Straphangers’ Room2022

旧Straphangers' Eyeや習志野原の掲示板の管理人の書きなぐりです

酒という「薬物」へのパラダイムシフト

2021-06-29 22:22:00 | 時事
また飲酒運転による痛ましい事故がありました。
飲んだら乗るな、乗るなら飲むな、と飲酒運転を戒める標語はそれこそ世界共通なんですが、なぜなくならないのか。法解釈の問題というわけでもなく、酒を飲んだら運転しない、運転するなら酒を飲まない、と子供でも分かるような単純な基準がなぜ守れないのか。

結局、「飲酒」という行為が人間の感情を著しく歪める、ということでしょう。やってはいけないこと、と刷り込んで、一発取消とか厳罰で威嚇してもなお無くならない。飲酒の魅力は運転すると分かっていても抑えきれない、そして飲酒の結果として運転してはいけないという最低限のモラルすら失わせてしまう。

アルコールは「薬物」であり、飲酒は禁止あるいは厳重に規制すべき、という主張があっても否定できないでしょう。酒飲みの一員としてそれは勘弁願いたいですが、実際にロードサイド店で一人客がビールを飲んでいるのを見ると、モラルが期待できないのであれば禁止するしかない、という極論も否定できません。

これ、Covid19での酒類提供の自粛要請にも共通する話でしょう。なんだかんだと理由をつけても、突き詰めれば飲酒運転をするドライバーと一緒で、酒の魅力の前に感染拡大予防といった社会的要請を考えなくなるわけです。店で飲めなければ意地汚く路上飲みだなんだとあたりかまわず飲み始めるというモラルの無さもそう。

文化人や酒造メーカー、飲食店が「酒は文化」と言っても、文化の欠片もなくただ酔えればいい、飲めれば社会のルールやモラルなんか知ったこっちゃない、という人が一定数(というか数多く)存在し、それによる弊害が実際に発生しているわけです。飲酒運転による事故然り、BBQだなんだでのクラスタ発生然り。そうそう、都内で河川敷でパーティーをして酔った双子の兄弟が片割れを川に突き落として水死するというやりきれない事件がありましたが、これもアルコールの「弊害」でしょう。

だからと言って「禁酒法」はさすがに嫌です。であればどうしたらいいのか。
結局は酒を飲む人に問題の大半は帰結するわけで、どうすればモラル無き飲酒が減るのか。
それが線引きできなければ、飲酒行為はリスク行為として禁止、あるいは厳重な規制が必要であり、酒飲みや飲食店などに配慮して飲酒を容認することによる、飲酒起因の事故事件を社会が容認できるのか。同じ自動車事故でも、運転そのものであれば自動車という手段を封印することによる社会的損失の方が大きいから、といえますが、飲酒の場合はそれで得られるメリットって?というレベルでしょう。自動車は無ければ生活が成り立ちませんが、飲酒は無くても生活が成立しますし。

「酒は文化」とかお高く気取って飲酒を正当化するよりも、警察が強権的に規制しても撲滅できない現状にどう直面するか。それともタバコのように「飲酒はあなたの・・・」と飲酒運転事故の現場写真を酒瓶や缶にプリントしましょうか?禁止したいけど止む無く認めている、ということを忘れるな、というような扱いで。

飲酒という行為でモラルがマヒするわけです。であれば身体で覚えさせるしかないでしょう。
許容されたレンジを外れたら厳しく摘発する。飲酒運転のみならず迷惑行為その他飲酒起因の行動を許さない、許されないということを、言っても聞かない手合いに刷り込むのです。

一方で本来現行の体制でもそれが可能なのに手抜きし放題という問題もあるわけです。
上記のようにロードサイド店で一人客に酒類を提供する店。またハンドルキーパーを確認しないで「グラスは人数分でよろしかったでしょうか」という店。あるいはそうしたロードサイド店周辺で取り締まれば入れ食い状態のはずなのに絶対に手鰍ッない警察。これもまた飲酒する側同様に厳しく処罰しないといけません。

地方では店に飲みに行くということ自体が原始的不能、というケースもあり、タクシーや代行を手配しないと居酒屋すら行けない、というビハインドは確かにありますが、それは飲酒運転を正当化し得るものではありません。行政も補助を出すとか公共交通を用意するといったそこへの目配りくらいはしてほしいものですし、一つ一つ飲酒運転の萌芽、正当化を潰す必要があります。

「酒も飲めないなんて」と、これはダブルミーニングですが、自分に関しては飲酒が出来ない事態を憂い、他人に対しては飲酒文化(習慣)の減少を憂う、という人も少なくないでしょうが、既に飲酒習慣のある人はこの20年ほどを見ても若年層を中心に激減しているわけで、「酒を飲む」という行動そのものを正当化できない、理解を得られない社会が口を開けているのかもしれないわけで、いつまでたってもなくならない飲酒運転事故や、図らずも今般のCovid19感染で露呈した飲酒へのモラル無き執着は、飲酒そのものを容認しない不寛容を惹起するかもしれません。

とはいえ「禁酒法」は20世紀の一時期、戦間期の米国における施行と失敗が有名で、その実効性を疑う人も多いでしょうが、飲酒そのものへの不寛容が定着した時、その「偉大な先例」は先例足り得るのか。「ビール離れ」「日本酒離れ」を憂いていた時代が可愛いものだった、と回顧する時代がこないためにも、飲酒する側の不行跡を撲滅していく必要があります。



迷走と悪化の一途を辿る

2021-06-28 22:09:00 | 時事
タイの感染拡大が深刻化しています。6月14日に一部規制が緩和されたのが一転して28日から店内飲食の全面禁止や、最も規制の厳しいエリア(ダークレッドソーン)に指定された都県がこれまでのバンコク首都圏の4都県から、首都圏の6都県と深南部4県の合計10都県に拡大とか、厳しい状況です。

数字の上では建設現場の宿舎で集団感染とか、市場での集団感染がメインで、無症状や軽症者が多いのですが、大手の病院では専用病床が満床になっているなど、今後の感染拡大や重症化に対応できない、医療崩壊寸前の状況にも見えます。

無症状や軽症だから経済を回さないと、という経済ガーの手合いが騒いでいますが、現状は日本の「第四波」での大阪の状況に似ているんですよ。大阪も感染してもたいしたことがないから、と安心していたら、重症者用の病床をすでに返却してしまったという維新府政のチョンボもあり、あっという間に医療体制が逼迫し、我が国初の「医療崩壊」ともいえる事態になったわけです。

入院も出来ずに家で重症化する、最悪は死亡する、という状況で、人口比で見たらありえないはずの死者数が東京都<大阪府となるに至り、それまで経済ガー、と規制に反対と騒いでいた手合いが、ワクチンを大阪に、大阪を助けて、とパニックを起こすような状態だったことは記憶に新しいですが、タイがその一歩手前にあるようです。タイではワクチン不足も深刻化しており、大阪より状況は厳しいです。

結局、昨春の成功体験に背を向けた「ぬるい対策」に終始したツケです。
最も厳しい規制は1ヶ月程度だった昨春は、その後2ヶ月かけて規制を緩和して全面緩和に至りました。
だから1ヶ月我慢すれば大丈夫、という印象があるにもかかわらずなぜか「正解」をわざと避けるような対応で今回の「第三波」に対応したことで、3ヶ月以上最高度の規制が発令されっぱなしになっていますから。

そうした中、日本では「五輪優先」が批判を浴びていますが、タイも7月のプーケットを皮切りに120日以内に全面開国とした首相の施策が批判を浴びています。
国内が一転して規制強化に走らざるを得ないという状況で、ワクチン接種と陰性証明が必須で、14日間は滞在地から出られない「バブル」「サンドボックス」とはいえ、外国人観光客の受け入れだなんだと言っている場合か、というわけです。

外国人観光客受け入れは、受け入れる側の住民の7割がワクチン接種を済ませていることが大前提とされていますが、ダークレッドソーンのバンコクはじめワクチン不足が深刻なのに、観光地はワクチンを確保できたのか。あるいは不人気のシノバックを充てているのかもしれませんが、タイではアストラゼネカとシノバックしか現状無いうえに、それが変位種には効き目が薄い、効かない、というのでは、住民はリスクを残したまま受け入れることになります。

なお、7月からのプーケット「開放」はワクチン接種や陰性証明のほか、そもそも対象国が「低リスク国」「中リスク国」に限定されています。ところがその対象となった66ヶ国に日本が入っていないという情報があります。
東アジアでは中国、台湾、香港、マカオ、韓国。東南アジアではシンガメ[ル、ベトナム、カンボジア、ラオス、ミャンマー、ブルネイ。・南アジアではブータンが対象で、日本は入っていないのです。

中国や韓国に後れを取るのは現状では致し方がないとはいえ、カンボジア、ラオス、ミャンマーにも劣るとされてしまうのは非常に悔しいですね。モンゴルがないとか(ロシアは対象)、観光熱も加味されている可能性があるとはいえ、日本は観光需要が間違いなくあるわけで、現状は帰国後の自主待機問題(さらに3日間の隔離検疫)があるとはいえ、対象外というのは厳しいです。自国民に対して帰国時に隔離検疫を課す国も入ってますから。アジアではインドなど南アジアが軒並みですが、その他はマレーシア、インドネシア、フィリピンと、それと日本が一緒という評価です。


ワクチン不足が起きる怪

2021-06-28 22:06:00 | 時事
日本は世界がうらやむレベルでmRNAワクチンをかき集めてアストラをワクチン外交のネタに使っている、という状況のはずでした。さらに大規模接種会場を国や自治体が設置し、職域接種も始まり、接種が加速しているはずでした。ところがワクチンの品切れを理由に大規模接種や職域接種の受付が中断するという話になっており、どうなっているのか、という状況です。

時を同じくして東京五輪のボランティア7万人に接種案内と報じられており、2回接種で14万回分のワクチンが召し上げられた、と考えると、同じモデルナを使うこともあり、職域接種が後回しになったと判断できます。
五輪ファーストへの批判もあるでしょうが、そもそもモデルナは4週間の間隔が必要で接種の効果は2回目接種から2週間くらいの経過が必要というのに、開幕まで1ヶ月を切った段階でボランティアの接種完了どころか案内の発送というのはどういうことか。選手団の感染が発覚している中、ボランティアは「丸腰」で参加するということでしょうか。

職域接種は中断、ボランティアは抗体取得が間に合わない、と五輪ファーストどころかどっちもダメという最悪の状況です。こうなると別枠で確保していると言われている選手などへのファイザーの接種枠も実は日本が供出しているというオチはないのか。日本に輸送されるはずのワクチンがスワップされて各国に行っていないか。
「喰い合い」になるモデルナだけでなく、ファイザーが割り当てられているはずの自治体単位の通常接種でワクチンの配送が遅れているという話も出ていますし。

こんな状況で安心安全とは口が裂けても言えないはずですが、陛下がダメ出しするくらいですから、内奏でも欺かんとしているとしか言いようがない状況なんでしょう。
まさかとは思いますがワクチンの入手は本当に大丈夫なのか。実はワクチンが足りない。重症化、死亡を防止するための高齢者対応が実は手一杯で、現役世代の接種が加速した瞬間にボロが出た、ということはないですよね。要は高齢者への対応で重症者、死者を抑えて医療崩壊を防ぐことでオリパラを乗り切ればいい、ということであったら最悪です。



「拝察」の波紋

2021-06-25 23:01:00 | 時事
天皇陛下による感染拡大への懸念表明と、それについての五輪開催による影響への懸念についての宮内庁長官による「拝察」が大きな波紋を呼んでいます。欧米の大手メディアも相次いで取り上げており、「天皇の変」(「乱」ではないですからね)に対しては、君主の権威あっての貴族のサロンでもあるIOCがどう感じるかでしょう。極東の異教徒とはいえ、そうした貴族に権威を与えている欧州の王室との交流もある日本の天皇が異を唱えたわけです。あるいは欧州の王室にも同様の懸念があるのかもしれませんね。公式にはないですが、何かしら非公式のチャンネルがありそうですし。

まさかの方角から撃ちかけられたことで、政府の対応もグタグタです。
官房長官に続き首相までが「長官の考え」と言っちゃったことで、長官が陛下の意見を「騙った」と言ったに等しいわけです。これは「陛下の意見を騙る逆賊」として宮内庁長官の首を取らないといけない事態ですが、そこまで覚悟を決めているのか。

「オク」と言われる内廷を仕切る侍従長ではなく「オモテ」の宮内庁長官なので、正確に「拝察」出来ているのか、ということも可能ですが、逆にだからこそ陛下、侍従長とすりあわせての発言と考えるべきでしょう。
1973年に当時の防衛庁長官が内奏時に昭和天皇から示された感想を披露したことが天皇の政治利用として辞職に追い込まれた事件がありましたが、やり方を間違えたりこじれると「天皇の政治利用」として首が飛ぶ可能性が高いです。だからこそ「オク」に累を及ぼさないために宮内庁長官が泥を被って「拝察」したのでしょう。

上皇陛下が退位のきっかけとなった「お気持ち」の際は、憲法上微妙な面がある発言行為そのものの是非は問わず、「お気持ち」を受け止めて対応する、という大人の対応で譲位にこぎつけましたが、今回も、「陛下のご懸念ごもっともと思われますので、しっかり対策を取ってまいります」としておけば、陛下も政府も傷つかなかったのですが、そこまで頭は回らなかったようです。

政治的発言でケシカランという人も多いですが、一方で陛下は五輪の名誉総裁であり、開会式で宣言をする立場にあります。まさかそれが「開会します。以上」で終わるわけがなく、それなりの内容が必要ですが、世間が、いや、選手団すら感染拡大で、というような状態になったらどう宣言するのか。宣言中止だとしてもそんなイレギュラーな目に遭わせるわけです。
それこそ「五輪名誉総裁としてのお務めに関する天皇陛下のお言葉」とでも題したビデオメッセージが出ないと気が付かないんでしょうね。

まあ政府は、正義として君側の奸を除こうと望んだ鳥羽伏見の戦いで、相手に錦の御旗が上がるのを見て愕然としたのと同じような状況でしょうね。世が世なら朝敵、逆賊の汚名を免れない事態ですから。
ましてや維新の陣笠如きが宮内庁長官に「軽率」とは分を弁えない発言であり、そもそもが底の浅さ極まれる改革屋らしい言動です。



「拝察」のうちに対処しないと

2021-06-24 21:37:00 | 時事
東京都の感染状況は既にリバウンドが明確になっていますが、開幕まで1ヶ月を切った東京五輪に対し、あろううことか天皇陛下が感染拡大を憂慮されていると宮内庁長官が「爆弾発言」です。

宸襟を悩ますに至るとは不敬不忠の極みと昔ならなるところですが、さすがに陛下のお言葉とはダイレクトに言えないので、宮内庁長官の「拝察」としています。かと言って発言された、としてしまうと、「綸言汗の如し」を地で行く話になってしまい取り返しがつかなくなるので、「拝察」はギリギリの対応なんですが、それが分かっていないようですね。

宮内庁長官の説明は、「感染状況をご心配されている」とした後に続けて、「国民の間に不安がある中で」「オリパラの開催が開催拡大につながるのでは、と懸念されている」と「拝察」すると続けています。
感染をご心配されていることは「拝察」ではないわけで、それがなぜか、という部分が「拝察」ですが、もちろん宮内庁長官が陛下の胸中を勝手に忖度するわけがなく、誰もが思う「感染への心配」と切り分けているだけでしょう。

なお、天皇の胸中を忖度、というと2009年、民主党政権時代の小沢幹事長が当時の習近平副主席に、慣例のリードタイムを取らないタイミングで「特例で」謁見するか問題になった時に、「陛下も会おうとおっしゃると思う」と陛下の意思を僭称するどころか袞竜の袖に縋るが如き振る舞いが批判を浴びたように、臣下が勝手に判断できるものではありません。

ところがそれが分かっていないわけです。官房長官が「宮内庁長官自身の考えと承知している」と会見で言ってしまいました。これ、陛下の意に反して宮内庁長官が発言した、陛下の意思を捏造した、と言っているに等しいわけで、上記の通り「拝察」でギリギリ納めようとしている努力を無にしています。これ、宮内庁長官が陛下の意に反した発言をする可能性は限りなく低いわけで、だとすると官房長官が発言を撤回するといった対応では絶対に済まない事態ですよ。良くて辞表、という重大事態です。陛下のご意思をないがしろにしたのですから。

もちろん官房長官も陛下の真意を理解しながら、陛下がここまで踏み込んだ意思を示されると取り返しがつかないので宮内庁長官が泥をかぶるべき、と言っているのでしょうが、上皇陛下が在位中に退位の意向を示された時のように、ある意味超法規的にご意思を示されることはあるわけですし、それくらいの問題だと認識すべきでしょう。

もし官房長官がそこまで深く考えていなかったとしたら致命的ですが、ただ、分科会会長の「直言」に対して厚労相が「自主的研究」と言い放ってしまったような尊大な空気が内閣に蔓延していると考えたら、「天皇が何を言うか」というような空気があってもおかしくありません。

そして救いようがないのが、陛下のご意思が「拝察」されるに至ったタイミングです。一昨日に首相が五輪関係と思われる「内奏」を行ったわけで、それを受けての反応としか思えないだけに、「内奏」がよほど納得が出来ない説明だったということでしょう。

日米開戦直前、参謀総長の内奏を受けた昭和天皇が、日中戦もグタグタで終わらぬのに日米戦に踏み切ることに対する説明内容に強い懸念を示し、「(日中戦が片付かない理由として)支那は広いというが、太平洋はもっと広いではないか」とやり込め、「絶対に勝てるか」と大喝したと言われていますが、今回の首相の内奏はそれに匹敵するレベルだったのでしょう。

そして「拝察」という形でやんわりとご意向を示されたのを受け止めない、宮内庁長官の発言としろ、と言ったことが陛下の受け入れるところで無かったとしたらどうなるか。
上記の内奏のような歴史に残る事態が次に待っています。女系継承容認を強引に進めようとした小泉政権に対し、三笠宮家の寛仁親王が異を唱え、そして秋篠宮家が男子を設けられ、と「ステップアップ」したことは記憶に新しいですが、あの時はもしそれでも進めるのであれば次は取り返しがつかない発言をせざるを得ない、と危機感を覚えました。

それほどの対立ではないとしても、もし次は「拝察」でなくストレートにご意思を表明されたとしたら、政府は、そして世界はどう動くのか。アジアで異教徒だといっても、日本の「エンペラー」の存在感は大きいですから。