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お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

教皇選挙

2025-04-09 | 映画(か行)


◼️「教皇選挙/Conclave)(2024年・アメリカ=イギリス)

監督=エドワード・ベルガー
主演=レイフ・ファインズ スタンリー・トゥッチ ジョン・リスゴー イザベラ・ロッセリーニ

近作「西部戦線異常なし」(未見)で知られるエドワード・ベルガー監督の新作は、次の教皇を決めるコンクラーベを描いたスリリングな会話劇。脚本のピーター・ストローハンは秀作「裏切りのサーカス」を手がけたと聞く。全編にわたって途切れない緊張感は同じだと納得。

後継者を決める選挙のために世界中から候補者がシスティーナ礼拝堂に集まった。この重大な選挙を取り仕切るのはローレンス枢機卿。有力な候補者4人をめぐって、内部では票集めとパワーゲームが動き出す。

候補者にまつわるスキャンダルが少しずつ暴露される。裏で糸を引いているのは対立候補。この宗教界においても人種差別や偏見、利害の対立は根が深い。こんなことが教皇を選ぶ選挙で起こるのかと驚かされるが、聖職者といえども欲のある人間であることに変わりはない。教皇として宗教界を治めることは、偏見や失脚を狙う人々に立ち向かうことでもあるのか。

ローレンス枢機卿は、不適切な行いが明らかになった者を除いて投票をするように場を仕切っていく。ローマで起こったデモがコンクラーベに影響がないように気を配ったり、候補者に不審な事柄があれば調査を指示したり。自身の信仰にも迷いが生じているのに、自分に票が入ることに動揺してしまう。

重厚な人間ドラマ、映画全体を彩る深い赤の色彩、人間の醜さ、宗教に携わる者の在り方。様々な要素が語られながらも、密室サスペンスのような面白さも持ち合わせた秀作。本作がアカデミー賞を征することができなかったことが不思議に思える。

しかし、キリスト教を信ずる者ならば、この映画の結末をどう受けとめるかによって評価がきっと変わってしまう。対立候補にも保守派とリベラル派のカラーがあったように、鑑賞する側にも受け止め方が異なるに違いない。鑑賞して優れた映画だと思っても、この結末を受け入れられる宗教的な信条があるか否かによって映画全体の印象がガラッと変わってしまうに違いない。アカデミー賞に一票を投ずる会員たちの票が割れる映画なのだろう。

それにしても、ひと癖ある役者たちの演技合戦がほんとに素晴らしい。スタンリー・トゥッチ、ジョン・リスゴーが他の作品とはまた違った凄みを見せる。シスターを演じたイザベラ・ロッセリーニが男たちに向かって放つひと言も心にしみる。そしてレイフ・ファインズが直面する難題に困惑しながらも、使命を全うしようと懸命になる姿も心に残る。

結末には思わず息をのむ。僕は映画館の暗闇で「えっ」と小さな叫び声をあげてしまったような気がする。そんな映画はなかなかないぞ。




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