なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

肺癌というより、不穏

2017年06月20日 | Weblog

 先週の木曜日に、地域の基幹病院呼吸器内科の先生から、肺癌の80歳代後半の男性の転院依頼があった。年齢的に癌に対する治療はないこと、無気肺をきたしていること。病状悪化時はDNRであることなどを言われたが、最後に実は不穏で困っていてという話が出た。ベットがなくて困っているはずなので、いつものように引き受けることにした。

 昨日当院に転院してきたが、午後までずっと寝ていた。最初は意識障害なのかと思ったが、夜間せん妄で精神薬を使用したらしく、朝方から寝始めたようだ。話をしても状況を理解していなかった。入院によるせん妄以外に、もともと認知力低下があったようだ。

 紹介状を見ると、先週の火曜日に呼吸困難で入院していて、3日目の木曜日に転院依頼してきたことになる。経過の記載がないので、病棟の看護師さん宛ての看護情報提供書で確認した。今年の3月に近医から右肺上葉異常陰影で紹介されたが、年齢的に経過観察となっていた(まあそうだろう)。

 いつもは付いてくる画像を入れたCDもなかったので、胸部CTで確認した。右上葉は癌の浸潤で確かに無気肺になっている。右気管支にも浸潤していて、早晩右肺全体が無気肺に陥りそうだ。胸水貯留もあった。上下肢に浮腫があって、末梢からの点滴は困難だった。

 娘さん二人(それぞれ別居)が付いてきていた。奥さんとの二人暮らしだが、奥さんは今ショートステイに入っているそうだ。連れてくるのが大変らしいが、できるだけ早く1回顔を見に連れてくるよう勧めた。

 酸素吸入と医療用麻薬のフェントステープが貼付されている。疼痛時のレスキューはオプソ頓用になっていた。苦痛がないように緩和ケアをしましょうという状況ではある。

 昨夜は夕食後にせん妄対策で内服薬を使っていたがダメだった。夜間せん妄がひどく、4人部屋では対応できず、急遽個室異動になった。精神薬静注を2種類使用したが、あまり効かなかったそうだ。抑制や必要時の指示を使って何とか対応してくれる病棟看護師さんには申し訳ないと思う。今晩の対応はどうするかの相談になった。緩和ケアというよりは、せん妄・不穏対策の患者さんになってしまった。入院3日目での転院依頼はこういう事情によるのだった。

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悪寒戦慄ではない?

2017年06月19日 | Weblog

 昨日の日曜日直の時に、70歳代半ばの女性が、手足と口が震えるという訴えで受診した。口が震えるというのは、歯ががちがちなったのかと聞くとそうだという。発熱はなかったが、少し汗をかいていた。血圧は正常域でショックではない。

 3日前から咳が続いていて、かかりつけの医院で風邪薬としての処方をもらっていた(第3世代セフェム系内服薬も)。当院の泌尿器科から排尿障害で処方されて、それも合わせて処方されている。残尿があるそうだ。

 胸部X線で肺炎像はなかった。尿路感染症(急性腎盂腎炎)を疑って、尿検査をしたが異常はなかった。まあ第3世代セフェム内服でも尿路感染ならば治りそうだ。白血球数正常域でCRPはわずかな上昇だけで、ウイルス感染でもそのくらいの異常は出そうだった。血液培養を2セット提出して、入院で経過をみることにした。

 息子さんから、「咳でテープを貼った」という話が出た。きちんと処方内容が貼ってある薬手帳をみても、それはなかった。確認すると、咳が続くので、姪が持っていた「咳のテープ」を貼ったという。ホナリンテープらしい。その日の午前9時ごろに貼って、その後午後1時ごろにはがしたそうだ。何か具合が悪いことがあってはがしたのかと訊いたが、覚えていないという。「動悸がしたから、手がふるえたから」ではと訊いたが、同意はしなかった。午後2時過ぎから手足と口が震えたという。

 ホクナリンテープで手の振戦はありうるが、歯ががちがちとなるだろうか。昨日ほどではないが、今日も手の震えがあった。発熱はなかった。それまで手の震えはなかったというから、パーキンソンではないと思うが、どうも時系列の記憶が正確とは言い難い。

 今日は聴診で喘鳴wheezeが聴取された。昨日の胸部CTでも肺浸潤影はなかったが、感染症とすれば細気管支炎なのだろう。喘息発作に準じた細気管支炎の治療(短期間ステロイド使用)で経過をみることにした。

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ヘリで搬入、肺癌

2017年06月18日 | Weblog

 今日は日直で病院に出ている。山で動けなくなった40歳代男性が、災害救助ヘリで当院に搬入されることになった。意識レベル低下ということだったが、来てみると意識清明だった。両下肢も動くという。

 昨日は山のペンションに登山仲間と泊まって、登り始めて30分くらいしてからというので、登山そのものの影響は考えにくい。普通に胸部X線・心電図・血液検査を行ったが、有意な異常はなかった。

 数時間して登山仲間が病院に到着した。顔面蒼白となり、目の焦点が定まらず泳いでいたという。この方は降圧薬を2種類飲んでいる。ただし、薬の現物も薬手帳もなく、薬の名前も覚えていないそうだ。一時的に血圧が下がったための症状だったのか、確定はできない。

 点滴して4時間くらい経過をみていたが、起き上がっても大丈夫で、仲間と一緒に帰って行った。あとで消防本部から問い合わせの連絡があり、帰宅したことを伝えた。へりを1回飛ばすと、いくらかかるのだろうか。

 90歳代前半の男性が、食欲不振で受診した。この方は、3月に内科医院から体調不良で紹介になっていた。左肺癌があり、腹部大動脈瘤もあった。自宅で経過をみて、体調が悪化する時に入院の方針となっていた。

 前回のCTと比べると、胸水貯留があり、癌性胸膜炎になっているようだ。家族としては予後不良はわかっているので、とにかく病院で預ってくれればいいという。ステロイドを入れてみたいが、糖尿病があって血糖コントロールは良くないので、入れにくい。入院で点滴して経過をみることにした。

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睡眠薬でぐっすり眠れました

2017年06月17日 | Weblog

 先週の夜間に、60歳代後半の女性が40℃の高熱で受診した。数日前から発熱(37℃代らしい)があって、市販の風邪薬を飲んでいた。発熱が続くので、近くの医院を受診して風邪と言われたそうだ。

 当直の外科医から連絡が来て、炎症反応上昇と尿混濁があるという。内科入院にしてもらって、尿路感染症(急性腎盂腎炎)として抗菌薬(セフトリアキソン)と点滴の指示をお願いした。  

 翌日の午前中に病室に行くと、すでに解熱していた。発熱以外の症状を訊くと、鼻汁・咽頭痛・咳はなく、排尿時の違和感を感じていたという。それは尿路感染症だろうと思うが、発熱とは関係はないと思っていたのだろう。

 食欲もよく、3日後からは補液を中止して、抗菌薬の点滴静注だけにしていた。当直医が尿培養と血液培養2セットを提出してくれていて、全部から大腸菌(抗菌薬の感受性良好)が検出された。「かぜ診療マニュアル」の「気道症状なし・高熱のみ型」の典型例だ。

 この方は以前から、不眠症で困っていたが、受診はしていなかった。入院してから不眠を訴えたので、不眠時指示のブロチゾラム(レンドルミン)が(自動的に)出ていた。病棟の看護師さんから、毎日なので定期処方で出して、と言われた。

 睡眠薬でぐっすり眠れるようになったと、すごく喜ばれた。うつ病には見えないので、内科で睡眠薬を処方してもよいのだろう。少し続けて飲んでもいいが、調子がよくなったら、半錠にしたり飲んだり飲まなかったり(頓用)してみるなど、自分で調整するよう勧めた。隣の市に住んでいるので、退院後は近くの医療機関でもらうよう紹介状を書くことにした(市内に精神科はないので内科宛になる)。

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骨折も少しは勉強しよう

2017年06月16日 | Weblog

 昨日の救急当番の時に、60歳代後半の女性が搬入された。搬入依頼の救急隊からの連絡では、しりもちをついた後に腰痛があるという。腰椎圧迫骨折と思われ、来てもらうことにした。

 来てみると、痛いのは左股関節部だった。旅館の階段を上ろうとした時に、2段目のところでスリッパが階段に敷いてある絨毯にひっかかって、転倒したそうだ。左股関節部を打撲したという。大腿骨頸部骨折のようだ。腰椎には疼痛・圧痛はない。近くの整形外科に骨粗鬆症で通院している方だった。しりもちをついて腰痛というのは、どこから出た話なのだろうか。

 X線で確認すると、左恥骨・坐骨骨折と大腿骨頸部骨折があった。そこで整形外科医に連絡したが、CTの指示が出た。CTのオーダーにMalgaigne骨折疑いとあった。どんな骨折で、そもそも何て読むのかわからなかった。

 Malgaigne(マルゲーニュ)骨折は、骨盤輪が前方と後方の2か所で骨折する不安定な骨盤骨折で(垂直にずれると起こる)、大量出血するものらしい。仲田先生の本にもちゃんと載っていたが、すっかり忘れている。CTの結果それには相当しなかった。そのまま入院して、今日無事に大腿骨頸部骨折の手術が行われた。

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腹壁膿瘍

2017年06月15日 | Weblog

 今日の午後は救急当番をしていた。内科医院から、60歳代初めの女性が腹痛で救急搬送されてきた。FAXされてきた紹介状には、左上腹部痛とあった。搬入されて、さて何だろうかと腹部をみると、左上腹部に腫瘤があった。皮膚表面がまだらに発赤して熱をもっている。

 食事はとれるそうで、どうも腹壁内の問題らしい。縦13cm横15cmの円形の腫瘤だった。臥位から上半身を起こそうとすると余計に痛いという。ここまで大きいと、Carnett徴候といっていいのかわからなくなる。

 先々月から痛みがあり、先月から腫瘤をh触知するようになったという。受診はせずに様子をみていたが、今日は痛みが悪化して受診したそうだ。医院の先生(女性)もびっくりしただろう。発熱もあって、頻脈気味だが、それほど緊急性はないようだ。どうして、ここまで受診しなかったのか不思議だが、特に認知力に問題はない。

 CTをとると、左上腹部の皮下組織から筋層にかけて、膿瘍と思われる陰影がある。炎症反応は白血球数は正常域でCRPが12だった。健診で指摘されたことはないと言っていたが、ありそうだと思っていた糖尿病があった。HbA1c8.7%。

 外科にお願いして、入院になった。血液培養2セットを出したが、菌は出ないような気がする。皮膚表面には傷がないことから、外科医は明日心エコー検査を予約していた。明らかな心雑音はないが、感染性心内膜炎疑いになる。齲歯はないようだが、まあ歯磨きをしても一瞬菌血症になるらしいから。

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アルコール性肝炎~看護師さんに噛みついた

2017年06月14日 | Weblog

 昨日ICN(正しくは認定感染管理ナースCNIC)が、患者さんが病棟の若い看護師さんの腕を噛んだと報告に来た。患者さんは、前日にアルコール性肝炎で消化器科に入院した40歳代前半の男性だった。

 自宅は当地にあるが、他県に単身赴任していた、会社の健康診断で肝機能障害を指摘された。自宅で静養する様にと言われて、戻ってきていた。通常は二次検査を受けるくらいなので、仕事がうまくできない状態になっていたのかもしれない。

 嘔気がして食事がとれないと当院の外来を受診していた。肝機能障害を認め、γ-GTPは1500だった。血清アンモニアは正常域。肝臓自体は画像上脂肪肝で、肝硬変とはいえない。ウイルス肝炎や胆道系疾患はなく、アルコール性肝障害だった。自宅に戻って、仕事もないので普段以上に飲酒していた。

 入院すると離脱症状が危惧されて、外来で点滴を続けて帰宅としたそうだ。点滴が終わって、病院の駐車場でまで行ったところで、ふらふらして動けなくなり、また病院に戻ってきた。

 入院して奥さん付き添いで点滴を継続していた。体幹抑制をしていたが、かなり暴れて数人がかりでも抑えきれず、精神安定剤を2種類使用していた。押さえても起き上がってきて看護師さんの腕にかみついたのだった。

 入院後の経過は発熱・頻脈・発汗があり、まさにアルコール性肝炎相当の症状だった。慢性アルコール性肝障害があり、大量の飲酒をした時にアルコール性肝炎になる。案外、アルコール性肝炎と診断できることは少ない。正確には肝生検だが、普通はしないだろう。

 大抵は離脱症状が抜けて、自律神経症状の嵐が過ぎ去ると、食事もとれるようになって退院してしまう。アルコール依存の専門病院を勧めても、なかなか行ってはもらえない。昔アルコール依存の専門病院に見学に行った時、入院した患者さんで禁酒できるのは1/3と聞いたことがある。

 今日は症状が軽快して、食事もとれるようになっていたので、数日で帰るのだろう。腕を噛まれた看護師さんは気の毒だった。

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1日(半日?)にして肺炎

2017年06月13日 | Weblog

 77歳男性が昨日皮膚科に入院した。内科で糖尿病に処方したジャヌビアによる類天疱瘡(疑い)で、皮疹の経過をみるためと、ジャヌビア中止による血糖上昇の有無をみるためだった。(ジャヌビア+トレシーバのBOT)

 入院時検査として、頬部X線と心電図検査が行われていた。胸部X線は異常なしだった。それが昨夜から痰がからんで酸素飽和度が低下して、酸素吸入が開始された。発熱もあった。

 今朝皮膚科医から、昨夜からこんな状態でと相談された。この方はもともと精神遅滞があり、現在は施設に入所している。会話は一言だけ話すかどうかくらいだった。今日はぐったりして声もでなかった。聴診で左肺野にcoarse cracklesが聴取された。入院してから食事摂取時(昨日の昼食と夕食だけだが)に明らかにムセたということはなかったそうだ。

 胸部X線をポータブルで撮影すると、両側肺野に広範に浸潤影があった。昨日の胸部X線と比べると、1日(半日?)でこんなに違うかという変化だった。昨日の病院の食事で誤嚥したのか、あるいは昨日朝までの施設での食事で誤嚥したのか。

 内科病棟の重症個室が空いていたので、転棟して内科入院とした。

 

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「破れかぶれセット」

2017年06月12日 | Weblog

 昨日の春季セミナー「街場の血液学」の講演で宮崎仁先生が、「破れかぶれセット」を紹介していた。お知り合いの飯塚病院総合診療科・井村洋先生が、診断がつかない時に提出する血液検査セットだそうだ。

 神経症状(下肢のしびれ?)の診断がつかない患者さんがいて、宮崎先生が整形外科や神経内科にも紹介したが、診断がつかなかった(これは神経内科だろうと言っていたが)。「破れかぶれセット」を提出したところ、ビタミンB12が測定感度以下だったという。ビタミンB12欠乏による亜急性脊髄連合変性症だった。血算(CBC)で貧血はなかったので通常は想起しないから、セット様々になる。

 「破れかぶれセット」は、血算・生化学・アミラーゼ・カルシウム・TSH/T4・フェリチン・亜鉛・ビタミンB12・血糖/HbA1c(これにACTH・コルチゾールを追加するかどうかという)。なるほどの項目だが、自分では亜鉛は思いつかなかった。総合診療の名医でも、わからなくて途方に暮れることはあると思うと、ちょっと安心する。

 自分で出すとすれば、抗核抗体・ANCA・可溶性IL2受容体も出しそうだ(根拠ないけど)。鈴木富雄先生の不明熱でのチンチンチン(血沈・フェリチン・尿沈渣)も出す。高齢者の食欲不振が来ると、男性でCEA・CA19-9・PSA,女性ではCEA・CA19-9・CA125の癌セットを出す(これも根拠ないけど)。とりあえずの(?)血液培養2セットもけっこう役立つ。

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プライマリケア学会春季セミナー2017

2017年06月11日 | Weblog

 今日はプライマリケア学会春季セミナー(東京)に行ってきた。午前は宮崎仁先生の「街場の血液学」、午後は「Common disease」。

 宮崎先生は話がうまく、楽しくためになる講義だった。血液疾患を、日常診療で見る頻度から認識しなおすということ。赤血球増加の患者さんが来ると、真性赤血球増加症polycythemia veraを真っ先に考えてしまうのではなく、まず頻度の高い「喫煙者の赤血球増加smokers' polycythemia」から考える。もちろん、頻度は低いが真性赤血球増加症も見逃さないようにする。日常診療でよく見る鉄欠乏性貧血の診かたも詳しく教えてもらった。

 宮崎先生編著書の「血液疾患診療ナビ」を前日に購入して読み始めていたので、記念に宮崎先生にサインしてもらった。血液疾患は岡田定先生の本を使用している。岡田先生の本は研修医向けに書かれているが、宮崎先生の本は開業医向け(病院勤務医の一般内科外来向けにも)に書かれているので、視点がちょっと違う。

 午後の「Common disease」は、ガイドラインの内容とbeyond the guidelineの話だが、3つのテーマ(肺炎・消化性潰瘍・アレルギー)なので、内容がうすくなってしまった。

 今日は本屋で大判の「シャーロック・ホームズ完全ナビ」国書刊行会と「シャーック・ホームズ大図鑑」三省堂を見つけたので、両方とも購入した。写真と図がきれいで枚数も多く、なかなかの美本だ。 

 

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