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司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

会社法判例(1)~法人格の否認の法理~

2015-01-29 13:48:41 | 会社法(改正商法等)
 旬刊商事法務2015年1月25日号から,「新商事判例便覧60年の歴史~時代を彩った裁判例を振り返る~」の連載が始まった。

 そこで,同稿に取り上げられた裁判例のうち,いくつかの紹介を試みることとする。

最高裁昭和44年2月27日第1小法廷判決
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=55117

【判示事項】
一、法人格否認の法理
二、実質が個人企業と認められる株式会社における取引の効果の帰属

「およそ社団法人において法人とその構成員たる社員とが法律上別個の人格であることはいうまでもなく、このことは社員が一人である場合でも同様である。しかし、およそ法人格の付与は社会的に存在する団体についてその価値を評価してなされる立法政策によるものであつて、これを権利主体として表現せしめるに値すると認めるときに、法的技術に基づいて行なわれるものなのである。従つて、法人格が全くの形骸にすぎない場合、またはそれが法律の適用を回避するために濫用されるが如き場合においては、法人格を認めることは、法人格なるものの本来の目的に照らして許すべからざるものというべきであり、法人格を否認すべきことが要請される場合を生じるのである。」

「思うに、株式会社は準則主義によつて容易に設立され得、かつ、いわゆる一人会社すら可能であるため、株式会社形態がいわば単なる藁人形に過ぎず、会社即個人であり、個人則会社であつて、その実質が全く個人企業と認められるが如き場合を生じるのであつて、このような場合、これと取引する相手方としては、その取引がはたして会社としてなされたか、または個人としてなされたか判然しないことすら多く、相手方の保護を必要とするのである。ここにおいて次のことが認められる。すなわち、このような場合、会社という法的形態の背後に存在する実体たる個人に迫る必要を生じるときは、会社名義でなされた取引であつても、相手方は会社という法人格を否認して恰も法人格のないと同様、その取引をば背後者たる個人の行為であると認めて、その責任を追求することを得、そして、また、個人名義でなされた行為であつても、相手方は敢て商法504条を俟つまでもなく、直ちにその行為を会社の行為であると認め得るのである。けだし、このように解しなければ、個人が株式会社形態を利用することによつて、いわれなく相手方の利益が害される虞があるからである。」

 裁判長は,松田二郎最高裁判事(当時)。随想「群小株式会社の追放~企業倫理確立のために~」が懐かしい。大隅健一郎先生の御名前もありますね。

cf. 平成16年7月18日付け『「有限会社」を廃止、株式会社に一本化』

「会社法により最低資本金制度が廃止されたため,同法理(※法人格否認の法理)の適用が改めて問題となる場面が増えて行くのではないかと推測される」(上掲旬刊商事法務40頁)

 確かに,個人事業者の法人成りにおいては,株主=取締役1名の株式会社が多数であり,潜在的な予備軍は,多いと思われるが,なんともである。

○ 濫用事例
最高裁昭和48年10月26日第2小法廷判決
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52013

最高裁昭和53年9月14日第1小法廷判決
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=64103

最高裁平成17年7月15日第2小法廷判決
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52405

○ 形骸化事例
昭和47年3月9日第1小法廷判決
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=61917
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