第23回規制改革推進会議
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/committee/250528/agenda.html
「規制改革推進に関する答申」が公表されている。
〇 スタートアップへの資金供給手段の拡大(102頁)
【a:令和7年度措置、b:令和7年調査・検討開始、結論を得次第可能なものから速やかに措置】
<基本的考え方>
イノベーション創出や生産性向上の牽引役であり、新技術の社会実装による社会課題解決の担い手でもあるスタートアップについて、官民によるスタートアップ育成策の全体像と5年間の具体的なロードマップを示した「スタートアップ5か年計画」(令和4年11月28日新しい資本主義実現会議。以下「5か年計画」という。)では、計画当時に8,000億円規模であったスタートアップへの投資額を2027年度に10倍を超える規模(10兆円規模)とすることが目標として掲げられている。
他方、スタートアップへの投資額は、地政学リスクの高まり等を背景に国際的にベンチャーキャピタルの資金調達額が減少し、海外主要国が大幅に投資額を減少させる中にあって、2021年の8,827億円から2024年の7,793億円へと減少している。こうした中、スタートアップの資金調達手段については、ベンチャーキャピタル等による出資を通じたエクイティ性の資金による調達のみならず、地域金融機関やフィンテック事業者等による融資等を通じたデット性の資金(いわゆるベンチャーデット)による調達が注目されており、こうした新たな資金調達手法の活用拡大を図ること等により、5か年計画で掲げた目標の実現に向けて、スタートアップの創業後の成長を後押ししていくための取組を強化していく必要がある。
以上の基本的考え方に基づき、以下の措置を講ずるべきである。
<実施事項>
a 法務省及び金融庁は、融資と新株予約権の付与を組み合わせた資金調達方法である新株予約権付融資について、融資を実行する銀行等の金融機関において、スタートアップから交付される新株予約権が、上限金利を定める利息制限法(昭和29年法律第100号)及び出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(昭和29年法律第195号。以下「出資法」という。)における利息に該当するかどうかが不明確であること、また、新株予約権が利息に該当する場合において、新株予約権の標準的な価格算定方法が定まっていないことが、金融機関が新たに新株予約権付融資を行う上での障害となっているとの指摘があることを踏まえ、スタートアップに対する新株予約権付融資の法的安定性を向上させ、その活用促進を図る観点から、民間事業者団体が設置予定の新株予約権付融資の普及における課題に関する検討会に参加し、以下を含む論点の明確化に資するよう、法令解釈に係る意見、助言、情報提供その他の協力を行う。
① 利息制限法第1条及び出資法第5条第2項に定める利息の意義及び新株予約権付融資における新株予約権が利息制限法及び出資法において定める利息に該当するか否か(以下「利息該当性」という。)の判断基準。特に(ⅰ)融資が予定どおりに返済された際に貸手が新株予約権を放棄することをあらかじめ新株予約権交付契約において定めている場合(新株予約権交付契約において、新株予約権が融資に対する保全の性質を有する場合)の利息該当性、(ⅱ)新株予約権の交付時点で換価性が極めて低く、かつ、権利行使を借手の上場時やM&A完了時などに限定している場合の利息該当性、(ⅲ)融資契約と新株予約権交付契約が別契約であり、かつ、新株予約権の交付が融資に連動しない場合の利息該当性。
② ①において新株予約権が利息に該当する場合における、新株予約権付融資全体の貸出金利が利息制限法第1条及び出資法第5条第2項に掲げる上限金利内であることの疎明方法。具体的には、金利計算時における新株予約権の価格算定の在り方。
③ 借手が融資契約に定める期限に先立ち融資を弁済した場合における、貸手における金利の再計算の必要性。その必要がある場合における、実務的に実施可能な再計算の方法。当該再計算の結果、上限金利を超過した場合における、貸手利益の保護の方策。
b 金融庁は、AIも活用した新たな審査手法を用いて融資を行うフィンテック事業者等を含め、預金等を受け入れないで与信業務を営む企業(以下「ノンバンク」という。)が行うスタートアップ等への融資において、当該融資を行うノンバンクが社債による資金調達を行う場合には、金融業者の貸付業務のための社債の発行等に関する法律(平成11年法律第32号。以下「ノンバンク社債法」という。)第6条第1項第2号及び金融業者の貸付業務のための社債の発行等に関する法律施行令(平成11年政令第156号)第4条により、資本金又は出資の額が10億円以上との要件(以下「資本金・出資額要件」という。)を満たす必要があるが、融資を行うノンバンク自身がスタートアップである場合には当該資本金・出資額要件を満たすことが困難であり、このため資金調達を十分に行うことができず、融資を求めるスタートアップへの資金供給を断念する場合があるとの指摘や、「金融審議会資金決済制度等に関するワーキング・グループ報告書」(令和7年1月22日)において、貸金業法(昭和58年法律第32号)により、貸金業者が行う貸付に対して、借手の属性や貸付の態様等にかかわらず、基本的に各種の規制を一律に課していることについて、「リスクに応じた適切な規制が課されるよう、貸金業法の柔構造化についても中長期的に検討を深めていくことが望ましい」とされていること等を踏まえ、スタートアップを含め貸手企業と借手企業が直面する融資等に係る貸金業法、ノンバンク社債法その他関係法令に関する課題について調査を行うとともに、借手の適切な保護を前提とした上で、スタートアップへの資金供給の拡大を図る観点から、調査結果を踏まえて明らかになった課題に対する対応策を検討し、結論を得次第、必要な措置を講ずる。その際、資本金・出資額要件の見直しの要否についても検討を行う。
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/committee/250528/agenda.html
「規制改革推進に関する答申」が公表されている。
〇 スタートアップへの資金供給手段の拡大(102頁)
【a:令和7年度措置、b:令和7年調査・検討開始、結論を得次第可能なものから速やかに措置】
<基本的考え方>
イノベーション創出や生産性向上の牽引役であり、新技術の社会実装による社会課題解決の担い手でもあるスタートアップについて、官民によるスタートアップ育成策の全体像と5年間の具体的なロードマップを示した「スタートアップ5か年計画」(令和4年11月28日新しい資本主義実現会議。以下「5か年計画」という。)では、計画当時に8,000億円規模であったスタートアップへの投資額を2027年度に10倍を超える規模(10兆円規模)とすることが目標として掲げられている。
他方、スタートアップへの投資額は、地政学リスクの高まり等を背景に国際的にベンチャーキャピタルの資金調達額が減少し、海外主要国が大幅に投資額を減少させる中にあって、2021年の8,827億円から2024年の7,793億円へと減少している。こうした中、スタートアップの資金調達手段については、ベンチャーキャピタル等による出資を通じたエクイティ性の資金による調達のみならず、地域金融機関やフィンテック事業者等による融資等を通じたデット性の資金(いわゆるベンチャーデット)による調達が注目されており、こうした新たな資金調達手法の活用拡大を図ること等により、5か年計画で掲げた目標の実現に向けて、スタートアップの創業後の成長を後押ししていくための取組を強化していく必要がある。
以上の基本的考え方に基づき、以下の措置を講ずるべきである。
<実施事項>
a 法務省及び金融庁は、融資と新株予約権の付与を組み合わせた資金調達方法である新株予約権付融資について、融資を実行する銀行等の金融機関において、スタートアップから交付される新株予約権が、上限金利を定める利息制限法(昭和29年法律第100号)及び出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(昭和29年法律第195号。以下「出資法」という。)における利息に該当するかどうかが不明確であること、また、新株予約権が利息に該当する場合において、新株予約権の標準的な価格算定方法が定まっていないことが、金融機関が新たに新株予約権付融資を行う上での障害となっているとの指摘があることを踏まえ、スタートアップに対する新株予約権付融資の法的安定性を向上させ、その活用促進を図る観点から、民間事業者団体が設置予定の新株予約権付融資の普及における課題に関する検討会に参加し、以下を含む論点の明確化に資するよう、法令解釈に係る意見、助言、情報提供その他の協力を行う。
① 利息制限法第1条及び出資法第5条第2項に定める利息の意義及び新株予約権付融資における新株予約権が利息制限法及び出資法において定める利息に該当するか否か(以下「利息該当性」という。)の判断基準。特に(ⅰ)融資が予定どおりに返済された際に貸手が新株予約権を放棄することをあらかじめ新株予約権交付契約において定めている場合(新株予約権交付契約において、新株予約権が融資に対する保全の性質を有する場合)の利息該当性、(ⅱ)新株予約権の交付時点で換価性が極めて低く、かつ、権利行使を借手の上場時やM&A完了時などに限定している場合の利息該当性、(ⅲ)融資契約と新株予約権交付契約が別契約であり、かつ、新株予約権の交付が融資に連動しない場合の利息該当性。
② ①において新株予約権が利息に該当する場合における、新株予約権付融資全体の貸出金利が利息制限法第1条及び出資法第5条第2項に掲げる上限金利内であることの疎明方法。具体的には、金利計算時における新株予約権の価格算定の在り方。
③ 借手が融資契約に定める期限に先立ち融資を弁済した場合における、貸手における金利の再計算の必要性。その必要がある場合における、実務的に実施可能な再計算の方法。当該再計算の結果、上限金利を超過した場合における、貸手利益の保護の方策。
b 金融庁は、AIも活用した新たな審査手法を用いて融資を行うフィンテック事業者等を含め、預金等を受け入れないで与信業務を営む企業(以下「ノンバンク」という。)が行うスタートアップ等への融資において、当該融資を行うノンバンクが社債による資金調達を行う場合には、金融業者の貸付業務のための社債の発行等に関する法律(平成11年法律第32号。以下「ノンバンク社債法」という。)第6条第1項第2号及び金融業者の貸付業務のための社債の発行等に関する法律施行令(平成11年政令第156号)第4条により、資本金又は出資の額が10億円以上との要件(以下「資本金・出資額要件」という。)を満たす必要があるが、融資を行うノンバンク自身がスタートアップである場合には当該資本金・出資額要件を満たすことが困難であり、このため資金調達を十分に行うことができず、融資を求めるスタートアップへの資金供給を断念する場合があるとの指摘や、「金融審議会資金決済制度等に関するワーキング・グループ報告書」(令和7年1月22日)において、貸金業法(昭和58年法律第32号)により、貸金業者が行う貸付に対して、借手の属性や貸付の態様等にかかわらず、基本的に各種の規制を一律に課していることについて、「リスクに応じた適切な規制が課されるよう、貸金業法の柔構造化についても中長期的に検討を深めていくことが望ましい」とされていること等を踏まえ、スタートアップを含め貸手企業と借手企業が直面する融資等に係る貸金業法、ノンバンク社債法その他関係法令に関する課題について調査を行うとともに、借手の適切な保護を前提とした上で、スタートアップへの資金供給の拡大を図る観点から、調査結果を踏まえて明らかになった課題に対する対応策を検討し、結論を得次第、必要な措置を講ずる。その際、資本金・出資額要件の見直しの要否についても検討を行う。