司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

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債務整理事件における司法書士の代理権の範囲について

2007-05-11 12:40:59 | 消費者問題
Q.司法書士の代理権の範囲は、140万円以内だと聞きましたが、借金の総額が約300万円の場合、任意整理を司法書士に依頼することはできないのでしょうか?

A.たとえば、債務者がサラ金会社6社から約50万円ずつ借金をしており、総額が約300万円というケースの任意整理事件では、司法書士の代理権については、債権者ごとに各別に判断されます。したがって、司法書士が債務者の代理人として各債権者と交渉し、任意整理をすることが可能です。

【ポイント】
① 判断基準は、「残債務の額」ではなく、「弁済計画の変更によって債務者が受ける経済的利益」。
② 複数の債権者との間で、債権者ごとに各別の和解契約をする場合は、債権者ごとに各別に判断。

【解説】
 最近、「司法書士の代理権の範囲は、140万円以内である」として、「借金の総額が140万円を超えている場合には、司法書士は代理人として債務整理事件を受任することはできない」との主張がまま見受けられるところです。しかし、債務整理事件について、司法書士が裁判外の和解について代理することができる範囲の判断基準は、法務省見解によれば、「残債務の額」ではなく、「弁済計画の変更によって債務者が受ける経済的利益」によるものとされています。また、複数の債権者との間で、債権者ごとに各別の和解契約をする場合は、債権者ごとに各別に判断されるものとされています。
 したがって、たとえば借金の総額が約300万円であったとしても、個々の債権者に対する「弁済計画の変更によって債務者が受ける経済的利益」の額が140万円以下であれば、司法書士が債務者の代理人としてそれらの各債権者と交渉し、任意整理(債権者ごとの各別の和解契約)をすることが可能です。

【参考文献】
 立案担当者による司法書士法の注釈書である、小林昭彦・河合芳光著「注釈司法書士法(第3版)」(テイハン)の法第3条第1項第7号の解説を参照して下さい。
http://www.teihan.co.jp/new/newtitle0701.htm
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