
■「アルファヴィル/Alphaville Ou Une Etrange Aventure De Lemmy Caution」(1965年・フランス=イタリア)
●1965年ベルリン映画祭 金熊賞
監督=ジャン・リュック・ゴダール
主演=エディ・コンスタンチーヌ アンナ・カリーナ ラズロ・タボ
アルファ60というコンピュータによってコントロールされている都市アルファヴィル。そこでは人間は喜怒哀楽の感情を持たないようにそうした言葉を削除されている。それに反した人々はプールで公開処刑されるのだ。主人公の探偵はその世界からアルファ60の開発者であるブラウン博士の娘ナターシャを連れ、外の国へと脱出する。管理社会の恐怖を冷ややかに描いている。製作時から約20年後の1984年という設定。管理社会の恐怖を描いたジョージ・オーウェルの「1984」の引用なのかな。
設定とお話だけで近未来SFを成立させてしまう何とも強引な映画。なれどハードボイルド小説的な展開とアンナ・カリーナの存在感で観客をグイグイ引っぱっていく。商業映画を嫌うゴダールだけど、この映画は彼の作品中でもエンターテイメント色が強い。ゴダールというブランドを敬遠する人々にも、受け入れられやすいのではないだろうか。それはきっと主人公によってナターシャが初めて「愛」を口にし、かすかな微笑みをみせるラストシーン、その静かなる痛快さ故であろう。特撮や特別なセットなしにSF世界を構築するアイディアは見事。第三級誘惑係という役割も面白いよねぇ。「お疲れでしたらお休みください。」なんて余計な世話を焼いて、「一緒にお風呂にお入りします。」だもんね。「物語842を。」って人を笑わせておいて罪を問うのも面白い。「お元気ですか?」「元気です。あなたは?」に続くあいさつを、前を省略して先に仕掛けていく(しかも時には握手を求めながら)。唐突で不自然な「元気です。ありがとう。」という挨拶は、コミュニケーションの合理化が行き着くところを描いているのだ。電子音と気味悪いアルファ60の声は強い印象を残してくれる。
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