tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

事業所別の付加価値を測る簡便法の検討

2013年10月06日 07時48分36秒 | 経営
事業所別の付加価値を測る簡便法の検討
 付加価値と付加価値率で1つの大きな問題は、企業レベルでは容易に計算できるが、事業所別(部門別)に付加価値、付加価値率を計算しようとすると通常行き詰まってしまいます。
 そんなわけで、企業内の部門別の生産性、効率性、収益性などの指標としては部門別・事業所別の粗利益が使われます。

 粗利益(売上総利益)、販売業でいえばマージンを時系列で比較していけば、近似的には事業所別の付加価値率の傾向は把握できると思います。
 しかし毎度述べて来ていますように、付加価値というのは、利益と人件費の合計で、それこそが、人間が資本を使って創出した新たな価値を示すものです。

 しかし、販売業のマージンは人件費を差し引いていませんから、近似的な指標として時系列比較をすることは可能と思いますが、製造業の場合には、直接部門の人件費は差し引かれてしまっていますから、その部分の人件費の抜けたものとなり、直接部門の人件費は
原材料費並みの扱いになり、最も重要な工場の人達の貢献に対して支払われた人件費が付加価値から抜けてしまします。

 製造業の場合は、部門別の付加価値率の時系列比較の近似指標としては、そんな訳で、粗利益にその部門の人件費(製造原価に含まれる人件費に相当する分)を加えたものがより適切と思われます(注)。

 人件費を入れて計算をすれば、高度技能者(したがって人件費も高い)工場の付加価値率が高いということは実証できるでしょう、収益性という側面だけから見れば、付加価値率は高いが、人件費も高いから粗利益率はそれほど高くないといった場合でも、人件費を加えた付加価値率が高ければ、それだけ、高度技能者の雇用という意味で、また、技術的に高度な製品を生み出しているという意味で、社会に貢献しているという実態を反映する指標、付加価値率本来の意味を示す指標ということになります。

 一般的に見れば、こうしたより高度な現場というのは、企業内でも新しい分野も仕事、新事業新製品の分野が多いのではないでしょうか。そういう分野が多くなれば、企業としても高付加価値の企業に脱皮できる可能性を持つ職場が多くなるわけで、それは大変望ましい事でしょう。

    
(注):粗利益には、間接部門の「外部購入費用」がすべて含まれていますが、これらは企業全体の分析の際に検討していただくことにして、部門別の場合は、上記の形で 「時系列の比較をする」という意味での便宜的方法です。