tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

付加価値率検討の基本は時系列分析

2013年10月01日 10時57分46秒 | 経営
付加価値率検討の基本は時系列分析
 前回、「付加価値率=付加価値/売上高」と書きましたが、これは厳密には「売上高付加価値率」で売上高の代わりに総資本を持ってくれば「総資本付加価値率」ということになります。両者の関係は「総資本付加価値率=売上高付加価値率×総資本回転率」ということは簡単にお解りいただけるとおもますが、こうした財務比率の相互関係を常に頭に入れておおいて、企業の実態を見るときに活用することが大切だと思います。

 余計なことを書きましたが、付加価値の定義にいろいろあり。従って付加価値率にもいろいろあるということですから、最も納得のいく統計を1つ選んで、その方式でわが社の実績を時系列分析するのが最も適切だと思います。

 また、財務比率というのは、産業別にかなり変化がありますし、同じ産業でも、その企業の規模や財務状態によって、違いますから、同業平均とは、直接比較するのではなく企業別の条件を顧慮に入れながら、あくまでも参考として比べて見るといった態度が大事でしょう。
 やはり最も役に立つのは、常に同じ付加価値率の定義で、付加価値率を計算し、その年々の変化をしっかり見て、その変化の原因が何かを的確に把握するのが一番いいと思います。

 年々付加価値率を上げていくといったことは容易ではありません。同じことを繰り返していれば、売価は弱含み、コストは上昇、というのが一般的な傾向で、その結果は付加価値率の低下傾向という形で現れます。
 付加価値率の動向が、企業の元気さ、バイタリティーの強さ、エネルギーレベルの高さを表す、などと言われるのはそのためです。

 例えば、この十数年で見ますと、製造業、特に輸出関連部門の付加価値率は異常に低下しているのが目立ちますが、これは明らかに円高の影響です。円高で日本の輸出産業の売値とコストはともに大幅上昇したのですが、国内コストはなかなか下がらず、ドル建ての売値の方は、国際競争力の中で下げざるを得ないという状況が続いたためです。

 同じような現象は、輸入品と競合する国内産業でも起こりましたが、どちらかというと、輸出産業の方が当然影響は大きかったわけで、こうした数字(財務比率)の変化は経済経営の実態を常に反映するわけです。
 数字と実体を常に関連させて見ることによって、数字の向こうに、現実の経営の実態が透けて見えるようになれば、財務分析も本物でしょう。

 そんな意味で、現実の経営上のどんな変化が、付加価値率にどんな影響を与えるかを、いろいろなケースについて見てみましょう。