司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

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医療法人の理事の任期と平成18年改正医療法の経過措置について

2010-03-27 10:18:32 | 法人制度
 平成19年4月1日前から在任していた医療法人の理事長の変更の登記が未了である例が散見されると思われるが,理事の任期伸長規定の適用が問題となるケースにおいては,本来の任期満了日等と定款等の変更が効力を生じた日との先後がポイントとなると解される。いささか長文であるが,お目通しを。



医療法
第46条の2
1・2 【略】
3 役員の任期は、二年を超えることはできない。ただし、再任を妨げない。


 平成19年4月1日施行の改正医療法施行前は,医療法人の理事の任期については,法定されていなかった。したがって,定款又は寄附行為によって,任意に(といっても,監督官庁の指導によるのだが)任期の定めを設けていたに過ぎなかった。

 そして,定款又は寄附行為には,次のような規定が設けられるのが通例であった。

① 理事は,任期満了の場合においても,後任者が就職するまでその職務を行わなければならない。
② 辞任又は任期満了により退任した理事は,後任者が就職するまでその職務を行う。

 ①については,任期を伸長する趣旨であると解されており,退任者の退任日は,後任者の就任日とする取扱いであった。また,②については,権利義務の承継の趣旨であると解されており,退任者の退任日は,辞任又は任期満了の日とする取扱いであった。

 しかしながら,これらの規定は,いずれも本来的には,善処義務(民法第654条)の問題である。従前の医療法人のように法定任期が存しない法人については,いわゆる善解理論を採り,①については,「任期を伸長する趣旨」と解し,②については,「退任」の文字があることから,「権利義務の承継の趣旨」と解していたものであろう。法定任期が存する法人については,同様に解することはできない。

 ところで,任期2年が法定された改正法の施行の際現に医療法人の役員である者の任期については,次のような経過措置が置かれている。

改正附則
(役員の任期に関する経過措置)
第十一条  この法律の施行の際現に医療法人の役員である者の任期は、新医療法第四十六条の二第三項の規定にかかわらず、この法律の施行の際におけるその者の役員としての残任期間と同一の期間とする。

 また,改正附則第9条の規定により,改正法の施行日(平成19年4月1日)から1年以内に,改正法に対応した定款又は寄附行為に変更することが義務付けられていた。

改正附則
 (定款又は寄附行為の変更に関する経過措置)
第九条 施行日前に設立された医療法人は、施行日から一年以内に、この法律の施行に伴い必要となる定款又は寄附行為の変更につき医療法第五十条第一項の認可(二以上の都道府県の区域において病院、診療所又は介護老人保健施設を開設する医療法人にあっては、新医療法第六十八条の二第一項において読み替えて適用する医療法第五十条第一項の認可)の申請をしなければならない。
2 施行日前に設立された医療法人の定款又は寄附行為は、施行日から一年を経過する日(前項の規定により定款又は寄附行為の変更の認可の申請をした医療法人については、当該申請に対する処分があった日)までは、新医療法第六章の規定により定められた定款又は寄附行為とみなす。この場合において、当該定款又は寄附行為と同章の規定が抵触する場合においては、当該抵触する部分については、同章の規定は、適用しない。



 したがって,改正法の施行の際現に医療法人の役員である者の任期については,次のように考えるべきである。

(1)施行日から1年以内に定款又は寄附行為に変更を行った医療法人においては,当該定款等の変更の効力が生じた日までは改正附則第11条の適用を受けるが,定款附則に停止条件(在任中は改正附則第11条の適用を受ける旨)を付さずに行った場合,同日後は,新法の適用を受ける(改正附則第11条の適用を受けない。)ことになる。
a.定款等の変更の効力が生じた日において,既に任期伸長規定の適用を受けていた場合
 定款等の変更の効力が生じた日の経過により,任期満了となる。退任日は,定款等の変更の効力が生じた日である。
b.定款等の変更の効力が生じた日において,既に権利義務承継規定の適用を受けていた場合
 定款等の変更の効力が生じた日の経過により,権利義務承継者の地位を外れる。
c.定款等の変更の効力が生じた日後に,辞任又は任期満了となった場合
 任期伸長又は権利義務承継の取扱いを受けることはできない。辞任又は任期満了により,即退任となる。

(2)施行日から1年以内に定款又は寄附行為に変更を行った医療法人において,定款等の変更の効力が生じた日に理事が任期中であり,「在任中は改正附則第11条の適用を受ける(現任の理事の任期については,定款変更の効力を及ぼさない)」旨を定めていた場合には,改正附則第11条の適用が継続し,従前どおりの任期となる。しかし,定款等の変更後は,上記①②の規定が存置されていたとしても,これらを任期伸長又は権利義務承継の規定と解することはできない(改正附則第9条第2項参照)。
 したがって,定款等の変更の効力が生じた日後に,辞任又は任期満了となった場合には,任期伸長又は権利義務承継の取扱いを受けることはできず,即退任となる。

(3)施行日から1年以内に定款又は寄附行為に変更を行わなかった医療法人においては,任期については,平成20年4月1日以後も改正附則第11条の適用を受けるが,同日以後,新法第6章の適用を受ける(改正附則第9条第2項参照)ことから,同日以後は任期伸長又は権利義務承継の取扱いを受けることはできない。辞任又は任期満了により,即退任となる。
a.平成20年3月31日までに,既に任期伸長規定の適用を受けていた場合
 平成20年3月31日の経過により,任期満了となる。退任日は,平成20年3月31日である。
b.平成20年3月31日までに,既に権利義務承継規定の適用を受けていた場合
 平成20年3月31日の経過により,権利義務承継者の地位を外れる。
c.平成20年4月1日以後に,辞任又は任期満了となった場合
 任期伸長又は権利義務承継の取扱いを受けることはできない。辞任又は任期満了により,即退任となる。

 なお,定款等の変更を行った場合において,例えば任期を1年と定めたときは,上記①②の規定を任期伸長又は権利義務承継の規定と解することもできるが,ほとんどの医療法人が任期を2年としている実情に鑑み,そのようなケースは,あまり想定できないであろう。

 以上のとおり,平成19年4月1日前から在任していた医療法人の理事長の変更の登記について,理事の任期伸長規定の適用が問題となるケースにおいては,本来の任期満了日等と定款等の変更が効力を生じた日との先後がポイントとなる。



 後任の理事の選任手続については,医療法第46条の4第5項の規定により選任された仮理事が行うことになるが,退任した当該理事も,民法第654条の規定により,善処義務を負っていることから,後任の理事の選任手続をすることができる。

 この場合において,後任の理事の選任に係る理事会の議事録等には,具体的な事由を示した上で急迫な事情がある旨を記載する必要がある。例えば,次のような事由が考えられる。
 a.理事の全員又は一部の者の退任により理事会を開催することができない旨
 b.それによって意思決定をすることができない具体的な事項
 c.当該医療法人のほか当該医療法人が経営している施設の多数の利用者,職員その他の第三者にも著しい支障や不利益を生じさせるおそれが顕著である旨等


cf. 平成19年1月11日付法務省民商第30号法務省民事局長回答
※ ただし,社会福祉法人に関するものである。
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