田中川の生き物調査隊

平成12年3月発足。伊勢湾に注ぐ田中川流域の自然と生き物を調べ、知らせる活動をしています。三重県内の生き物も紹介します。

ハマダラハルカ

2011-04-20 | ハエ目(双翅目)

ハルカ科のハマダラハルカ Haruka elegans Okada, 1938

鈴鹿市西庄内町の一ノ谷。野登山を目指して登っていくが,斜面が急峻になってきたところで諦めた。途中,明るい森林内の低いところをハマダラハルカが飛び回っていた。

三重県レッドデータブック2005では情報不足種とされており,「第3紀周北極要素を示す種として学術的に貴重であるが,現在のところ広く分布し,個体数も多い。」としている。周北極要素とは,北半球の温帯から亜寒帯にかけて広く分布している種を指して使われる用語で,北米と極東アジアの植物要素の類似性を説明するときに「第三紀周北極要素」などという用語が使われる。温暖な時代に北極で暮らしていたハマダラハルカは,地球の寒冷化に伴い南下して今や日本で生き延びているということなんだろう。

三重県内の記録は,蒔田実造氏が藤原岳坂本登山口で記録し,「羽斑春蚊。ハマダラハルカは1属1種からなる日本特産種で,本州,四国,九州に分布する。春蚊の名前が示すように早春3~4月に発生,成虫の出現時期が10日間と短いためか,採集例は少ないようである。」と三重昆虫談話会の会誌に報告している。「本種は三重県でも記録は少なく」と言っているから,他にも記録があるのだろうが,私は未だ知りえていない。

福井県レッドデータブックでは要注目種に選定され,「春に低山地の雑木林で見かけられる.黒っぽい蚊のような双翅類.体長約10mm ,翅長8mm 前後で,体は全体黒い.黒褐色の翅には,黄白色半透明の斑紋が12 個ほどある.
幼虫は,朽ちた広葉樹の樹皮下で育つ.成虫も,樹幹や倒木の上に止まっている姿がよく見かけられる.」と,種の特性が解説されている。

京都府でも要注目種に選定されており,「成虫は早春3~4月に出現し、林間を低くかつ素早く飛翔し、交尾のため立木に集合する。幼虫はネムノキの朽木の樹皮下に生育する。京都府では個体数も多く、良好な森林のみならず周囲の二次林でも見られる。」と生態的特性などが解説されている。

愛媛県では絶滅危惧種に選定されている。「ハルカ科は世界に3属3種が知られるのみで、ハマダラハルカは日本特産の貴重な種である。」と特記されている。

大分県では情報不足種に選定され,「分布は局地的であり、雑木林の消滅によって生息地を失う危険性が増している。」としている。

栃木県では,「環境省のレッドリストで情報不足(DD)とされる。」との理由から要注目種に選定している。形態と生態について「他に似た種がいないため、同定は容易である。
 成虫は4月ごろ出現し、低山地~山地の森林で見ることができる。昼行性で、雄は早春の見通しのよい林内をすばやく活発に飛び回り、木の幹に止まっては飛びたつ動作をくり返して交尾相手を探す。成虫の発生が早春に限られることと、動きがすばやく見つけにくいことから、分布記録は少ないが、発生地での個体数は決して少なくない。幼虫は立ち枯れや地面に落ちて朽ちた枯れ枝の樹皮下にすむ。食餌としてネムノキの枯れ枝が報告されているが、この他の植物も利用するものと思われる。」と解説している。

岡山県では,「森林性の昆虫で、既記録地、個体数は共にそれほど多くない。」との理由から情報不足種に選定されている。

原色日本昆虫図鑑(下)によると,「体長12㎜,翅長7㎜。全体黒褐色で光沢があり,黒色毛が多い。触角は短く15節よりなり,頭長の約2倍の長さ。翅は黒褐色で,黄白色のまる味のある半透明の斑紋が大小合わせて15個内外あり,R1脈末端には黒色の縁紋がある。」などとある。

2011.4.17




最新の画像もっと見る

コメントを投稿