tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

ギャンブルと経済:土地バブルの想い出

2011年11月24日 12時19分14秒 | 経済
ギャンブルと経済:土地バブルの想い出
 前回は、ギャンブルが経済活動の役に立つかといいう問題を考えてみましたが、今回は、具体的な日本の経験である土地バブルの問題で考えてみましょう。

 プラザ合意による円高で、日本経済空洞化が言われる中で、内需拡大策をアメリカから要請され、政府・日銀が極端な金融緩和政策をとった結果、もともと土地神話を持っていた日本は、土地バブルに突入しました。

 銀行は、土地担保さえあれば企業に金を貸し、土地を持っていなければ金を貸して土地を買わせ、それを担保に金を貸しました。オイルショック後少し落ち着いていた地価は急激に値上がりをはじめ、当時の不動産研究所の調査では6大都市の平均地価は1985年から1990年の5年間に3.1倍になり、「日本の土地を全部売れば土地面積25倍のアメリカが4つ買える」などと言われました。

 土地を買って値上がりを待つ企業、ゴルフ場を作って会員権を高く売る企業、値上り期待でゴルフ場会員権を買う人々、日本中が土地ブームに沸きました。
 都市近郊農家は土地を切り売りして巨額の収入を得、練馬農協の預金残高が全国農協のトップになりました。
こうした所得はキャピタルゲインですから、地価がいくら値上がりしてもGDPは増えません。
 
 最も苦しんだのは、一般サラリーマンで、地価暴騰で一生かかっても家が買えない状況になりました。銀行は2世代住宅ローンを始めました。
 連合は、オイルショックの教訓から、賃上げは実体経済に見合ったまともな水準でしたからインフレにはならず、日本経済は安定し「ジャパンアズナンバーワン」といわれる世界最高のパフォーマンスを示していました。

 しかしその中で起こっていたことは、日本経済の健全な成長に貢献しているサラリーマンの所得が、住宅取得等のプロセスを通じて、土地保有者に大幅に「移転」していたという現象です。
 
 当時財界では日経連が連合とともに「地価上昇を止めよ」と主張していたのに対し、経団連は「地価上昇は望ましい」といい、この点では真っ二つに割れていたのをご記憶の方も多いと思います。

 経済実体とかけ離れた価格(評価額)の上昇は土地であれ、証券や債券であれ、いつか暴落します。アメリカのサブプライム問題も全く同じです。

 ところで、経済のギャンブル化は、歴史的に見れば、有名なチューリップ球根バブルや南海泡沫会社から、わが国では上記の土地バブルなど、間欠的に起こっています。しかし最近では、金融取引の極端な多様化(金融工学の発達というと聞こえがいいですが)とそれによって超巨大化した「投機マネー」という形でいつでも起こりえます。

 さて、こうした経験や現実から、いろいろな教訓が引き出せるように思います。