Straphangers’ Room2022

旧Straphangers' Eyeや習志野原の掲示板の管理人の書きなぐりです

レゾンデートル

2018-11-30 23:12:00 | ノンジャンル
秋篠宮殿下の誕生日会見での質疑内容が議論を呼んでいます。
ここで問題としたいのが大嘗祭の公費負担であり、内廷費で賄うべきという殿下の発言の是非です。なお、宮内庁が聞く耳持たないというくだりは、おそらくそうでしょう。皇位継承の問題から何まで、はっきり言えば皇室、皇族の意見を蔑にしてきた先例を見れば、「貴重なご意見ありがとうございます」的な塩対応だったのでしょう。いや、慇懃に対応したというのでしょうが、絵に描いたような慇懃無礼だったのでしょう。

それはさておき、大嘗祭を公費負担とするか否か。現実的な話をすれば、3億円程度の内廷費で全てのスケジュールを賄えるのか、という問題になるわけで、「出来る範囲」というのは聞こえはいいですが、それで「伝統」が保てるのか、という問題が不可避です。

出来る範囲、というと聞こえはいいですが、要は「出来ない」と同義になることに注意すべきでしょう。大嘗祭は「天皇」の要件としての一つなのです。もちろん大嘗祭をしなかった天皇は過去に少なくないですが、「半帝」と呼ばれた例もあるわけで、伝統に基づく行事として考えた際、それを欠くことは由々しき結果を招きかねません。

もちろん後醍醐天皇のように「朕が新儀が未来の先例たるべし」と変更する考え方もありますが、「天皇」をなぜ象徴として仰ぐのか、と考えたとき、それこそ女系継承論と相似形になりますが、「天皇の要件」をどう考えるのか、という話になりますし、なぜ憲法の例外ともいえる「天皇」がいるのか、それは「天皇」だからであり、「馬の骨」ではなり得ない、というところにダブルスタンダードが生じかねません。

殿下のお気持ちは分かりますが、今回ばかりはそれがご自身の基礎を揺るがす可能性があるということに気付いて頂きたいものです。また、国費支出にしても、大嘗祭という儀式そのものが少なくとも7世紀中盤にはその姿が見え、10世紀の延喜式で確立した「伝統行事」であることに鑑みると、「文化」としての意義も大きく、国費支出の意義をそこに求めることも可能でしょうし、「出来る範囲で」という選択肢は無いと考えたいです。

一方で今上天皇の際の22億円は妥当だったのか。悠紀殿、主基殿からなる大嘗宮の造営に14億円というのがその大半になりますが、そこは儀式の本質を守りつつも、過去の例を見ながら「あるべき姿」を構築することを通じて、殿下のお気持ちも充足できると信じます。

大嘗宮の造営や儀式そのもの以外の部分にかかる費用は少ないですが、それでもそこそこの金額になるはずで、お相伴に与るような「出席者」は極小化するというのは一つの落としどころでしょう。既に出席者を200人削って700人程度にするとアナウンスされていますが、それでも多いでしょう。



日本ではこういうのを詐欺といいます

2018-11-28 21:31:00 | 時事
厚顔無恥とはこのことを言うのでしょう。
万博開催が決定してわずか3日で、府知事が「世界80億人が参加できる体制を作りたい、と世界各国で(の誘致活動で)風呂敷を広げすぎるぐらい広げてきたので、日本の総力を挙げていただかなければ実現不可能だ」と「おねだり」宣言です。

「日本の総力」というのは別にアドバイザーその他の話ではないでしょう。「体制を作りたい」が大風呂敷というのだから、それは規模が大きい、すなわちコストの話に他なりません。
皆さんの承諾を得てはいないが皆さんがお金を出すことを前提に招致活動したから後はよろしく、といっているようなものです。世の中の「たかり」だってもっと誠実でしょう。

頼みもしない万博開催ですよ。誰が大阪に事業規模はじめ「一任」しましたか。出来る範囲での開催ならまだしも、開催ありきで青天井なんて馬鹿な話はありません。
シブチンが国の活力をダメにする、とか言って万博開催マンセーの垂れ流しをネット上でしている連中も含めて、あとは国がケツを拭く、と他人の懐をあてにしているわけです。しかも招致時にはいわずに、という詐欺まがい、いや、詐欺そのものの行為で。

そりゃ楽しい、楽しみでしょう。国にたかってのお楽しみは。
招致時に示した費用こそ国に所定の負担をお願いするが、それ以上は大阪がきっちり払います、という啖呵が切れないのなら、今すぐ返上すべきです。
予算からの乖離が酷い東京五輪だって、初手から「おねだり」はしていませんし、自前での調達を模索しています。

さすがにこれはアカンと思ったのか、大阪特有の「許されるホラ」、大きなイベントだから皆さんもご協力よろしく、という挨拶を大阪流に言っただけじゃないですか、何をいきり立ってるんですか、と火消しに躍起になっている工作員が湧いていますが、「世界各国で風呂敷を広げすぎるぐらい広げてきたので」と言っているのと合わせ技で一本でしょう。

ちなみに風呂敷を広げる、いわゆる大風呂敷のことでしょうが、「実現性に乏しい計画」「現実には出来ないような大げさな話」という意味になるわけです。それを実現させるための「日本の総力」と言われたら、知恵も出すが金も出す、と解釈するのが自然ですし、金目の話だけジョークというのは通りません。無神経に話して相手が怒り出した途端、何マジになってねん、ジョークでんがな、と取り繕う大阪あるあるには誤魔化されません。なかにはメディアがいう「広げ過ぎた」とは言っていない、フェイクだ、と悲しくも哀れな擁護も目にしますが、「風呂敷を・・・広げた」と言っていますよね。その意味は上記の通りです。

こんな虫のいい主張は、はっきり断るべき、というか開催自体が一発レッドカードです。
経済効果だって怪しいもんです。「阪神が優勝したら・・・」のレベルの計算かもしれませんよ、こんな杜撰な「計画」ですから。



悲しい現実を直視しよう

2018-11-28 21:30:00 | 時事
ルノーと日産の「力関係」の問題、真顔で「見直し」を求めているんですね。
孝行息子だから対等に、というのなら買収する意味なんかないですよね。親会社にとっては「金の卵を産む鶏」以上の意味はないのです。

じゃあ三菱自動車の業績が絶好調で日産にとっての「孝行息子」になったら独立させますか、という話です。一定の自主権は認めることはあっても、経営の根幹、親会社の利害に関する部分は譲るわけがありません。

日産の利益がルノーに流れている、ケシカラン、という主張をネットで目にしますが、経済音痴、ビジネスの基本も分かっていないことを自白しているようなものです。何のためにルノーは6000億も払って梼Yの危機に瀕していた日産を「買った」のか。その投資の見返りを期待していたわけで、配当金その他での還元をケシカランといったら話になりません。

そう、6000億の出資を引き受けた時点で、ルノーに「買われた」んですよ。アライアンスだなんだと言ってますが、ルノーグループの内部体制の話に過ぎないのです。
そこの部分の認識がすっぽりと抜けているから不平等だなんだという話になるのです。



経験ではなく過去への拘泥

2018-11-26 22:03:00 | 交通
JALのオーバーブッキングの問題で、いすみ鉄道の前社長がヤフーの個人ニュースで、BAの地上職時代の薀蓄をベースにあれこれ語っています。
お前らが知らない裏事情だぞ、と社外秘情報のはずの事項をペラペラ喋ってくれているわけですが、オーバーブッキングについてあるべき制度と肯定するばかりか、おかしいという人はお客になってもらわなくて結構、というのはどうなんでしょうね。

そりゃ約款にオーバーブッキングに関する規定があるから前提として利用しろ、というのは約款法の概念からしたら正しいですが、消費者保護の観点を踏まえれば、その約款がおかしい、という主張をする権利は当然あるわけで、足下の搭乗では従う必要があっても、おかしなことだと声を上げて変更を促すことは当然あり得ます。

まあこれも事業者無謬の一形態ですが、事故やトラブルが起こって「ムラの常識」があっけなく崩れ去るのはどの業界でもある話ですから、「ムラの常識」を前提にして「俺は何でも知っている」とドヤ顔をしているのでは、事の本質が見えていないも同然です。

オーバーブッキングといえばユナイテッドの引き摺り下ろし事件が有名ですが、あれで米国の航空各社は対応の刷新を迫られたわけです。今回だってそのきっかけになる資格がある事件ですよね。26人の対応に追われて400人近くが巻き込まれた、という前代未聞の事故として。

米国の場合、当事者のUAはどうやってオーバーブッキング時の調整をするか(謝礼金の引き上げ)というソリューションを選択しましたが、当然各社ともオーバーブッキングの見込み精度を上げるという対応はしているはずです。そして興味深いのが格安の旗手サウスウエストで、搭乗率が命の格安航空会社なのに、オーバーブッキングを廃止しました。

変更可能運賃がおそらく少ないとか、ノーショー率が低いのでしょうが、おかしな制度でトラブるくらいなら元を絶てばいい、というのは卓見ですし、それがソリューションです。
少なくとも「ムラの常識」に拘泥した議論では出てこない結論でしょう。

今はBAに雇用されているわけでもないのですから、柔軟な議論ができるはずなのに、それができない。よく、「経験を活かして」といいますが、これでは「過去に囚われて」に過ぎませんね。



「犯罪」なのか「クーデター」なのか

2018-11-26 21:59:00 | 歴史
日産のゴーン(前)会長の逮捕は世界中に衝撃を与えましたが、落ち着いてくるとどうも話は単純ではないというか、これ本当に「犯罪」なの?という疑問すら湧いてきます。
典型的なのが25日のNHKスペシャルで、経営の主導権を巡るルノーとの確執に軸足を置いており、暗にフレームアップではないかという構成になっていました。

直接の逮捕容疑が有報への不実記載という金商法違反ですが、だったら会長個人の犯罪ではなくまず企業の犯罪として摘発すべきでしょう。金商法に有報提出は取締役会などの決議を要すると規定されていないという重大な瑕疵があるのは有名ですが、計算書類にかかわる部分、事業報告にかかわる部分がその大半であり、両方とも会社法で監査と取締役会の決議を必要としていますから、事業報告に記載されている「取締役への報酬総額」と一致する有報の役員報酬の内訳が今回の逮捕容疑であれば、会社法上の責任として法人が責任を問われ、取締役と監査役も職務懈怠の責を免れえません。

おりしも逮捕直後からSARに関する記載をしないことについて取締役も会計監査人も了解している、と無罪を主張していると報道されていますが、道義上の問題はさておき、記載しないことにつき機関決定と監査を経ているという事実は重く、形式的には個人だけ犯罪とするのは筋が通らない話でしょう。
会社資産の流用とか不正そのものの存在もささやかれていますが、会長と側近だけで出来る話ではないことは当然であり、ガバナンスも会計監査もお飾りでした、と「衝撃の告白」をしない限り、法人や社長以下の取締役、監査役や会計監査人が逃げ切るのは不可能ですし、相当な返り血を浴びるしかないでしょう。

その早い段階から経営陣がつかんでいたとされる「不正」は何か。持ち込まれた特捜も慎重に、しかし積極的に立件を進めてきたわけで、まさかそれが金商法違反とは思えない、いや、あり得ないわけで、何かがあるはずです。

それが小出しにされている「不正」という人も多いでしょうが、法人としての不正はあっても個人としての不正を問えるかというとかなりグレーです。
住居などの個人的便宜を図るためにトンネル会社を設立した。個人的な旅行費用を負担した。確かにケシカランですが、会長が勝手に決裁してャPットに入れていたのではないですよね。個人が責任を問われるとしたら、まず間違いなく申告していないので所得税法違反くらいでしょう。それで1年近く内偵をして、というのはあまりにも不自然です。

特別背任に問える確たる事実がある。しかしそうであれば早期に嫌疑を公表すべきでしょう。足下のおそらく検察リークであろう事案の数々は企業の責任を問う前に企業トップを逮捕するだけの理由になりえません。確かに特別背任は金額規模を問いませんが、企業の規模、利益水準を踏まえた常識的な判断をすれば、「庶民」にとっては巨額でも、日産や会長にとってはどうなるのか、という話でしょう。

そうなると後述する「陰謀論」での逮捕というシナリオがいちばん説得力があるわけで、だとすると経営権を巡る私企業内のゴタゴタに検察という国家の司法権力が介入したという前代未聞のスキャンダルになります。
「不正」は犯罪と思っている人も少なくないですが、司法に摘発される「犯罪」と「不正」の枠は必ずしも一致しません。内部統制、ガバナンス上は由々しき問題であっても、あくまで定款や規程など企業統治の決め事の問題というケースがあることには留意が必要です。

そのNHKすら傾いている「陰謀論」ですが、ガバナンスの権力が会長に集中する中で会長がルノーとの経営統合を急いでいることへの「クーデター」というものです。
あからさまにそうとは言っていませんが、開発部門の統合でルノーが口を出してきた、日産生え抜きの技術者の流出が続いた、それが社内の不満につながった、という背景は確かに深刻ですが、それ自体は犯罪でも何でもないわけです。

悲しいかな日産の筆頭株主はルノーです。取締役会もルノー側がマジョリティです。不満だろうがなんだろうが、経営権を握られた企業というのはそういうものです。解体されて会社ころがしのように売られても文句は言えません。それがビジネスであり経営です。
6000億円超の出資を受け入れた時点で自主的な経営権を事実上手放したということであり、理不尽だ不公平だと主張しても屁のツッパリにもなりませんし、日本的な思考に則れば、「あの時の恩義を忘れたか」といわれるのがオチです。

余談ですが鉄道関係の議論でも、某高額運賃の鉄道会社に関して、親会社に対して「値下げさせるために経営権をよこせ」と市民団体だけでなく自治体関係者やアカデミズムが主張していますが、経営権というものは斯くもシビアということを理解していれば、そんな発言をすることなんかあり得ません。苦しいときに投融資をした相手に対して当時のことは忘れたかのようにふるまうのは相似形ですが、それが日本人の「経営」に対するマインドでしょうか。

ビジネスのルール上は何もできない。だから追い落としを図りシナリオを組み、検察を巻き込んだ。もしそうだとしたら最悪の話になりかねません。国家が絡んだら、「そういうことがあり得る国」として途上国のようなソブリンリスクがある国と見られてしまいます。
それを回避、払拭するためにも早期の「本当の容疑」を開示すべきであり、それが出来ないのであれば刻々と日本経済そのものの信用を棄損していきます。

最悪なのは金商法違反以上の「犯罪」が立件できないこと。せいぜい「所得隠し」で終わること。両者とも法人も罪に問われるわけで(損金として落とせない支出を損金として過少申告とした法人税法違反になる)、有報の方は会計監査人も通したとなると(会長の主張を否定して将来の確定債務とするのであれば引当金計上をしないといけないが、それがなければ引当金勘定を通じて会長の主張を容認したことになる)、会長の責任を問うことも微妙で、まず会社や会計監査人の責任が問われないといけません。

一方でルノーの「反撃」も当然あるわけで、「クーデター派」の役員の放逐や、「ルノー派」の役員登用による経営権の更なる掌握もあり得ます。日産がルノー株を買い増して25%以上の持ち分を得ればルノーの議決権を無効にできますが、ルノーがマジョリティの取締役会の決議はできません。皮肉にもこの手法はフランス政府がルノーを通じて日産に介入しようとした際に会長主導で実行しかけましたが、その時は会長主導だったからできた話です。

そうなると、目の上のたんこぶを取り除いたつもりが、すべてを失う結果になりかねません。