前回は、日本経済活性化のために賃上げが必要という意見が、労働組合、政府は勿論、企業経営者や経済団体にも普遍的になって来ているという現状も前提に、「日本経済活性化の鍵は賃上げにあり」と書きました。
同時に、「定昇込み5%以上」とか、「今年より高い賃上げ」という程度では、多分今年と同じような結果に終わるのではないか」とも書いてきました。
理由は、物価が沈静すれば別ですが、今の政府の補助金による物価上昇抑制がなくなり(4月まで)、円安がアメリカの事情などで続く可能性が強く、海外は何処もインフレ、インバウンド大盛況などが、ジリジリと消費者物価を押し上げる可能性が高いからです。
今春闘の賃上げでも毎月勤金統計の「平均賃金の上昇は1~2%前後」ですし、家計調査の「勤め先収入」はマイナスです。
それが多少増えても、恐らく賃金上昇は物価上昇に食われ、実質賃金はマイナスが続く可能性が大で、家計は防衛型になり平均消費性向は再び低下に向かい、消費需要低迷で日本経済の不振は変わらないというのが十分心配されなければならないと思われるからです。
こうした悲観的な予測になってしまう根本原因は、かつて円高で抑えに抑えた平均賃金水準(低賃金の非正規拡大も含む)を円安になっても殆ど復元しない企業経営の低平均賃金維持政策にあるように思います。
そしてまた今回の円安です。長期的な円安の時、円高の時と反対の賃金政策を取らないと、消費不振で経済低迷になるという単純な経済現象に気付くべきなのでしょう。
円レートが1ドル80円から120円へ、更に今150円へと変化しています。150円は行き過ぎとしても、日銀短観の企業の予測は130円台です。円安は続く気配です。
円安はドル建ての日本GDPを縮小させますが、その分日本のコストを下げ、日本の国際競争力を強めます。円ベースで生まれる円安の利得は、適正に平均賃金水準に反映されるべきなのです。
こうした視点から考えれば、日本の平均賃金水準は、かなり大幅に引き合上げる必要があったのです。
そして漸く「賃上げが必要」という認識が政労使3者に共有される事になったのですから、これは本気でやる必要があるという事になるのです。
この際(たとえは悪いですが)、兵力の逐次投入はやめて、一挙大量投入で、日本経済の景色を変える必要があるというのがこのブログの主張です。
それにしては随分控えめですが、このブログでは標記の「平均賃金10%上昇」を掲げました。これは今高騰いている食料品など生活必需品の価格上昇にもほぼ見合うという水準です。
これで、出来れば、全国の家計(家庭)のムードを中心に、国民の意識を一変させることが出来れば、日本経済活性化のきっかけになると考えているところです。
ここで問題は、わが社はそんな賃上げは出来ませんという中小企業を中心にした意見への対応でしょう。
答えは簡単で、「人件費上昇分だけ、確りと価格に転嫁してください。」「但し便乗値上げはしないでください」と政府が、明言する事です。
当然賃金インフレは起きるでしょう。日銀は喜ぶでしょう。但しそれは一過性です。多分、それで実質賃金はプラス転換でしょう。
再来年以降の賃金交渉は、改めて労使で検討ですが、消費者物価の上昇を2%程度上回る賃上げを2~3年続ければ、新しい賃金決定秩序が形成されるでしょう。
政府の出番は企業の労使がルールを守るよう「レフェリー」をするだけです。
(本来、政労使会議で議論すべきはこんなことなのではないでしょうか)
労使の、思い切った決断を望むところです。