tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

日本的経営と矛盾する同一労働・同一賃金

2017年09月15日 15時11分15秒 | 労働
日本的経営と矛盾する同一労働・同一賃金
 ―政府はどこまで固執するのか―
 日本郵政の契約社員3人が、正社員との手当や休暇制度の格差の是正を求めて合計738万円の支払いを日本郵政に求めていた訴訟で、東京地裁から92万円の支払いを命じる判決が出されました。

 日本郵政では、公務員時代の名残りでしょうか、いろいろな手当てがあるようですが、判決では年末年始勤務手当と住居手当、それに夏季冬季休暇、病気休暇について、それらが契約社員に与えられないことは不合理としたようです。

 一方、3人の契約社員が正社員と同じ地位にあることを前提にした格差の是正については否定されたようですが、原告側は控訴の意向のようで、今後、政府の同一労働・同一賃金との整合性が問われる場面も出てくるのかもしれません。

 ところで、このブログでは、一貫して、日本社会の伝統文化の中で仕事をしている日本企業においては、欧米の文化の中で仕事をしている欧米企業とは、大きく異なる「仕事と人間の関係」が成立してきており、それに対する理解がないままに、形式的な同一労働・同一賃金を合理的だとしようとしても、現実問題として混乱を主すだけと指摘してきています。

 根本的な点を1つ指摘すれば、それは、日本企業は「企業を形成するのは人間で、人間が仕事を分担する」と考えているのに対し、欧米企業は「企業は職務の集合体で、その職務に適した人間を採用する」と考えているのです。

 つまりは、日本の経営は人間中心で、欧米の経営は職務中心なのです。日本的経営では人間は「多能」であると考え、欧米では「単能」で良いのです。
 したがって、日本企業では、技術革新などで、仕事がなくなれば、従業員には新しい仕事についてもらいます。欧米では、その仕事をしている従業員は解雇し、新しい仕事の出来る従業員を採用します。

 具体的にイメージしにくいという事であれば、欧米型経営と同様な部分が日本企業の中にもあります。その雇用形態、賃金制度を考えてください。
 それが「非正規社員」です。その仕事のできる人を雇う、仕事がなくなれば解雇、待遇は仕事で決まっている。どの企業をみても、待遇の差は殆どない。時間と技能の切り売りの世界です。

 日本の正社員は、「企業にそのメンバーとして参加」して、その企業とともに苦しみ、ともに喜ぶという「人間集団」の世界です。正社員は企業の血肉、企業そのものの一部なのです。

 日本と欧米のこの違いを理解しないと日本の人事制度、日本的経営は構築できません。しかし、欧米型の、企業と自分は、常にドライな関係がいいという日本人も、次第に増えてきています。

 ですからこのブログでは、正社員がいいと思う方は、企業は原則正社員になってもらいましょう、非正規希望の方は非正規でどうぞです。 
 正社員の待遇は個々の企業の雇用、人事、賃金制度で決めます。非正規希望の方については、待遇は、基本的に地域のマーケットで決まりますから、欧米流の「求人広告」でご覧ください、というのが、基本原則になるような形が最もいいのではないかと考えている次第です。