Straphangers’ Room2022

旧Straphangers' Eyeや習志野原の掲示板の管理人の書きなぐりです

軽装での利用を前提にしているのか

2023-01-12 21:23:41 | 交通
この年末年始、青春18から始まり、新幹線に航空機とフルコースで使って東奔西走していました。
そこで見たのは、というか私自身もそうだったんですが、キャリーバッグというよりスーツケースを持った旅行者の多さ。列車によってはカオスになっていましたが、インバウンドがまだ全然戻っていない状況でこれではインバウンドが本調子になったらどうなるんでしょうね。

まず最大の問題は荷物を置くスペースがないこと。空港輸送の京成線で新3100系が座席の一部を跳ね上げ式にして荷物を置けます、と言っていますが、着席とのトレードオフは何とも微妙です。長距離利用客が目立つJR西日本の新快速ではドア横の補助席に腰掛けたうえでその前にスーツケースを置くという乗客が多く、ドアの有効開口が大幅に減少しています。これは転クロ部分にはスーツケースが置けない(新幹線のように座席背後のスペースに置けるほどシートピッチがない)、ということが原因ですし、網棚に上げるにしても、まず網棚のサイズが小さく、かつ担ぎ上げるのは屈強な男性でも難事です。網棚も窓のサイズの大型化で窓の上辺を避けて設置されるため奥行きが減り、窓から落ちることを防止するための板がついてこれも有効幅員の減少になっています。(ソフトタイプのバッグのように棒の隙間に少し食い込むといった置き方が出来ない)

近郊電車に荷物を持ち込むほうが悪い、という頭の悪い意見が当然想定されますが、青春18での移動だけでなく、新幹線との乗り継ぎも当然あるわけで、私自身三ノ宮から姫路まで新快速に乗ってそこから新幹線、という至極当たり前の行程を取ることが少なくないですし、そこで荷物の扱いに毎回困っています。担げるくらいの重量にするという前提で網棚の奥行きを深くしてくれれば助かるんですけどね。少なくとも航空機の預け荷物で想定されているサイスのスーツケースは普通に持ち込まれると想定するのが現代の常識でしょう。

いわんや新幹線は、という話で、こちらは航空機の預け荷物サイズをカバーする奥行きはあるのですが、こちらは長距離移動、インバウンドを中心に海外との一貫行程での移動と考えたら、航空機の預け荷物は1個23㎏を上限とすることが多く(C席以上では32㎏とかもある)、20㎏級の荷物を網棚にどうぞ、というのは果たして現実的なのか。

上げ下ろしで荷物を取り落として座っている人にぶつかって怪我をするという事態や、上げ下ろしでぎっくり腰をやらかすとか、安全面でも問題です。
東海道、山陽、九州新幹線ではデッキ側の座席を背面のスペースと合わせて特大荷物用として別売りしていますが、航空機の預け荷物の範囲内のサイズは「対象外」です。となるとどこに置くのか。中には座席背後のスペースに置いて前席のリクライニングを阻害するケースも多いのですが、現時点では全く対応は考えられていません。

一方でJR東日本の新幹線はデッキ側の座席を撤去して荷物置き場を設置しました。これなら重量荷物、また上げ下ろしが難しい乗客にも優しいのですが、東海道などは頑なにそれをしません。座席数の問題というのであれば全編成全車同じ数だけ撤去すればいい話ですし、Covid19で乗車率も下がったままなんですから、導入するいい機会であり、今後予想されるインバウンドの復活に備えるという意味でも「やるなら今」でしょう。

鉄道の荷物スペースが不十分な問題、昔は「手荷物」(チッキ)の制度があったわけで、航空機などのように同時輸送ではないですが、着駅まで安価に送付できました。(タイ国鉄では今でも手荷物として同じ列車で送れる)
まあ宅配がセットで無かったので使い物にならない制度でしたが、本来は預け荷物の制度があるべきであり、無理ならば自分で置けるように荷物置き場を整備する、それが当たり前の対応のはずです。

正直なところ、荷物を持っての移動が結構あることもあり、東阪間でも敢えての航空機なんですよ。リムジンバスと航空機はスーツケース前提の利用が可能で、ラストワンマイルとしての鉄道はまあ目をつぶると。ただし鉄道もバリアフリー対応のおかげでぐっと便利になりました。エレベーターがたいていの駅にありますから。ただ「元気な老人」が駆け寄って我先と乗るので待つケースも多いですが。
そうした日常から見ると、鉄道の常識が世間から乖離を起こしていると思います。






渋谷駅大作戦

2023-01-12 21:22:38 | 交通
渋谷駅の改良工事で、山手線外回りの移設というクライマックス的な工程が1月の3連休にありました。
外回りが大崎-池袋間で丸2日運休など影響も大きく、メディアも大きく取り上げましたが、中には内回りが運行しているのを忘れたのか、埼京線などでの代替手段がない駅が「陸の孤島」になるというトンデモ報道もありました。あるいは「関東ローカル」という批判もありましたが、影響度合いは渋谷駅の利用者数を見れば一目瞭然であり、日本一の乗降者数を誇る新宿駅の発着にも影響するだけに、全国ニュースとして取り上げられて然るべき内容です。

一方でこの改良工事のビフォーアフターを見るとどうも腑に落ちない部分も。
開業以来相対式ホームあるいは島式+片面の2面2線だった山手線ホームが島式1面2線になったわけですが、全国有数の乗降者数を誇る渋谷駅が1面2線でいいのか。重通勤路線のように朝は都心向き、夜は郊外向けが顕著に混むというのならともかく、日がな両方向とも混みあうわけで、島式ホームを拡幅したとはいえ同じホームで両方向を捌くのはカオスではないのか。

皮肉なことに品川駅の改良工事では田町以北の方向別複々線とは異なり線路別になっているため島式1面2線だった山手線ホームが、内回り専用になり、外回りは京浜東北線ホームを拡幅する格好で逆側に向き、京浜東北線南行きから東海道線上りまでは1線ずつズレる格好になっています。
そのため両方向の電車を待つ客がファスナーのように嚙み合って並んでカオスだった山手線ホームの混雑が緩和されました。品川駅は横須賀線下りも15番線に分離されていますし、横須賀線では武蔵小杉が1面2線で混雑が激しいことから下りホームを新設して分離しています。

山野線西側の主要駅では偶然かもしれませんが、渋谷、新宿、池袋と上下線のホームが分離されていたのに、今回渋谷が「逆行」しました。
かつての品川もそうでしたが、遅延等で運転間隔があいた時にあっという間に電車待ちの乗客がホームを埋めることになり、片側だけ来てももう片方の乗客が長い列を作っているので降車客が身動きが取れないといった事態になります。今回の渋谷はホームは拡幅されたとはいえ、そのリスクへの懸念は払拭できません。

そしてそもそも論として工数は妥当だったのか。北側ガードの移設、線路の移設で相当な時間を食うという説明でしたが、同種の他社事例と比較してどうなのか。事前に準備する、仮設化する、という工程を入れて、一気に短時間に移行する、という対応は出来なかったのか。ガードの桁移動が最大のネックにも見えますが、これも大型重機を投入すれば結構速いわけで、実際に桁の架け替えが一夜城よろしく完成することは多々ありますから。

トンネル内という非常に苦しい条件で同種の改良を完成させた阪神神戸三宮の例を見ると、撤去する降車ホーム(0番ホーム)を仮設化して、ホーム下に移設する新上り線の線路を用意していました。そして線路が移転して拡幅された上りホームの拡幅部は当初は仮設として、一夜での切り替えを実現しています。このあたりはどうすれば工数を極小化できるか、工程を短縮できるか、というところではないところに重点を置いたのでは、と思いますし、山手線を止めるという重大事への認識が正しく見積もられていたのか、と思います。こういうとああだこうだと出来なかった理由を並び立てる手合いが出てきますが、それは絶対的に出来なかったのか、という話であり、毎度のソリューションを出せない有害な発想です。

もう一つ、メディア各社がニュースで報じた「全国ニュース」ですが、事前の周知はどうだったのか。首都圏ではJR線の車内には告知が万全に出ていましたが、「首都圏ローカル」だったわけです。しかも私鉄各線での周知もあったかどうか、というレベルです。さらに山手線の利用は「全国区」ですから、例えば関西から上京して品川で新幹線を降りて驚く、ということもあったでしょう。日常生活への影響を最小限にした、という日程ですが、正月明けとはいえ3連休でもあり地方からの上京も少なくないでしょう。
少なくとも関西ではこの工事に関する告知をJR西日本、私鉄ともに見た記憶がなかったのですが、逆に関西圏での大規模工事による計画運休の首都圏での告知も含めて、「人流」を踏まえた周知が必要です。

なお冒頭の「陸の孤島」ですが、山手線のように1周すれば時間はかかるが目的地に行ける、というケース、また複々線で急行線を使えば移動できる、というケースにおいては、逆行(折り返し乗車)での移動でカバーできるので、もう少しそれを活用できないものか。大規模工事でなくても保守などで半日だけ運休、という対応が出来ますから。ニューヨークの地下鉄がそういう運用を日常的にこなしてるのは有名ですが、日本では「折り返し乗車は不正」という意識が事業者の周知もあって強く、せっかくのインフラが宝の持ち腐れになっています。