一年納めの九州場所は白鵬の4場所ぶりの優勝で幕を閉じました。旭天鵬、日馬富士(連続)と白鵬以外の優勝が続き、力の衰えも指摘される状況でしたが、今場所は最近目立っていた「楽に取る」相撲から、荒々しさ、力強さが戻ってきており、横綱相撲といえる内容です。唯一の敗戦が琴欧洲ですが、右下手が白鵬の右前褌を取ると言う変則の組み手だったことを割り引くべきでしょう。
一方で新横綱の日馬富士は散々です。まあ連覇が「狂い咲き」とも言えたわけで、今場所の内容を見れば「いつもの日馬富士」なんですが、連覇で昇進と言う制度がある以上は上げざるを得なかったわけで、そういう意味では上がったが最後、常に進退を意識するという「綱の重圧」ということでしょう。
ただ、制度とはいえ内規であり、どう見ても「狂い咲き」だった実績で昇進させたのは横審の推薦の責任が大です。
ですから今回「9勝では失格」とはどの口で言うか、というか、天に唾というか、ひどい話です。
連覇以前の状況があるにもかかわらず、横綱としてやっていけると判断して推薦したのは横審ですから。
ちなみに6敗の内容ですが、横綱大関で5番あり、うち把瑠都が休場なので4番。これに総て負けて関脇以下に2番と、まあ標準的なクンロク大関の内容です。
大関陣は3人カド番というJリーグ最終節のような状態でしたが、把瑠都が負傷休場で陥落決定、琴欧洲が白鵬を破るなど必死モードで早めにカド番脱出と明暗を分けましたが、琴奨菊はカド番脱出とはいえいけません。
7勝6敗で迎えた14日目に、いちおう優勝争いの目が残っている旭天鵬に「助けられた」わけで、千秋楽が豪栄道との割りだっただけに、なんともな「予定調和」です。
鶴竜と稀勢の里もこんなもんか、と言う成績。特に稀勢の里は終盤を優勝戦線で迎えながら結局脱落と言う毎度のパターンで、自力よりもメンタル面が課題と言えます。
関脇は豪栄道の11番はついにブレイクスルーか、と思わせる反面、妙義龍が大誤算です。負け越してからの終盤は逆にこれまで星はまとめても上位になかなか、というところだっただけに、上位を食えるようになったことは「価値ある」負け越しでしょう。
そのほかの若手はあいかわらず頭角が見えない感じ。松鳳山にしても今場所の大勝ちが来場所につながるかは微妙です。
ちなみに地元船橋の八木ヶ谷こと若荒雄も13枚目で4勝11敗、7点の負け越しと来場所の十両陥落が確実です。
今場所のトピックスとしては、例の「誤審」でしょうね。
足が出ていないのに出ていたと勘違いして相撲を止めてしまった元大徹の湊川親方。蛇の目に跡がなく、引っ込みがつかなくなって「やり直し」ですが、豪栄道にとっては悪夢でしょうし、これで勝っていれば単純加算で12番、今場所の流れが変わっていたかもしれません。
しかしこういうときは難しいですね。勝負がつくまで「流す」としましたが、勝負がついてから「実は...」とひっくり返すのでしょうか。それとも「おっと行司がアドバンテージを見てますね」とでもなるのか。
ただ、今回の見所?は誤審よりもその後の処置。「物云い」や「取り直し」は制度としてありますが、あそこで審判長が宣言した「やり直し」は何なんでしょうか。
立ち合いからのやり直しでは日馬富士にとって有利すぎますが、水入りやまわし待ったのようにその場で止めるのではなく、あたかも取り直しのようなやり方があるとは初めて見ました。