tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

低賃金という武器:途上国発展の構図

2010年10月04日 14時40分32秒 | 国際経済
低賃金という武器:途上国発展の構図
 たまたまバングラデシュにいってきたことと、バングラデシュがアジアで最も低い賃金レベルの国と自認しているということで、こんな問題を考えてみました。

 バングラデシュの労働大臣は、バングラデシュの賃金水準はアジアで最も低いレベルで、しかも真面目によく働く。是非バングラデシュの労働力を活用してほしいという趣旨の発言をしていました。

 特にバングラデシュは、海外への出稼ぎ労働が多く、その多くはイスラム教という共通の宗教を持つ産油国に出ていて、その送金収入は総輸出額に対比してもその7割程にもなり、それで経常国際収支は黒字になるという状況で、バングラデシュにとっては大変重要なもののなっているようです。

 ところで、海外に出稼ぎに行けば、原則その国の最低賃金法で最低の賃金が決まりますから、バングラデシュの賃金水準で働いてもらうわけではありませんが、バングラデシュに企業進出すれば、バングラデシュの賃金水準で働いてもらうことが出来ます。

 ということで、高度技術を持った先進国の企業(工場)が、途上国に出て行けば、生産性は、先進国のレベルで、賃金水準は、途上国のレベルという事もありうるわけです。

 もちろん、先進国並みの生産性を上げるには、社会インフラも先進国並でなければなりません。交通、通信とか、人々がルールや約束、時間を守るといった種々のインフラの整備が必要ですが、空港の整備や携帯電話の発達で、以前に比べれば、インフラ整備は格段に容易になっているのではないでしょうか。

 日本企業がアジアに 5S活動やQCサークルを持ち込んだのは、人間行動の面のインフラの改善に大きな効果があったようです。

 途上国が自力だけで経済発展をしようとしても、生産性は簡単には上がらず、ようやく生産性が2倍になったときには賃金コストは2倍以上、3倍ぐらいになっているというようなことで、先進国になかなか追いつけないでしょう。賃金水準が10分の1でも、生産性も10分の1だったら、競争力はありません。

 しかし今は、技術を持った先進企業の進出で、賃金10分の1、生産性5分の1とか3分の1といったことが可能になります。競争力は圧倒的です。
 これが途上国の急速な経済発展を可能にするわけで、同時に、先進国の企業にとっても、大きなビジネスチャンス、大きな進出メリットになるわけです。

 それではその影の部分、どこでマイナスが生じるかというと、先進国で行われるべき生産活動が途上国に移転し、先進国の経済成長が停滞し、雇用が失われるという点です。

 しかし長い目で見れば、途上国の経済レベルの向上が、必ずグローバルな意味でのマーケットの拡大、人類全体の生活水準の向上、平和の増進につながるということでしょう。

 今、アジア諸国はそのための大きな歴史的実験のさなかにあります。この動きのマイナス面をいかに少なくし、成果をいかに大きくするかが、APECやASEMの基本的課題でしょう。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。