tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

もう一つの大きな違い:円安大歓迎の日本

2012年10月23日 09時48分54秒 | 経済
もう一つの大きな違い:円安大歓迎の日本
 もう1つ、決定的な大きな違いを挙げておきましょう。
 「国債、金融、インフレ、円」などはすべて巡りめぐって関連していることなのですが、日本が景気が悪い原因は、アメリカやヨーロッパのように、賃金を上げ過ぎて、コスト高になり、その分価格を上げようとしても、国際競争で価格が上げられないから不況になり、財政支出で双子の赤字、金融緩和も低金利も効かないという事ではないのです。

 もともと、コストは低く国際競争力は十分あったのですが、円高を強いられたことで、物価高になり、国際競争力をなくして不況になっているという事なのです。
 ですから世界中、どこの国でも基本的にはインフレですが、日本だけはまさに例外的に、10年以上のデフレを続けているのです。

 インフレで(厳密には賃金インフレで)不況になっている国は、当然経常赤字経済の国ですから財政政策・金融政策でやり繰りをしようと思うと、自国通貨の価値が下がり、赤字経済体質が一層ひどくなって、二進も三進もいかなくなるのです。

 一方、日本の場合は、財政、金融政策を多少やり過ぎて、たとえ一時的に赤字体質になっても、それで円安になれば、国内産業が大喜びで活性化し、正常な経済活動が可能な状態に戻るという事になるわけで、円安大歓迎という「全く反対の」不況の発生プロセスを持っている国だという事です。

 繰り返して言えば、欧米の多くの国の不況は、もともと「インフレ・赤字体質」が原因ですから、インフレ体質を直すことが正常化ですが、日本の場合は、デフレを強いられて不況になっているのですから、欧米のように、インフレ・赤字体質にしようと思えば、一度、円高の是正、デフレの終了、国際競争力の回復という「経済の正常化」のプロセスを経ないとそうはなりません。

 国債を暴落させたり、結果的に高金利をもたらしたり、通貨価値を引き下げたりすると、結果的に日本経済は一度正常な状態に戻ることになり、それを通り越してはじめて、欧米のような状態になるのですが、多分その「正常状態」に戻ったところで、「ああ、このあたりが一番いい」という経済状態になる可能性が大きいのです。

 こうした「日本の不況の特殊性」を考えた時、単純に、欧米のように、財政破綻、国債暴落、金利急上昇、円の急落、ハイパーインフレ、といったことを唱えてみても、なかなかそう簡単にそうはならないことが解るのではないかと思います。

 欧米諸国もIMFも、政府・日銀も、多くの学者なども、この基本的違いが良く解っていないので、財政健全化が必要とか、これ以上の量的緩和は危険といった論評を平気でやってしまうことになるのでしょう。それらは円高が終わった時に、初めて正しい意見という事になるのです。