司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

特例社団法人における社員総会の決議要件

2012-08-15 15:47:59 | 法人制度
 特例社団法人における社員総会の決議要件に関して,法令の適用関係は,如何?

 整備法第85条本文では,「特例社団法人の・・・社員総会の決議・・・については,なお従前の例による」とされている。

 ところで,法改正後の経過措置として旧法下のルールを維持する場合,整備法では,

(1)旧法下に法令の定めがあって,新法では異なるルールが定められたとき
→ 「なお従前の例による」

(2)旧法下に法令の定めがなく,新法で新たにルールが定められたとき
→ 新法の規定は「適用しない」

であるのが通例であると思われる。

 そして,平成16年改正前民法においては,社員総会の決議要件に関しては,普通決議及び特別決議共に規定が存せず,「定款の変更」「解散」について,規定が存するのみであった。

 そうであれば,本来,整備法の定めとしては,

・ 法第49条等の規定は適用しない。
・ 解散の決議については,なお従前の例による

とすべきであろう(定款の変更に関しては,整備法第88条でカバーされ得る。)。

 しかしながら,整備法第85条本文では,「なお従前の例による」なのである。

 平成16年改正前民法において,定款の定め又は一般原則に委ねられていた状態を改正後も維持するために,整備法第85条本文で「なお従前の例による」と規定したのであるとすれば,甚だおかしな定め方である。

 また,社員総会の決議要件に関する平成16年改正前民法の規定ぶりにもかかわらず,「定款の変更」に関して,

・ 決議要件(旧民法第38条第1項) → 整備法第85条本文 → 「なお従前の例による」
・ 主務官庁の許認可(旧民法第38条第2項) → 整備法第88条 → 「なお従前の例による」

 「解散」に関して,

・ 決議要件(旧民法第69条) → 整備法第85条本文 → 「なお従前の例による」
・ その他(旧民法第69条以外) → 整備法に規定がない → 新法適用

のように考えなければならないのも合点が行き難い。

 法令の適用関係は,簡明に,お願いしたいものである。

cf. 法制執務コラム集『経過規定と旧法令の効力―「なお従前の例による」と「なおその効力を有する」―』
http://houseikyoku.sangiin.go.jp/column/column051.htm
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法制審議会会社法制部会第22回会議(平成24年7月4日開催)議事録

2012-08-15 14:13:12 | 会社法(改正商法等)
法制審議会会社法制部会第22回会議(平成24年7月4日開催)
http://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900142.html

 議事録が公開されている。

 「監査役の監査の範囲に関する登記」についての議論は,次のとおり。


○伊藤雅人委員(オーデリック株式会社代表取締役社長)
 「2 監査役の監査の範囲に関する登記」について述べたいと思います。このような規定を置く趣旨は理解できますが,追加することによって,中小企業の登記に関する実務が混乱することが想定されます。登記事項が追加されることを徹底的に周知していただくと同時に,十分な経過措置を導入していただき,登録免許税の減免措置を考えていただけると有り難いと思います。登録免許税の話は法務省の本来の仕事ではないとは思いますが,そのように考えております。よろしくお願いします。

○坂本三郎幹事(法務省民事局参事官)
 登録免許税のことはともかくとして,周知の件につきましては,相当の数の会社に関係するであろうと思っておりますので,そこは,私どもとしても,できるだけ周知に努めさせていただきたいと思っております。また,経過措置につきましても,例えば,施行と同時にやらなければいけないとすると,それは,恐らく,大きな混乱を招くと思っておりますので,そこも,一定程度の経過措置を置くことは考えております。

○岩原紳作部会長(東京大学教授)
 ほかに何かございますでしょうか。よろしゅうございましょうか。
 それでは,今,伊藤委員から御指摘のあった点につきましては,坂本幹事からお答えいただきましたような配慮をしていただくということで,部会資料25のような形で,第2及び第3についても進めるということにさせていただきたいと思います。よろしゅうございましょうか。


 日司連は,監査役の監査の範囲を会計に限定する株式会社については,そもそも「監査役設置会社」には該当しないので,逆に登記事項から外すことを意見提言していたが・・・。
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東京電力の財物賠償基準に盛り込まれた建物修復費の先行払い

2012-08-15 09:58:11 | 東日本大震災関係
福島民報記事
http://www.minpo.jp/pub/topics/jishin2011/2012/08/post_4765.html

 東京電力の財物賠償基準に盛り込まれた建物修復費の先行払いをめぐり、建物の表示登記等がされていなかったり,相続登記がされていないような場合には対象外となるということで,混乱が拡がっている。

 とはいえ,やむを得ないであろう。
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