファンドという形をとって、あらためて企業の経営成果(付加価値)に対してより大きな配分を要求してきたという意味で、経営者に委任していた労使関係を、再び「労資」関係にしようとしているといった風にも見えてくる最近の状況です。

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