麒麟琳記〜敏腕Pの日々のつぶやき改題

還暦手前の身の回りのこまごま。
スポーツや映画演劇など。

朝の時間

2005年06月03日 | 鑑賞
小野骨折のニュースにヒヤリとしながら
六本木に向かい『朝の時間』
(作=水谷龍二、演出=永井寛行)を観る。

盟友(と僕が一方的に思ってる)
テアトルエコーの白川浩司のデビュー作だ!
制作のデビューとは、メッチャクッチャ乱暴に云えば、
チラシの「制作」のところに名前が載る
ってこと。
いわゆるクレジットが入る→全責任を持つ
(CREDIT=信用)
閑話休題

さて。
彼は「白川」とゆー名字とは裏腹に
「腹黒い」のが売りで、
若手制作人会議では「魔王」という役職でした[*]

そんな言われ方をする人に
悪い人がいることは少ないわけだけど、
彼も例外ではなく、決して腹黒くなどありません。
ただ計算高くコザカシイだけです(笑)

“優れた制作者”に必須の、上記性質を持つ彼の
“責任制作第一弾”が、面白くないわけがない!

『朝の時間』は、実際面白かった。
タイトルが予感させるよーに、
事件の起こりにくい朝を切り取り、
淡々とした中に「今の家族」が浮き彫りになります・・・。

この「今」が肝要!
多くの作品の「今の家族」が、
リアルなようで嘘が多いのに対して、
この作品に登場する野崎家(及び関係者)は、
嘘っぽいが実はリアルな「今の家族」だ!

淡々とした朝に、ほとんど類型の事件が続く……
と見えるかもしれないが、
そこが大いに魅力であり狙いなのだ、と僕は睨んだ。

その“何もなさ”かげんが、本作の最大の魅力!と。

甲子園を沸かせた大型新人が
プロ初先発でノーヒットノーランで勝つ!
・・・のは、確かにカッチョイイ
あるいは、バカバカ打たれながら、
味方打線の大爆発で、13-12で勝つ!
・・・ってのもドラマチックでいい。

で、じゃあ、白川のデビューはといえば・・・
初回相手ピッチャーの立ち上がりを攻め、
ヒット(盗塁)、送りバントに犠牲フライで
1-0。
その後は投手戦と云えば聞こえはいいが、
両投手の熱投、というより、
ともに、ヒットや四球でランナーを出しながら、
点につながらない貧打戦の様相・・・。

初先発・白川は丁寧なピッチングで、
ピンチらしいピンチはないものの、
エラーがらみで2点を失い、
6回表を終わり1-2。

その裏自らのヒットを足がかりに
ゲッツーくずれで同点のホームを踏むと、
7回表はこの試合初の三者凡退で斬り、
その裏ワイルドピッチに
2塁から長躯ホームインして逆転。

そして最終回。
二死1、2塁と攻め込まれた場面で
四番の放った大飛球は風に戻されてライトフライ。

終わってみれば、完投勝利。 
9回8安打3四死球、
奪った三振たったの2個。自責点0。

ホームランも連打もない、
夜のスポーツニュースでは
コメントしづらい凡戦と言えるのだが・・・

だが、しかし
例えばラストバッターに投じた
インハイは主砲の好きなコースから
ボール半分ズラした絶妙のコントロールあってのもの。

失点して尚二死3塁でトップバッターを迎え、
5球続けた内角まっすぐをファールファールと
粘られたあと、1球も外を見せずに
しつこくまた中に、しかしスピードをころした
シンカーでピーゴロ。

などなど細かいところで野球の奥行きを感じさせる
ルーキーらしからぬピッチングを積み重ねての1勝

長ーーーーくなりましたが、
そんな、計算高くてコザカシイ、見事な初先発・初勝利だと、
僕は思った
あえて“密やかさ”を企んだ小憎らしいデビューは、
劇団名や作家、演出家ではなく、
プロデューサーの名前で観に行こうと
観客に思わせる“大制作者”の誕生と断言したい。



*=若手制作人会議。
  会長、副会長、書記長、幹事長など偉そうな名前を
  皆が名乗りあい、征夷大将軍、三冠チャンプなど、
  意味不明な役職(?)から、はてはチーママ、
  そして魔王なども出現・・・。
  その集団の話は、また改めて。
コメント (2)
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