tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

デフレ容認の無思慮

2012年10月09日 10時40分18秒 | 経済
デフレ容認の無思慮
 前回、デフレの進行を放任することは、座して日本経済の自然死を待つことでしかないという趣旨のことを指摘させて頂きましたが、そのことをもう少し敷衍しておきたいと思います。
 
 ここで問題にしているのは「円高とデフレのスパイラル」です。デフレは日本の物価が下がって、海外物価と近い水準になれば、自然に止まります。しかしその途中で、さらなる円高になれば、円高がデフレを呼び、デフレが円高をもたらすというスパイラル現象が発生します。
 プラザ合意以降、日本経済を衰退させてきたのはまさにこの現象です。

  プラザ合意で大幅円高になり、世界で一番パーフォーマンスの良かった日本経済が突如世界で最も高コスト・高物価の国になった時、ほとんど人たちは、これが長期の日本経済の停滞につながることを予見出来ませんでした。

 それまでの日本経済に自信を持っていたこと、初めての経験で、当時の経済の知見では分析が出来なかったこと、加えて、アメリカのアドバイスで、超金融緩和をやり、バブル経済でジャパン・マネーが世界を闊歩し、バブル経済に酔っていたからでしょう。
 バブルが破裂して不況が始まっても、ほとんどの人は、不況は、バブル破綻の結果だと考えていました。

 長年賃金と物価の関係を見てきたわたくしは、バブルの処理は終わっても、円高対応には長い時間がかかるなと直感しました。2年で2倍の円高($1=¥240→120)は2年で2倍の賃上げと同じ効果を持つと理解したからです。

 日本の物価は下がり続け、国際価格に近くなった2002年から漸く「いざなぎ越え」の微弱な回復の時期が来ました。
 円高対応の苦労もそろそろ終わるかと思っていた矢先、リーマンショックで円は$1=¥90に。3割の円高は、3割の賃上げと同じ効果を持ちます。しかも、今度はプラザ合意のように「挨拶」はなく、国際投機資本が勝手にやったという形です。 

 ここまで来てやっと、これ以上の円高は大変だという理解が生まれました。そして、その後ユーロ問題もあり70円台後半になり、多くの企業、一部の政治家、経済学者の中にも、「円高を止めなければ」という意見が出、徐々に増えてきました。
 白川総裁の1パーセントインフレ目標もその一端です。

 しかし今度の政策決定会合で、日銀はこの目標の挫折を認めました。当面デフレのインフレ転換が出来なくてもアメリカや欧州のように、野放図な金融緩和はしない、最低の節度は守る、というところでしょうか。前回も書きましたように、世界の経済・金融が正常であれば、この対応は正しいでしょう。

 とはいえ、デフレ国の通貨とインフレ国の通貨を比べれば、デフレ国の通貨の方が当然価値は高まっているという事で、買われ易くなります。さらなる円高の可能性は大です。

 今は世の中の方が狂っているのです、音程の狂ったピアノで正確に曲を弾くには鍵盤の叩き方を変えねばなりません。どのキーでどの音が出るか手探りです。
 どうすれば、国際投機資本が円を買わなくなるか、手探りでそれを探るのが政府・日銀が協力すべき目標でしょう。
 以上、前回の「1%インフレ目標挫折」の趣旨を敷衍させて頂きました。