tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

カネを増やせばインフレになるか

2012年10月18日 22時27分27秒 | 経済
カネを増やせばインフレになるか
 日本国債を買い叩いて紙くずにするのは容易ではないようです。それなら日銀にうんとお金を刷らせて(金融を緩めさせて)インフレを起こすことが可能かどうかも考えてみましょう。

 ヘリコプターマネーという言葉があります。ヘリコプターからおカネをばらまけば、みんなお金を持って争って物を買うからインフレになる。お金の量が2倍になれば、物価も2倍になるといった意見です。ま、単純な貨幣数量説ですね。

 学者でも平気でそういったことを言う人もいますが、日銀がいかにお金を沢山発行しても、それがすぐに個人のお財布に入る事はありません。銀行がそれを借り、企業に貸して、企業がそれで商売をし、利益を上げて、初めて給料が上がり、消費が増えるのです。

 今、日銀が如何に金融を緩めても、銀行はただでも資金の運用に困って、国債を買っているのですから、企業が借りに来る状況ではありません。
 プラザ合意の後のように、土地バブルでもあれば、「金を貸すから土地を買いなさい」と言えますが、土地バブルはそう簡単には起きないでしょう。せいぜい、国際投機資本を心理的に刺激し、一時的な円安効果を持つぐらいでしょう。

 今、日銀に金融緩和を要求するのは、通貨を増やして物価を上げるのではなく、心理的効果で円安に誘導し、円安の効果で企業活動を活発にしようという事なのです。

 しかも、日本では労働組合も、円高でデフレが不可避という事を知っていますし、生産性と関係なく、賃上げを取れるだけ取ろうなどとは決して考えません。経験から学んで、生産性が上がらずに(ゼロ成長)賃上げだけすれば、結果はインフレで、名目賃金は上がっても、結局はインフレで目減りするだけという事も良く知っているからです。
 ですからバブルの時も、地価は上がりましたが、物価は安定していました。

 日本では、カネが入るなら先ずは使わなければ損だと考えるのは、政治家と役人ぐらいでしょう。庶民は一旦貯金しておいて、その上で、必要に応じて何に使うか考えます(山中教授も、「ノーベル賞の賞金は、当面貯金しておいて、何に使うか後から考えます」と言っておられました)。
 これが、金融を緩めてもインフレにならない理由と、それでも日銀に金融緩和を要求する理由です。