tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

成長と分配の好循環:再論 2、分配の中身の問題

2022年06月03日 15時12分05秒 | 経済
前回は成長と分配の基本について見てきました。
賃金と利益の分配(労働分配率と資本分配率)
消費と投資の分配(GDPの支出面:所得分配の結果)と分けて見たた場合、賃金や消費でみんな使ってしまわないで、利益や投資の分を増やせばそれだけ成長が高くなるという事でした。

基本は、米や麦の収穫のうち、今年の食用と来年への種籾をどう分けるかという事です。
今回は、食用と種籾に分けたその中身の問題です。種籾を多く残せば、来年の収量は増え、その分、来年の食用も増え、再来年の種籾も増やせます。来年再来年とより豊かになるのが経済成長です

という事で、ここで言う今年の食用とは経済全体では賃金や消費です。国民経済計算でいれば、雇用者報酬の中身で、その分け方の問題です。(種籾は経営では利益であり、経済では貯蓄=投資で、この分は次回に取り上げようと思います)

まず賃金、雇用者報酬について見ますと、ここで問題になるのは、 格差社会との関係です。
年間何億円、何十億円の所得の人は、贅沢をしても、そんなに使い切れません。年間200万円の収入の家庭では、消費を増やしたくても増やせません。

つまり格差社会では、消費に回るはずの金が使い残される可能性が高いのです。
今の日本でいえば、格差社会化で、使い切れない人と、所得が少なく必要な消費が出来ない家庭が増えて、日本全体として消費不足になります。

皆様ご承知のように、いま日本経済不振の最大の理由は「消費不足」です。アベノミクスでこれがひどくなりました。
格差社会は、どうしても経済が消費不足になり、経済成長にブレーキをかけてしまうことになります。

所得分配の格差をなるべく小さくして、消費が増えれば、この問題は解決するのですが、いま世界の情勢は、アメリカ流能力主義が全盛で、日本のそれに倣っているようです。
先ず、この分配の中身の問題、「格差社会化」を直さないと、分配が成長に繋がりません。

実は、日本の場合、もう一つ深刻な問題が在ります。
それは、日本人の真面目さからくるものです。国民性ということもあるのでしょうか、賃金が少なければ、ローンを平気で使う、家があればそれを担保に借金して贅沢をする。といったお国柄などもあるようですが、日本人は真面目です。少ない賃金の中からでも一生懸命貯金をして将来に備えます。

一生懸命貯金すれば、消費はその分少なくなります。「貯金貧乏」で銀行預金はあるが、生活は貧しいという家庭は多いでしょう。

こうなった理由は、政府が少子高齢化を過剰に喧伝し、国民に将来(老後)不安を煽るからでしょう。

人口の減少や労働力人口の減少は、せいぜい年0.5程度ですから、経済成長が1.5%~2%あれば、1人当たりの豊かさは年々2~2.5%増え、先行きが明るくなれば出生率も上がるというのがフランスやスウェーデンの経験です。

政府の責任は、こうした明るい展望を国民が持つように心掛け、それを実現する政策をしっかり取っていくことでしょう。今の日本にはそれが欠如しているようです。

以上、今回は賃金や雇用者報酬(経済学でいう労働分配)の分配の中身の在り方と経済成長の関係について主要な点を見てきました。
これでは成長しないはずだという点が見えてくるのではないでしょうか。
<蛇足>
今朝の新聞に、元総理の安倍さんが元担当副大臣の越智さんに「アベノミクスを否定するのか」と電話で怒鳴ったという記事がありましたが、このレベルの認識で日本経済の問題が解決するものではないでしょう。