Altered Notes

Something New.

ひび割れが始まった 中国・ロシア関係

2022-09-19 20:02:20 | 国際
共同通信の配信に拠れば、ロシアのプーチン大統領と中国の習近平国家主席が9月15日に上海協力機構(SCO)首脳会議に合わせてウズベキスタンのサマルカンドで会談した、ということである。

ロシア大統領府などに拠ると、プーチン大統領は会談冒頭、「ウクライナ危機に於ける中国の姿勢はバランスが取れている」として高く評価している、と発言した。

習近平氏は「ロシアと共に急速に変動する世界を揺るぎない発展へと導く用意がある」、と述べて、双方は
互いに協力深化の意向を示した、としている。

両氏の対面での会談はロシアのウクライナ侵攻後では初めてであり、また、プーチン氏が北京冬季オリンピックの為に2月に訪中して以来のことである。

今回はこのプーチン・習近平会談について、ジャーナリストの長谷川幸洋氏の解説をベースに記してゆく。


共同通信はこの二人の会談について見出しを「協力深化表明」としているのだが、実は全くピンボケであり、事の方向感が理解できていないのである。共同通信がタイトルとして「協力深化表明」としたのは、習近平発言の「ロシアと共に~用意がある」発言からである。これは共同通信がお粗末であり、真相は全然違うのだ。


プーチン氏はそもそも何と言っているのだろうか?

彼が最初に言ったのは、

「我々はウクライナ危機の問題で中国の友人たちがバランスの取れたポジションをとっている事を非常に高く評価している」

である。これが一点目だ。

そして、次の二点目が肝心なのだが、プーチン氏は

「我々はこの問題について貴方(習近平)が抱いている問題点や”懸念”、これについて理解している」
「今日のこの会合で、我々はこの問題について、我々の立場・ポジションについて詳細に説明していきましょう」

と言っているのだ。

お分かりだろうか。

「貴方が抱いている疑問や懸念を我々は理解している」と言っているのである。

これはどういうだろうか。


習近平氏から見れば

「ロシアよぉ、おまえ負けてんじゃん、大丈夫か?」

と言っているのである。

それに対して、プーチンは

「判ってる。俺はいま負けてるけど、これからちゃんと説明するから、そう心配するなよ」

と言っているのだ。


つまり、プーチン氏は現状で「負けている」事を習近平氏に対してはっきり表明した、ということである。それに対して、習近平氏は「そんなことはもちろん判ってる」と。

これらの発言は会談冒頭のやりとりである。


冒頭の発言でいきなりこんな内容の発言をした、というのは実は相当なことなのである。

どういうことか。

この手の首脳会談が開催される場合、そもそも会談の前にプーチン側と習近平側の側近同士で具体的な会談内容を打ち合わせするのである。その段階で中国側から「おまえ(ロシア)、大丈夫かよ」「このところ、ボロ負けだろ」「一体どうなってんだ?」と言われている筈であり、それに対してプーチン側は「わかった、心配するな。ちゃんとそれを認めて言うから」というシナリオになっていたのである。

つまり・・・習近平氏は一言でいうとロシアに対して「疑心暗鬼」になっているのである。


・・・なので、そもそも「協力深化表明」などというおめでたい話ではないのだ。全然違う。

これが何を表すか言えば、プーチン氏と習近平氏の間で、その仲にひび割れが生じている、ということだ。
・・・と読まなければいけない話なのである。

それを「協力深化表明」などと建前のところで見出しを取っている共同通信は相当ボケている、ということであり、かなりのポンコツだと言えよう。この会談からそんな見出しを作る日本マスメディアは、やはりガラパゴス化していると言わざるを得ないだろう。真実や実態がまるで見えていないのだから。


ここまでの状況を説明した上で、プーチン大統領の本音・本心を探ると、どうだろうか。
本当は中国に対して

「軍事支援してくれよ」
「武器・弾薬・兵隊もなくて困ってんだよ」


と言いたいところだろう。さらに言うなら、

「本当にヤバくなったら、オレ、核兵器だって使わざるを得なくなるかもしれないぜ」
「それについても、了解してくれよ」


・・・というレベルの話まで本当は言いたかったのではなかろうか・・・と推察されるところなのだ。


だがしかし・・・。

習近平主席は、事前の打ち合わせ内容を聞いて立腹したのではないだろうか。「ふざけんな」と。

「俺が負け戦になんで付き合うんだよ」
「そんな話に乗れるわけがないだろう」


…と言いたいくらいの気持ちであったことはまず間違いないところだ。


そのような中国の本音に対して、プーチン氏は、

「それはわかった」
「分かったから…しょうがない、中国はもう期待できない」


として、「さて、どうするか」という思案をする。

そこで、プーチン氏は北朝鮮の金正恩氏に電話をしたのである。すると、それをアメリカの国防総省が全部上から聞いていて、すべてがバレバレになったのだ。

ロシアは中国・習近平氏に断られて、ついに北朝鮮・金正恩氏に頼るしかない・・・という段階まできたのである。



このような状況下では、習近平主席はもうプーチン氏サイドには乗れないであろう。習近平氏自身は中国に於いて10月の党大会で自身の総書記3選目を固めなくてはならない、という予定が控えているのだ。既に”3選はほぼ固まった”とも言われているのだが、実は中国共産党内に「プーチンなんかに肩入れするな」という動きもあるのだ。プーチン氏に肩入れして、それが危なくなったら中国も危なくなってしまうので、「そんなことはやめろ」という趣旨の論文が既に公表されているくらいなのである。

それでもその種の動きをなんとか押し止めて、現在の状況になっているのだが、これでもしもプーチン大統領が本当に敗北した場合、中国国内(共産党内)では、

「おまえ、だから言っただろう」
「”プーチンなんかに乗るな”と言ったのにも関わらず、何だこのザマは」


…という事にもなりかねないのである。その意味で、習近平氏は自分の足元に火が点きかねない危うい状況にあるのだ。



・・・と、このような現状だが、共同通信の記事のトーンとは全く異なる実態がそこにはあるのだ。





ここで、中国の今後に関する情報があるので、それを伝えたいと思う。


長谷川氏に依れば、最新のアメリカ・CNNの解説に喫驚すべき内容があった、とのことだ。そのポイントは、

「こうなると習近平はヤバいので、アメリカに友好的な態度に変わる可能性がある」

というものだ。

本当だろうか?

いきなりそこまで手のひら返し的に進むかどうかは分からないが、しかし現在の中国は経済がガタガタ(*1)なので、”こんな時にアメリカと事を構えている場合じゃない”という判断はあり得るのだ。

仮にそうだとすると、ここはひとつ、”アメリカの制裁を受けない”どころか、現在受けてる制裁だって緩和してもらう為に、ちょっとアメリカに甘い顔を見せて「これから仲良くやっていこう」という方向に変わる可能性もゼロとは言えないのである。

習近平氏は優柔不断なところがあると共に”口先ばかりの男”でもある。これまでは強気でいろいろな事を言ってみたが、結局はプーチンもやられてしまったし、戦争をやってみたものの勝てないし・・・「この状況では事を構えるのは損である」、という判断に変化する可能性は確かにある。それはプーチン氏も当然判っているのだ。今回のウクライナ侵攻で大成功してるのは実はアメリカである。それはホワイトハウスが全部やっているからだ。習近平氏としては、「プーチンも失敗したし、俺も台湾をやりたかったけど・・・ちょっとヤバいかも」、と考える可能性はゼロとは言えないのだ。その意味でアメリカに擦り寄るかもしれない、ということだ。中国はかなり混乱していることもあって、左派系のCNNにまでこんな事を書かれてしまう情勢にあるのかもしれない。






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(*1)
中国の経済がヤバくなっているのは、例えばロレックスの高級腕時計の価格を見ても判るのである。(*1a)今までは中国人が投資対象として大量に買い漁っていたので、価格は高騰していた。しかし、今は中国人が総じて売りに出しているので相場が安くなっているのだ。こうした事実からも、中国経済が相当苦しい状況になっている事は伺い知れる。

(*1a)
時計投資はすぐに売却できるところが妙味である。