tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

政治は「キャッチフレーズ」からでいいのか

2023年06月02日 16時09分43秒 | 政治
「異次元の少子化対策」というのが当面の話題になっています。
これは、日銀が(やむを得ず)続けた長期の金融緩和政策の綽名から「異次元」という言葉を借用したものでしょう。

大体こうしたあだ名はマスコミなどが付けるようです。現実があって、その現実を巧みに、ユーモア意識も持って表現するから、日銀のご苦労も察して「これなら確かに異次元金融緩和だ」とみんなが使う事になるのでしょう。

思い出せば、海外でも、サッチャリズム(サッチャー首相が、伝統的に超強力な英国の労働運動を抑えきって、スタグフレーションからの脱出を成し遂げた)とか、レーガノミックス(米国でスタグフレーション脱出のために、高所特者優先の超フラット税制を導入したレーガン大統領の政策)などがあります。

これらは皆、マスコミからの贈り名でしょうが、どうもこうした習わしが日本ではとんだ「誤用」をされたようで、その始まりは安倍総理の「アベノミクス」でしょう。

先ず、成果が出ないうちから政策を打つ本人がj自分の名前を付けて「キャッチフレーズ」にしたのです。
国民は上の例から判断して「きっと成果が出るのだろう」と期待してしまったのですが、その成果は日銀の「異次元金融緩和」の部分だけで、財政再建は遠のくばかり、構造改革はモリ・カケのスキャンダルに矮小化された記憶だけという惨状でした。

やっぱり実績があってそれに名前が付くのが順で、名前を先につけて中身がないというのはまずいなと思っていました。

自民党も岸田さんになって、真面目そうだなと感じていたのですが、リーダーのポストに就くと舞い上がるのでしょうか、「キシダ」の名前は付きませんが、何か中身の解らない「キャッチフレーズ」が次々と打ち出されてくるようになりました。

曰く「成長と分配の好循環」、曰く「構造的賃上げ」、曰く「異次元の少子化対策」などなどです。

キャッチフレーズとしてはカッコよく、如何にも素敵な中身がありそうで期待を持たせるのですが、どうも、中身は後から「情況を見ながら考える」ということのようです。

このグログでも、「成長と分配の好循環」とは多分こういう意味なのだろうとか、構造的賃上げはこういう意味で使っているのだろうとか忖度して解説してみましたが、それからの現実の政策を見ると、政府そのものに、そうした政策を表す「言葉」の本当の意味が解ってないとしか思われないのです。

審議会や有識者の会議でいろいろ議論もあるようですが、意見はそれぞれで、これが決め手で、後世に名を残すような具体的な政策が出て来たわけではありせん。

この30年ほどで、日本の経済社会構造では、格差化が急速に進みました。この原因の所得格差の背後には、教育訓練の格差があるのは明らかです。先ずは、正社員と非正規の格差です。表面的には賃金格差ですが、その背後にあるのは教育訓練、熟練の格差です。
一方、経済社会の格差化は、成長発展の阻害要因である事が明らかです。

この問題はこのブログでは再三述べて来ていますが、「成長と分配」にも「構造的賃上げ」にも、その中心である格差問題の影の薄いのが気になります。

「異次元の少子化対策」も、財源のメドも立たないのに「所得制限撤廃」が謳われているという事は、格差問題より重要な「何か」に配慮の気配が感じられます。

先ず国民に魅力のある「キャッチフレーズ」を打ち出せば、当面、国民を喜ばせる効果はあるとしても、財源は後からという事ですと、そうか「異次元」というのは「財源がない対策」という意味だったのかなどと揶揄する言葉も聞かれる様です。

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