新聞報道によれば,10月判決の被告は,デジタル放送を見るのに必要な「B―CAS(ビーキャス)カード」のユーザー登録をした結果,NHKにテレビ設置を通知してしまった人である。12月判決の被告については,不詳であるが,おそらく同様のケースであると思われる。
このような場合,ある意味,被告からの通知が契約の申込みである,と解することができないこともない。そして,NHKには,契約締結を拒否する自由はない。
NHKの「放送受信規約」第4条第1項によれば,「放送受信契約は、受信機の設置の日に成立するものとする」とされているが,意思表示の合致もないままに契約の成立を認定することは困難であるから,いつの時点で契約が成立したのか(意思表示の合致があったのか)が問題となる。
cf. 日本放送協会放送受信規約
http://pid.nhk.or.jp/jushinryo/compliant_1.html
放送受信契約は,要式行為ではないから,契約書を交わさなくても,意思表示の合致の時点で契約が成立する。上記のとおり,「被告からの通知が契約の申込みである」と解すると,その時点で契約が成立すると解することも強ち不合理とは言えないであろう。
NHKからの通知は,「契約を成立させるため」ではなく,「契約成立を確認するために,契約書を提出してください」という程度の意味となる。
NHKは,NHKから通知をして相当期間経過後に契約が成立する,と主張している(民法第526条第2項が根拠?)ようで,10月判決はこれを認めたわけであるが,不合理とは言えないのである。
民法
(隔地者間の契約の成立時期)
第526条 隔地者間の契約は、承諾の通知を発した時に成立する。
2 申込者の意思表示又は取引上の慣習により承諾の通知を必要としない場合には、契約は、承諾の意思表示と認めるべき事実があった時に成立する。
両判決は,契約の成立時期については判断が異なる(事案が異なるからではないかとも思われる。)が,受信料の支払義務については,いずれも「受信機の設置の日から」と判示している。
したがって,被告の立場としては,契約の成立時期は大した問題ではなく,結論としては大同小異の感であろう。
NHKが契約の成立時期に拘っているのは,時効の関係であろうか。
下記のサイトが受信料問題について,非常に詳細である。
https://sites.google.com/site/nhkhack/telokeshi