tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

金融政策の限界:スタグフレーションの懸念

2022年06月17日 14時01分02秒 | 経済
アメリカの中央銀行であるFRBが日本の公定歩合に相当する「ffレート」を0.75%の引き上げを決めました。

3月0.25%引き上げ、5月0.5%引き上げ、これは倍速の引き上げと言われましたが、今回は3倍速という異例の引き上げになりました。

これで結局金利そのものは1.50~1.75%という水準になりました、パウエルFRB議長は物価上昇の状況によっては、更なる大幅引き上げを示唆するといった様子で、何が何でも「インフレ退治」といった思いが感じられます。

これに対して日本は、今日の日銀の政策決定会合終了後黒田総裁から説明があると思いますが、異次元金融緩和継続の予想で、金利引き上げについて何か触れるかどうかといった程度の予想のようです。

日本の消費者物価はまだまだ上昇率は低く4月の段階で、2.5%これから上がるとの予想ですが、アメリカの8%台とは大違いですから日銀はあまり動かないのではといわれています。

しかし、日銀が気にしている10年物国債の利回りは日銀の上限2.5%を、アメリカの影響を受けて一時上回ったようで、日銀も多少神経質というところでしょう。

アメリカがインフレの早期の鎮静化を狙う気持ちは解りますが、インフレを金融政策だけで抑えようというのはかなり難しい話で、当然金利を劇薬のように強めに使わなければならないでしょう。

その結果は前々回に懸念を指摘しましたように、スタグフレーション化の恐れは大きく、すでにアメリカ経済のスタグフレーションだと指摘する向きもあるようです。

何故スタグフレーション化するかと言いますと、今のアメリカ、ヨーロッパ起きているインフレはアメリカでいえばコアコアの部分(日本の「生鮮食品とエネルギーを除く総合」に対応するもので、つまりは自家製インフレ、賃金コストアップや便乗値上げで起きているものですから、引き締めで売り上げが落ちると、賃金コストは下がらず金融コストの上昇も加わって、物価上昇が続き、利益が急激に減少するという事が起きます。この状態がつづくのがスタグフレーションです。

こうならないためには、国際価格が上昇して(原油など)輸入インフレが起きたとき、輸入コストの上昇は認め(国内価格に転嫁し)、しかし便乗値上げをしてそれで賃上げをする、また物価上昇を梃子に大幅の賃上げをするといったことを避けることが必要です。

コアコア物価が上がった時に金融引き締めで対応するとるいうのは、極めて困難だという事はスタグフレーションが「先進国病」といわれたことからも、既に1970年代から実は経験済みのことなのです。

その後労働組合の力が弱くなって、インフレが起きにくくなりましたが、今回のコロナ禍と資源価格上昇で、輸入インフレが起きると労働組合が覚醒し、賃上げが復活、自家製インフレも復活したのでしょう。

日本の場合は、労働組合がまだ真面目に賃金インフレを起こすような大幅賃上げをしていませんから、物価は上がらず(コアコア部分:アメリカ6%台、EU4%台、日本1%)日銀はゼロ金利維持で景気刺激、賃上げ促進でやれています。

先ずは、アメリカ、EUのインフレが早期に鎮静するかどうか?、よく見ていくべきでしょう。