tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

成長と分配の好循環:再論 4、分配における政府の役割

2022年06月05日 11時58分58秒 | 経済
経済は基本的に消費と投資(=貯蓄)で成り立っています。どちらが多すぎても少なすぎても経済成長は上手く行きません。
適切な分配を維持して「均衡成長」を実現するのが理想ですが、自由経済に任せておいては必ずしも適切な分配にはなりません。

そこで、政府が、成長の目標を決めて、その実現のために「将来に向けて」適切な分配を維持するための「再分配」を行います。使う手段は、税制と社会保障で、これが財政政策の基本です。

ここで一番重要なことは「将来志向」という事です。
岸田政権が「新しい資本主義」を掲げ「成長と分配の好循環」と言った時、これは素晴らしい、これで日本は立ち直ると思いました。

資本主義にはアメリカ型の「自由重視」から北欧流の「福祉(平等)重視」まで幅があります。岸田構想はその幅のどのあたりに日本を位置づけるか(新しい資本主義)を国民に示し、そのために必要な再分配(税制と社会保障)の在り方を明らかにする(成長と分配の好循環)ことで、日本経済の将来像の明確化を宣言したと受け取ったわけです。

これは言葉だけが踊るアベノミクスとは大違いと思ったのですが、何か次第にアベノミクスに引き寄せられているという心配がこのシリーズを書かせているのです。

長くならないように、主要な問題点のみ絞って、以下、列挙します。
まず、消費を支える「賃金への分配」については、政府は「再分配」に徹し、格差拡大を阻止、格差縮小を図るための所得税累進税率の見直しが必要になるはずです。消費税問題はそのあとの問題です。春闘介入などは問題外。(賃金制度と福祉政策は別途)

法人税制は、小出しの減税はやめ、国際標準より高めでも、国内投資の総合的な利点を明確に説明すべきでしょう。
国が将来志向であれば、企業における分配も(人への投資、研究開発重視など)将来志向になっていくでしょう。

再分配の原資を税で取りにくいから国債発行で国民から借りて済ますという「便法」の多用は、分配問題に深刻な歪みを齎しています。

アベノマスクや一律10万円給付、その他の給付金は、全て国債で賄われていますが(雇用調整助成金は企業の負担)、これは、国民所得の再分配、日本経済の望ましい成長のための資金を、安易なパッチワーク、選挙のための人気取りで日本の民主主義を「ポピュリズム化」するために活用している面が見え見えです。

岸田政権の掲げた旗印は、こうした場当たり的な政府財政の使途を、日本の将来に役立つ再分配の一環として、財政、税制とのバランスを考えた上で、合目的なものにしていくことではなかったのでしょうか。

こうした不適切を支えている金融面のゼロ金利政策は、同時に、日本の家計の消費行動に異常な貯蓄志向(貯金貧乏)を齎していることにも気付くべきでしょう。
NISAやiDeCoより、かつての厚生年金基金の方が良かったという人は多いでしょう。

これらの問題は皆絡まり合っています。関係省庁が協力して、知恵を出し合い、十分な「摺り合わせ」をして、まず総合的な構想を固める必要があるようです。

邪魔も入るでしょうが、改めて岸田構想への本格的な取り組みを期待するところです。