7月に入ってからしだいに食事摂取できなくなった87歳女性が、内科医院からの紹介で7月22日に入院した。内科の別の先生が担当していた。
腹部CTで胃前庭部にほぼ全周性の腫瘤を認めた。消化器科で上部消化管内視鏡検査を行うと、幽門輪部に進行胃癌と判断される潰瘍性病変を認め、CTで見た通り幽門狭窄を呈していた。生検でgroup Ⅴ(por)だった。
もともと直腸癌術後で人工肛門造設術を受けていて、腎障害・軽度の認知症もあった。消化器病センターのある専門病院に紹介となった。
バイパス手術の適応もなかったらしく、狭窄部にステントが留置された。拡張は良好だったが、食物が流れず、肛門側のステントが十二指腸壁に当たってしまったことによると判断された。さらにステントが追加で留置されて、この後は十二指腸への流出が良好となった。
それでも食事摂取量は少なく、点滴をしていた。そのまま退院にできないため、当院に戻って療養継続となった。流動の栄養剤などが飲めればいいが、摂取量が少ないと退院は難しいかもしれない。
胃の蠕動運動gastric emptyingは前庭部で担っているので、ステントで抑えられると単なる土管になってしまうか。手術ができないと経鼻胃管(NGチューブ)を入れっぱなしになってしまうので、胃液が流れるだけでも処置した甲斐はある。