![ハラグロランプカミキリモドキ](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/77/4d/8ff0c8d71c45656e9389a98887dc08f9.jpg)
カミキリモドキ科カミキリモドキ亜科フトカミキリモドキ族のハラグロランプカミキリモドキ Eobia florilega Lewis, 1895
標本写真で恐縮だが,生時の写真は無い。採集は2002年7月13日の夜。当時はマリーナ河芸の観鳥台(展望タワー)がライトアップされていて,たくさんの数の昆虫たちが集まっていた。いくつか有った照明灯は何度も何度もならず者達に壊されて,最近は全くライトアップされていない。
このカミキリモドキは,当時同定していただいた今は亡き市橋甫先生から「この標本は珍しいですよ」と聞かされていた。市橋先生からそんなことを言われたのは後にも先にも無い。
先生からは事あるごとに「Sさんはいろいろ調べられていますが,記録に残してくださいね」と言われ続けていた。
最近になって,昔の標本箱を覘いてみたら,蓋がしっかり閉まっていなくて,カビは生えているわ,虫に喰われているわで,半分は廃棄せざるをえない。そんな中に,ハラグロランプカミキリモドキの標本は破損も無く残っていた。
県内のカミキリモドキ科を調べてみると,本種の記録が見当たらなかった。おそらく三重県初の記録であろう。この記録により,三重県産のカミキリモドキ科は26種となる。
黒佐和義(1958)によると,「日本・沖縄島・宮古島・台湾・支那より知られた種で,本邦では神戸と愛媛県鹿島に産する記録があるのみ。筆者は神戸と大分県佐伯市で夜間灯火に飛来した成虫を採集した他,高松市と対馬佐須奈から得られた成虫を検した九州及び対馬からはこれが最初の報告である。本種は判明した産地が現在のところ未だ少ないので,確実なことは判らないが,本邦では比較的温暖な地方にのみ分布するものと考えられる。毒性については未調査である。」
秋山秀雄(2000)によると,「体長10.5-14.5㎜。小あごひげ,各付節,腹部は暗色,黒褐色でそれ以外は黄褐色。(中略)5~6月に灯火で採集される。分布:本州,四国,九州,三宅島,八丈島,対馬,男女群島,種子島,奄美大島,沖縄本島,加計呂間島,台湾,中国。」
原色日本甲虫図鑑(Ⅲ)によると,「7月に出現,灯火にくる。」
市橋先生から言われ続けていた記録は,ようやく一つ残されることになる。この標本はもう自分の手元に置いておくことは出来ない。近いうちに県立博物館に寄贈しようと思っている。
参考文献
I Lobl・A Smetana(2008)Catalogue Of Palaearctic Coleoptera, Volume 5: Tenebrionoidea,670pp.Apollo Books, Denmark.
秋山秀雄(2000)日本産カミキリモドキ科図解解説.神奈川虫報132:1-53,神奈川昆虫談話会.
黒佐和義(1958)カミキリモドキ類とこれによる病害について : 有毒甲虫の研究, I.衛生動物 9(3) :130-148,日本衛生動物学会.
黒澤 良彦ほか(1985)原色日本甲虫図鑑(Ⅲ).保育社,500pp.
生川展行(2006)三重県のカミキリモドキ科.ひらくら, 50(5):67-77.
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