春闘は大手が終わっても中堅、中小企業を中心に続いていくでしょう。
前回は、連合が中小企業の賃金水準の引き上げについて、大変積極的な芳野会長のコメントが出されたことを書きました。
このブログも、及ばずながら、連合が格差是正への強い意欲を示し、日本の労働組合のナショナルセンターとして、格差是正という社会正義を掲げての活動の積極化を目指し、春闘の中で、中小企業の賃金水準の引き上げについて特に力を注ぐことに応援の旗を振りました。
日本経済の成長、発展を直接に担うのは日本の産業界であり、その構成は産業界の労使です。
嘗て、日本経済が高度成長を誇った戦後の長い時期を通じて、日本の労使関係は、欧米と違った独特の進化を遂げてきました。
欧米でも産業社会の在り方として産業民主主義が言われましたが、欧米の場合はどちらかと言えば労使は対立するものという伝統的な考えからが先に立って、合理的な労使の協調という視点まではなかなか行きつけなかった(行きつけない)ようです。
日本の場合には、基底には、協力して産業の生産活動を支える労使の信頼関係をおき、生産活動では協力、分配問題では対立という在り方が一般化していたと言えるでしょう。
更に1970年代の石油危機以降は、分配における対立の中で、労使双方にとって、より合理的な分配が、より効率的な生産活動を実現するといった、最適な労使分配を模索するという段階にまで進んでいたように思われます。
石油危機以降の、困難の中でも労働サイドが力任せの要求をせず、欧米のようなスタグフレーションを未然に防止した実績もあります。
前置きが長くなりましたが、日本経団連が毎年春闘の時期に出す「経労委報告」でも、昔使われた「春闘」という言葉は使わず「春季労使交渉・協議」という言葉を使っています(このブログでの「春闘」は俳句に季語の借用です)。
というわけで、昨日は連合芳野会長の3月13日付のコメントを紹介しましたが、今日は2025年版の日本経団連「経労委報告」の「P150」を紹介したいと思います。
これは報告書本文の最後のページで、「未来共創型労使関係の確立」というページですが、そこに述べられていることは
〇労働組合は「経営のパートナー」かつ重要な「ステークホルダー」
〇労使は「闘争」関係ではなく「未来を共創する関係を目指していくもの」
おいった言葉です。
ヨーロッパではドイツが「労使共同決定法」なども持ち、長期に亘って協調的な労使関係の構築に努力してきているようです。
日本の場合、特徴的なことは、日本の伝統文化によるものでしょうか、「労使関係」そのものについての基本的な認識が、同じ平面に立っていることから出発しているというところにあるようで。同じ平面にいるのですから、分断するよりも協力する方が自然でやり易いということなのかもしれません。
こうした伝統文化も、元々支配、被支配の関係も奴隷制も無かった縄文時代1万有余年の日本列島に住んだ人々から受け継いだものかもしれません。
いずれにしても、この日本的な特性を生かすことが、これからの世界では役に立つように思われますから、先ずはこの特性を日本の労使関係に活用し、経済を立て直し、かつてのように「LOOK EAST」,「LOOK JAPAN」と言われるような日本の経済社会の再構築に向かっての労使の頑張りを期待したいと思っています。