tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

対話と説得による経済政策

2011年05月26日 12時02分18秒 | 社会
対話と説得による経済政策
 東日本大震災は、人命、先祖伝来の資産、さらに日本の国土に大変な惨禍をもたらしましたが、歴史上の大きな自然災害が日本人に多くの教訓を残したように、いろいろな教訓を残しつつあるように思われます。
 その教訓から素直に学び、その教訓を将来生かすことが、失われた多くの命への鎮魂、そして日本人の将来への遺産にもなるのではないでしょうか。

 震災発生後、日本中は広く自粛ムードに包まれました。これは人間として、社会として当然のことでしょう。しかし喪は明けなければなりません。

 そのキッカケになったもののひとつに、岩手の酒造会社からの思い切った発信 がありました。
 折しも桜が満開になる季節でした。「被災地岩手への支援のためにも、自粛を続けるのではなく岩手のお酒を飲んで、花見を大いに楽しんでください」といったものでした。
 
 これで、日本国内のムードは大きく変わったように思います。私も尻馬に乗って、ネットで注文をしましたが、大量の注文が捌き切れないということで、気仙沼の酒造会社に切り替えて注文をしました。大変丁寧な感謝のお手紙を頂きました。

 タイミングの良い適切な情報発信は、ヒトの心に響き、社会のムードを一変させます。これは、その情報発信が、多くの人に「そう言われてみれば確かにそうだ」と納得させる、つまり、同感させ、共感させる説得力を持つからでしょう。

 こうして多様な形での被災地の支援という方向の動き出すのと同時に、それが、チャリティーと一緒になって、さらに大きな広がりを持つ動きになりました。有名な若いゴルファーの行動なども、素直に賞賛され、多くのイベントがチャリティーの形で、到る所で展開されるようになりました。

 加えて、時に「多すぎる」ほどのボランティアーの活動も、最近、無気力などと評された若い日本人の、心の底にある、「目的がはっきりすれば邁進する」といった気概を見せてくれたように思います。

 今回の経験で、人は、その目的・趣旨に賛同すれば、当面の損得は犠牲にしても、その目的のために、喜んで協力し、活動するという、いわば人間本来の率直なあり方のようなものが見えたのではないでしょうか。

 話は多少飛躍しますが、経済政策においても、金融政策や財政政策 のように、経済的な誘導手段で、国民を動かそうとする政策だけではなく、「日本が将来良くなるためには、国民の皆さんがこのように行動してくれることが望ましいのです」という、国民の行動に直接訴える、『対話と説得 による経済政策』というのがあってもいいのではないでしょうか。

 問題は、その政策が、今回の岩手の酒造会社からの発信のような「納得性と説得力」を持つ内容のものかどうかですが・・・・・・。