tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

2022年5月消費者物価の動向

2022年06月24日 14時23分13秒 | 経済
今朝、5月分の消費者物価統計が発表になりました。
先日までの国会でも、今度の参院選でも物価問題は一番大きな争点ですが、さてどんなことになっているのでしょうか。

先ず、消費者物価の原指数を見てみましょう。これは2020年の年平均の物価を100にして、その後物価がどう動いているかを示すものです。
マスコミでは「総合」(2.5%)か「生鮮食品を除く総合」(2.1%)の数字(対前年上昇率)を見出しにすることが多いようですが、今の物価上昇は主にエネルギー価格の上昇によるものですから、「生鮮食品とエネルギーを除く総合」も加えて3種類の物価を比較してみると今の状況が解り易くなります。

      消費者物価指数の原系列の動き(2020年=100)


消費者物価の調査品目の全部が入っている「総合」が最も上がっていて、2020年つまり2年前に比べてみますと「総合」が1.8%、「生鮮食品を除く総合」が1.6%、「生鮮食品とエネルギーを除く総合」になりますと、この2年間で、わずか0.1%の上昇です。

生鮮食品はお天気次第ですから、結局はエネルギー価格が国際的に上がって、それに、3月ごろから円安が進んで、という事で、輸入品の価格がそのに影響された分上がって、全体を示す「総合」の上昇が早くなったという事でしょう。

ところで、グラフ見ると、去年の4月、急に物価が下がっています。これは、携帯電話料金の大幅値下げがあったからです。その後じりじりあがっているのですが、上がっているのは殆どエネルギーで、原油や天然ガスが上がらなければ、日本の物価はほとんど上がっていないということが解ります(緑の線)。

ところがアメリカやヨーロッパの物価は8%とか9%も上がっているのでびっくりします。実は、アメリカやヨーロッパの物価上昇をこれと同じ様なグラフで見れば、一番上げ幅の大きいのは「緑色の線」なのです。これが5-6%で青や赤の線は、その3%ぐらい上というところでしょう。

アメリカ・ヨーロッパは金融引き締めで物価を下げようとしていますが、日本は金融は緩めっぱなしです。この違いは、消費者物価上昇の内容の違いからきているのです。

次に下のグラフはマスコミの見出しに出る「対前年上昇率」をグラフにしたものです。去年の同月より何%高くなったかという数字ですが、上昇率は、この5月で、「総合」2.5%、「生鮮食品を除く総合」2.1%で、「生鮮食品とエネルギーを除く総合」(緑の線)は、わずか0.8%です。
「総合」で欧米の7~9%と言う水準、「緑の線」6%前後と高いのとはとは大違いです。

      昨年4月以降の消費者物価指数の対前年同期比の推移


それでも、今年に入って、各色の線とも急上昇ですが、欧米並みにはいきそうにありません。ところで、3本の線は共通に「4月から5月は横ばい」です。これは上の「原指数」のグラフで分かりますように、物価上昇が止まったのではなく、昨年4月の携帯料金の引き下げの影響で今年の4月が上がり過ぎ、5月は横ばいになったという事です、来月からはまた上がることになるでしょう。先行きに注目しましょう。

日本は国内ではインフレなど起きないように注意しているのですが、エネルギーの値上がりや円安といった、国際関係の中でインフレにさせられているという事がはっきり出ています。

こういう時の物価論議は、感覚的や感情的な議論になりやすいのですが、冷静な理論的な議論が望まれるところです。