Straphangers’ Room2022

旧Straphangers' Eyeや習志野原の掲示板の管理人の書きなぐりです

夏場所が終わり

2023-05-31 21:45:09 | ノンジャンル
夏場所は終わってみれば照ノ富士の優勝、しかも14番と4場所連続休場、うち3場所は全休のブランクを感じさせない結果でした。
序盤はおっかなびっくりという感じでしたが、強引に抱え込んで極めるか小手に振るかで圧倒する相撲で白星を重ねました。もちろん変化に足が付いて行かない、というお約束の負けが込むコースにならかったように、見た目よりも足腰が安定していたんでしょうね。

横綱同様1人しかいない大関の貴景勝は8番とカド番脱出が精いっぱいで、注文相撲だろうが何だろうが勝てば官軍という良く言えばがむしゃら、悪く言えばなりふり構わない相撲は大関に値するか微妙です。千秋楽結びの一番も工夫もなく押し切れなくなると苦し紛れに引いて自滅と最上位の対戦とは思えない低レベルぶりでしたし。

そして三役陣が活躍する場所は面白いと言いますが、4関脇が揃って2桁とはさすがにびっくりです。4人のうち傑出した成績、あるいはお互い誰にも負けなかった、というのがないわけで、直近の成績から霧馬山が大関昇進を果たすでしょうが、残る3人も含めて横一線なだけに、来場所の大関とりが楽しみです。強いて言えば名古屋場所終了時に昇進しそうなのは若元春でしょうか。豊昇龍は取り口が雑で、大栄翔はムラッ気が否定できませんから。

ただ4関脇が揃って2桁という偉業ですが、豊昇龍が不戦勝2つ、大栄翔も1つとやや水増し気味。それと大栄翔は照ノ富士と当たってないんですよね。
照ノ富士側から見たら、関脇と連続して当たって、千秋楽は貴景勝、となるべきところに13日目に朝乃山の割りが組まれており、ここが大栄翔だったんでしょうね。割りが組まれた時点では1敗同士で優勝戦線のトップに並んでいたわけで、その時点では4敗と数字の上でも優勝の可能性がほぼ無い大栄翔との割りを優先させるのか、関脇同士の割りをなくすか、あるいは千秋楽結びの一番が最上位の横綱大関戦でなくなるか、という選択肢の中で大栄翔の横綱戦が消えたと見ます。

小結は琴ノ若が8番のほかは若隆景が全休、正代が6番と陥落します。関脇は霧馬山が昇進しても3人いますから琴ノ若は留め置きで、さすがに小結2枚目(張出小結)は無理に作らないでしょうから東筆頭の阿炎が上がっておしまいでしょうね。西4枚目の錦木は後半8連勝で9番ですが、3点の勝ち越しでは届きません。10番でも難しかったでしょうが。

平幕上位は錦木のほか御嶽海と明生、そして東14枚目で12番、9点の勝ち越しの朝乃山が揃う格好で、そこまで大きく下げないであろう正代と合わせてこのあたりも三役や横綱大関を苦しめられるかどうか。特に朝乃山は「元の鞘」に収まれるかを占う大事な場所になりそうです。
あとは宇良がもったいないですね。最終盤連敗して負け越しちゃいました。怪我対策で体重を増やし大型化しましたが、取り口が小兵時代のままのギャップや多彩な技が目を惹き、今場所も頭捻りを繰り出し見事に決めましたし。

ただ今場所は関脇陣の躍動の反面平幕がぱっとせず、朝乃山と西16枚目で11番の王鵬以外に2桁がいないというのも残念ですね。頭角を現すチャンスなのにそれにも至っていないのですから、「次の世代」はまだ遠いようです。終盤崩れて8番に終わった東11枚目の北青鵬も中位ながらどこまで活躍できるか。白鵬の内弟子という秘蔵っ子で、図抜けた体格をどこまで活かせるか。ただ体格任せの雑な取り口という面が否めず、終盤の大崩れのきっかけとなった若元春戦で九分九厘勝っていながらうっちゃりを喰ったのはその象徴です。まああの一番は後世「うっちゃりといえば」という画像になりそうなうっちゃりを見事に決めた若元春を褒めるべきですが。

平幕と十両の入れ替えですが、逸ノ城の引退(廃業)で1枠が絶対的に空いたほかは、一山本と水戸龍は陥落当確。悩ましいのは西2枚目で7敗8休、つまり全敗の遠藤と東12枚目で5番の碧山、東17枚目で7番の輝で、単純計算だと碧山は半枚残る感じですが、遠藤と輝はともに西17枚目相当の星です。来場所は小結1減なので平幕は西17枚目まであるはずで、どうなるか。現状幕尻で負け越した輝の分が悪いのでしょうが。

翻って十両を見るとこっちは活きが良いですね。東筆頭で14番、十両優勝の豪ノ山は文句なしで来場所は平幕中位のさらに上の方が望める成績です。西筆頭の湘南乃海も11番とこれも当確。東3枚目武将山の10番も大丈夫でしょう。
ところがこの下に赤丸組がいて、東8枚目の熱海富士が13番、西8枚目の落合(伯桜鵬)が優勝同点の14番とこの2人を上げたいところ。上述の通り平幕の陥落候補が悩ましいですが、遠藤は上位にいて休場ということも勘案して幕尻にとどめて、碧山と輝を落として5枠空けて、十両は上記5人を上げるかですね。単純計算だと熱海富士を東筆頭に留め置き(碧山が残る)もあるのでしょうが、来場所も大関取りの場所というフレッシュなイメージを盛り上げるためにも新陳代謝を強化するかです。

十両幕下間は栃ノ心の引退(廃業)で1枠のほかは、西9枚目で10敗5休の千代の国と東14枚目の時疾風で都合3枠ですかね。
幕下側も東筆頭で4番の紫雷、西筆頭で5番の川副、西2枚目で6番の獅司しか上げられる成績をおさめた力士はいませんし。


【5月31日追記】
霧馬山は無事大関に昇進し、霧馬山改め霧島です。
師匠のしこ名を継ぎますが、年寄株の関係とはいえ、鹿児島県出身の大関霧島が陸奥親方というのもなかなかシュールです。

新十両、再十両は5人になりました。紫雷、川副改め輝鵬、獅司のほか、西3枚目で4番の千代の海、東5枚目で5番の勇磨が届きましたね。
先の記事では計算間違いをしており、逸ノ城の引退枠で平幕昇進した分もところてん式に十両の空き枠になるので引退に伴う空き枠が2になります。
1枠定員割れとしなかったので、単純計算では2枚目で並ぶ両者を東西の半枚差で明暗を分けられなかったのでしょう。
となると割を食うのはというと6番で東11枚目英乃海でしょうね。単純計算では半枚残しているはずですが、昇進優先でしょう。





ドル箱の「終わりの始まり」か

2023-05-31 21:32:46 | 交通
EX予約の値上げ、これ、全く無価値になった感じです。
1100円の年会費の元を取るのも厳しくなったEX予約はもとより、会費不要のスマートEXも、タッチアンドゴーで「便利ぃ」と浮かれる対価として、「割高」ですからね。これは近い将来制度が消えそうな嫌な予感がするのですが、現状は市内駅制度があるわけで、EX予約の各商品は市内駅制度が適用されない単駅指定での利用になることから来る「別払い」が重くのしかかります。

大阪関係がその典型で、新大阪-大阪の170円を払ってなお有意な価格差がないと意味がないというのに、価格差はEX予約で490円、スマートEXではわずか200円と、別払い後は悲惨なことになります。東京サイドでも東京と新宿、池袋で210円、新橋で150円(きっぷ運賃)と都心部の移動でも別払いが発生しますから、EX予約で1回100円程度、スマートEXに至っては逆ザヤになるわけで、年会費という外部流出があるEX予約はもちろん、スマートEXにしても新規契約の鈍化、さらには解約ラッシュもあり得ます。年会費がないスマートEXは休眠会員化でしょうが、利用しない会員情報の管理というコストアップが待ってます。

いわんや近郊との行き来の場合、市内駅制度利用であれば市内駅の端っこからの精算になるのに、EX予約の各商品は新幹線駅からの精算になりますから差額が大きいです。都区内だと西荻窪、浮間船渡、金町、小岩といった境界駅からの精算と東京駅からでは200円程度の差が出ますし、通しきっぷで買うより精算がお得、というのは伝統的なライフハックとして人口に膾炙していますから、EX予約がお得ではない、かえって損、ということの理解も早いでしょう。そもそもこの問題があるからEX予約の当初の価格設定時に新大阪絡みは200円、他は100円の「追加割引」で計算しているはずですけどね。それだけ市内駅制度が使えないことによる「損」には敏感だったはずですが。

あと「のぞみ」「みずほ」が割り増しになったことで、「さくら」「ひかり」への集中が懸念されますね。同じ値段ならと新神戸-岡山とかチョイ乗り的区間でも「のぞみ」「みずほ」を使っていたのが、価格差が付くのなら考えますよ。JRPの「のぞみ」「みずほ」利用不可で「さくら」「ひかり」「こだま」に有意な混雑激化影響が出ているというのであれば、母数はその比でないEX予約での「さくら」「ひかり」「こだま」シフトが出てきたら、たとえそれが少数であってもインバウンドとの比較では大きいでしょうから、JRPにおける「のぞみ」「みずほ」解禁(ただし要追加料金)による平準化効果を帳消しにして余りある悪化が懸念されます。

ただ法人会員は解約は無いでしょう。経費精算や不正防止という観点で、社員の立替が無く法人間精算にできるメリットがありますから。
もちろん値上げに対してはシビアに反応するでしょうね。値上げ分を単純負担することが無いように、出張回数を減らすといった対応を取るはずです。それが漠然とした「見直し」であればまだしも、これを機会に、諸物価高騰によるコストアップ対応として経費の総見直し、といった流れになれば、「出張?いらないんじゃない?時間と経費の無駄だし」という流れになるでしょうね。

オフィスに出勤せずに在宅でできる、という時代になってしまったわけですから、対顧客であっても時々対面で話をするよりも、頻繁にWeb会議で話をする方がコミュニケーションが取れる、と気づくまでの時間は短いです。これはCovid19が深刻だった初期やデルタ株の流行期に、取引先が面会謝絶で、というケースが多々あったわけで、そこでWeb会議その他のツールで「会う」ことが日常化して、それって思ったより便利じゃん、となっているのを見ていますから、いよいよ「会いに行こう」どころじゃない地滑り的な転換もあり得ます。その典型が交際費で、Covid19の規制が終了したからと言って以前のような支出が戻ってますか?という話。「しなくてもいい、しなくても回る」と気づいたら終わりなんですから。

間が悪いのは、既に2023年度に入っているわけで、企業は既に決まった予算を実行しているわけです。また上場企業の2022年度通期の決算短信の発表も終わっていますが、そこでは2023年度の業績見通しが記載されています。経費全部に占める新幹線での移動の割合はさほどでもない、と言われそうですが、諸物価高騰と、従業員の生活防衛としての賃上げと経営環境が急速にシビアになっているなか、支出をチクチクと計算してようやく確保した利益見通しですから、出張如きで往復1000円、2000円と追加できる余裕はありません。特にそのコストが原価であれば案件の採算に直結するので、個人の業績にも影響しますから。今は売上や受注額だけで評価するような甘い時代ではありません。

そして出張コストを5%だ7%と刻んで削減は出来ないわけで、月1回ベースを1回削減とか、「超過達成」になったらJR側としては元も子もありません。
さらに「超過達成」でも仕事が回るのであれば、コストの削り代になるわけで、ますます「出張って必要?」になります。
それでも今年度はそうした弥縫策でしょうが、問題は2024年に入って各社が算定する2024年度予算でしょうね。仕事のやり方そのものを見直して「出張」にメスが入り、原価あるいは販管費として見積もらないといけない費目とその数字が変わります。そうなると不可逆で「出張」が必要なケースが厳選される、最悪は消える、ということも十分あり得ます。そう考えると「終わりの始まり」かもしれません。

EX予約の最後の砦という意味では、ネット予約のツール、ただその一点ですね。あるいはタッチアンドゴーが出来る、というだけ。ただタッチアンドゴーも航空機がQRコードに「逆行」しているだけにいつまで続くかです。EX予約の経済的メリットが消失したことで、ネット予約にしても全国をカバーするえきねっと、東北、北海道以外をカバーしているe5489があるわけで、当のJR東海も在来線予約はこの両社のサイトをご利用ください、と誘導しているわけで、ますますEX予約の立ち位置が微妙です。あるいはJR他社からの発券手数料で稼ぐビジネスモデルに転換したのでしょうか。



潰す気マンマンだったことは無かったことに

2023-05-31 21:30:27 | 交通
JR東日本から「高輪築堤跡 これからの100年に向けて」なるプレスリリースが出てますね。
史跡となった高輪築堤跡について、文化財保護法に基づき文化庁に対して保存活用計画が提出されて承認されたというニュースですが、まあ発掘当初からの経緯を思い起こすと感慨深いですね。

まあ当初は記録保存にとどめて現物は潰す気マンマンだったわけで、周囲が遺構の歴史的意義とかをいくら説いても聞く耳持たないという感じだったわけで、さらに事業者無謬の連中は保存したければお前ら金を出せ、と凄む有様でしたよね。そうそう、歴史的重要性すら否定する向きもありましたし。

それが国史跡に指定されたわけです。当時も汐留の国史跡の旧新橋駅遺構は保存して企業メセナ活動に活用しているのに高輪は潰すんかい、という批判がありましたが、まさにそうした動きを咎めるのか皮肉なのか、既に国史跡に指定されていた汐留の「旧新橋停車場跡」に追加の格好での指定でした。

今回のリリースを見ると、まあ当時お前らどういう対応だったとしか言いようがないわけで、

「日本の交通の近代化や当時の土木技術等の歴史を知る上で重要な遺跡とされ」
「 約 150 年前、日本初の鉄道が開業した時の構造物である高輪築堤が、良好な状態で出土されたことは、鉄道会社である当社にとって大変意義深いものです。」

「100 年先の心豊かなくらしの実験場として新たなビジネス・文化が生まれ続ける街「TAKANAWA GATEWAY CITY」において、約 150 年前の近代日本の曙の志を国内外に発信します。」

と当時の潰す気マンマンのスタンスは全くそぶりも見せずに、遺跡の歴史と意義に思いを馳せて末永く保存します、と言うんですから勝手なものです。
いわんや事業者無謬の連中に至っては梯子を蹴倒されたどころの騒ぎではないわけで、取り残された二階で惨めな姿を晒すしかなかったんですが、これも「そんなこと言ってましたっけ」という感じで完全無視ですからね。

まあこのエリアは事業者無謬の連中にとっては鬼門(南西に位置する裏鬼門か?)のようで、「高輪ゲートウェイ駅」命名の時に必死に擁護してたり、「ここは『芝浜』じゃない」「芝浜は浜松町寄りだ」と、高ゲー駅こそ港南2丁目ですが、高輪ゲートウェイシティが広がる高輪2丁目の隣でエリアは一部かかる三田3丁目の札ノ辻に戦後すぐからある芝浜中学校を無視して叫んでいましたが、高輪築堤では決定的に梯子を外されましたね。



「会わなくても大丈夫」に気付く日

2023-05-30 21:53:49 | 交通
今秋からEX予約が値上げされます。
「のぞみ」「みずほ」と「さくら」「ひかり」「こだま」で価格差が付くこともあり、「のぞみ」利用の東名間で570円、東阪間で610円の値上げになるほか、季節別料金が導入され、閑散期こそ200円引きになりますが、繁忙期は200円増し、最繁忙期は400円増しと、EX予約最大のメリットだった通年均一がなくなります。ですから最繁忙期は東阪間で1000円超の値上げと、通常期で4.5%、最繁忙期は7%の値上げです。

値上げの理由として会員に配信されたメールでは、

2023年秋からは、新幹線と、ホテルや旅先での交通手段、観光プラン等のご旅行全体をシームレスに予約・決済いただく「EX-MaaS(仮称)」の導入や、ご乗車日の約1年前から指定席をお申し込みいただけるようになるなど、一層のサービスの充実を予定しており、これを機に「エクスプレス予約」について、新たな価格体系へ移行します。

とありますが、理由と値上げが結びつく理由になっていません。早得28ワイドの導入や、理由に書いてある1年前からの予約とか、EX予約の大半のユーザー、とりわけ法人会員にとっては全く意味のないメリットを理由にその原資を負担する格好もあっての値上げですからふざけた話です。
だいたい収入減が、というのでしょうが、足元は最繁忙期には1時間当たりのスジを最大限使うくらいの需要回復じゃなかったんですか?ここも矛盾しています。

Covid19で永久不変のはずだった通勤輸送がテレワークの定常化で揺らいだのですが、出張需要は値上げで自爆するんでしょうね。
ざっくり5%の値上げというコストアップを転嫁できるのか、と考えると、原価として削れないどころか増加しているコストをどう負担するかで苦しんでいるわけで、そうなるとますます無駄な出張は削減対象です。「会いに行こう」レベルの出張など御法度ですよ。Web会議で十分と言われますし、予算管理者としてはその傾向を強めないと年度予算が守れません。

航空機と同じように一見の客に値下げの愛想を振りまいて、ヘビーユーザーには値上げなどの塩対応ですか。
通勤だってテレワーク前提でオフィスのフリーアドレス化(しかも所属人数分のデスクがない格好)を伴う移転など床面積の減少によるコストダウンで、通勤するスタッフの減少が前提になってしまったように、企業はやると決めたら不可逆の進み方をしますからね。それと仕事のやり方や仕組みに手を入れることになるでしょうから、出張旅費だけで1割とか新幹線の値上げの比でない削減になるでしょう。そう、これを機に方法自体にメスが入り、ドラスティックな削減になる。そうならない保証はありませんし、可能性は高いです。

未曾有の物価上昇だが一種のスタグフレーションなので所得の向上にならないので、価格転嫁も限定的にせざるを得ない、というある意味瀬戸際の状況ですからコスト削減も厳しくなるでしょうし。
そこで対面での仕事がいちばん、と思い直させるような魅力、とりわけ経済的メリットの提示どころか真逆の塩対応では、お互いにマイナスのスパイラルとなるチキンレースが始まった格好です。




まさかの増税に世代間分断の罠にはまると

2023-05-30 21:51:52 | 時事
異次元の、とかいいながら見事に羊頭狗肉というか朝三暮四というか、財務省の「国破れて帳簿有り」の連中によるまやかしが通るのでしょうか。
児童手当を高校生に拡充するといいながら、扶養控除から外すと言い出しました。かつて民主党政権下で「子ども手当て」を導入した際に15歳以下の扶養控除を廃止しており、これで大学生相当の特定扶養控除と配偶者控除だけが残る格好です。高齢者の控除は残りますが、生計が別のケースがほとんどで享受できないものだけ残っており、控除というものは徹底的に根絶やしになっています。

今回所得制限なしに児童手当が支給されますが、要は1人年間12万円です。一方で扶養控除の廃止で38万円の所得控除が消えます。この場合、自分の所得に関連する一番高い税率の部分になる所得が増え、最悪は一段上の税率になることもあり得ます。

ちなみに38万円の所得増加分にかかる実効税率を所得税20%、地方税10%、復興特別税2.1%で計算すると、約12万2千円となります。
各種控除をした所得が330万円以上の人は、今回の改訂で「増税」になります。なんたる「異次元」か。
所得695万円以上の人は約13万3千円、900万円以上の人は約17万1千円です。有難迷惑の世界です。高校生の子供が2人いる所得900万円以上の家庭だと10万円以上の「増税」ですからね。もちろん所得900万ということは額面の収入だと相当多いですが、それでも年間10万円となると穏やかではありません。

一方でこうしたまやかしに対し、財源を高齢者医療費に求める声が高まっています。無駄な診療や薬の乱発といった税金の無駄は確かにありますが、これも世代間対立を生むだけというか、自分に全部降りかかってくることがわかっているのか。それは自分の将来だけでなく、自分の親の問題、あるいは自分の祖父母の問題が自分の境遇に影響することへの想像力の欠如です。

高齢者、特に後期高齢者の世代になると簡単に転んで骨折します。それ自体の治療も必要ですが、それが寝たきりの一里塚ということはもっと知られていいでしょう。直接的な治療を受ける入院期間に続き、退院後もなかなか本復しませんからね。そしてリハビリも続くのです。状況によっては通院が出来ずに訪問医療を受けるしかない。これらの医療費が1割負担から3割負担になったらどうなるか。老後資金に2000万円、という数字が独り歩きしていますが、高齢者も負担せよ、と勇ましいことを言っていると数十年後の自分がそれに苦しめられますから。

それより前に自分の親の問題として直面します。医療費が3倍になっても大丈夫という蓄えがあるかどうか。別会計だから生活保護を、と言っても「水際作戦」で親族の支援を事実上強制されますからね。それなりに支援しないと最悪は保護責任者遺棄ですから。介護保険にしても自治体は生活保護の「水際作戦」同様に介護レベルの認定を極力渋っている現状がありますからね。事実上歩けなくても要支援止まりとか普通にあります。
「老々介護」が問題になっていますが、その前段階、自分が中高年の段階での「介護離職」もそうですし、そこまで行かなくても子女の教育などで一番家計が厳しい時に重なりますからね。親の問題が。
そして祖父母の問題というのはその1世代後に降りかかるわけで、親の支援で家計が火の車、進学する資金にも事欠く有様で、奨学金という名の「学生ローン」に卒業後も苦しむわけです。あるいは進学をあきらめるか。

威勢のいいことを言っている人はそこまで想像が働いているのか。将来自分が苦しむことになっても、それが若かりし日に賛成してきた「改革」などの結果という可能性は極めて高いですよ。厄介なのは子供は産まないという選択肢が取れますが、両親や祖父母抜きでは自分は産まれませんから、両親や祖父母が総て鬼籍に入るまでついて回るのです。ちなみに死んでもなお「祭祀を引き継ぐもの」として民法は相続とは別に子孫に義務を課していますからね。墓などを無視できないのです。

結局は税金として広く負担するようにして、個別の支払を極力少なくしないと、個人レベルでは対処不可能な事態がやってきますから。
それこそ姥捨て山系の現代版をしないとこの問題は解決しませんが、じゃああなたは「70歳で人生終わりね」と言われて受け容れられますか?犬猫の殺処分のように機械的に「終わる」という話になりますが。そして唯一の解決策は支える下の世代を増やすことですが、異次元のインチキを見るに、これも真顔でやっていませんから。