(前回からの続き)
先述のように、ウクライナ危機の先行きはいまだ不透明なものの、近い将来、ロシアとウクライナは何らかの停戦合意に至るだろうし、欧州・・・のEUとりわけユーロ圏のドイツは同危機前に近い枠組みのもとでロシア産エネルギーを購入するようになるだろう、と予想しています。結局、それが3者にとって、もっとも「現実的」で「合理的」だからです。別の言い方をすれば、EUにとって対ロ軍事費増強・エネルギーの脱ロシア化を進めることは、上記の事情に照らせばきわめて不合理なのはもちろん、ウクライナにとってもこれは貴重な外貨収入源のガス輸送料(ロシア発欧州行きのガスパイプラインの同国内の通過料)の喪失を意味するから大きなマイナスです。もちろんロシア(原油・天然ガスだけの国)だってアメリカへの対抗上、EUとのつながりは絶対にキープしなければなりません・・・って、自分のエネルギーの経済性(価格の安さ&供給安定性)をEUにアピールすることで。
以上のように「合理的」に考えれば、ロシア産エネルギーが「かすがい」となるかたちできっとこの危機は収束するだろう、と読めるわけです(?)。もっとも、このたびのことがあるので、「ノルド・ストリーム2」(ロシアとドイツをバルト海底経由で直接つなぐ新規ガスパイプライン[完成済みも運開は未承認])でのガス輸送量は当初予定よりも減らし、その分だけウクライナ領を通過するガスパイプライン経由に振り分けることで同国にもガス輸送料の増額というメリットがあるようにする、みたいなことを3者で検討する、なんてのもいいかもしれません(?)。
まあともかく、きっと上記のような合理的な考え方が感情的な対立を解消させることでしょう(?)。それを予感させるのが、たとえば次のようなトムソンロイター記事が伝える現状です。それによると26日、ロシア国営天然ガス企業「ガスプロム」が欧州に対し、需要家からのリクエストに基づいてウクライナ経由で天然ガスの供給を継続している、と述べたとの由です。この瞬間も激しい軍事衝突が起こっているはずのウクライナ・・・をこうして無事に、というより淡々と?通って欧州にロシア産のエネルギーがしっかり届けられている・・・という事実は、このあたりにウクライナ危機の解があることを知らせてくれているように思えますね・・・