昨日の午後5時半ごろに、その日の救急当番だった腎臓内科医(大学病院から4か月交代で透析応援)から連絡がきた。発熱の患者さんを入院させたいという。
患者さんはその日の朝から発熱・悪寒があり、風邪と言われて午前中にかかりつけのクリニックで点滴を受けた。午後になっても発熱(38.0℃)があり、救急要請したという経緯だった。
発熱以外の訴えがなく、まず新型コロナウイルス抗原検査(結果は陰性)と血液検査を提出していた。白血球15300・CRP5.1で細菌感染疑いの結果だった。
画像はどうですかと訊くと、今からやりますという。放射線室に診に行った。診察すると、胸部はわずかに心尖部に収縮期雑音があるが、呼吸音は異常がない。
腹部は右下腹部に圧痛があった。反跳痛・デファンスはない。自発痛の有無を訊くと、痛くないという。関節炎・蜂窩織炎の所見はなかった。
胸腹部単純CTがオーダーされていたので、まずはそれで診ることにした。肺炎像はなかった。右下腹部に腸管周囲に炎症像があるが、腸管壁の様子がよくわからない。
造影CTを追加すると、盲腸壁が肥厚していて、その左側(回腸側)で腸管壁が切れているように見える。腸管外に同じ濃度の陰影がある。虫垂は指摘できない。
当直医は外科医だったので、診てもらうことにした。医局のコンピュータで造影CTを診てきて、腹腔内膿瘍ではないかと言われた。虫垂炎穿孔かあるいは盲腸癌の穿孔が疑われる。
腹部を改めて診察しても、圧痛は軽度で腹膜刺激症状があるとはいえないのが不思議だった。当院は4月から麻酔科医が不在となり、外科手術は待機手術のみで緊急手術はできない。
地域の基幹病院に連絡すると、外科系当直の先生が出て、外科当番と相談して折り返し返事をしますと言われた。もし受け入れ困難の時は、早急に別の病院を当たらなければならない。10分後に連絡が来て、受け入れ可能とのことで、救急搬送させてもらった。
腎臓内科の先生は、結果に驚いている様子だった。それにしても腹部所見が軽すぎる。