90歳男性が高血圧症・ラクナ梗塞後で内科外来に通院していた。一人暮らしで、娘さん(とっても、60歳代)が通いで世話をしていた。病院受診もひとりでは来れないので、連れてきていた。昨年高熱で食事摂取できなくなって受診した。肺炎・尿路感染は否定的で、肝機能障害を伴うことから、胆道感染と判断された。
胆石や胆道癌は指摘できなかったが、胃切除術後なので、胃切除術後の後遺症としての胆道感染と推定された。抗菌薬投与で順調に警戒治癒した。入院すると認知症としての不穏が顕在化して、とても一人暮らしには戻せなかった。介護保険申請から始まって、施設入所待ちになった。ちょうど地域包括ケア病棟が立ち上がったので、そちらに回した。自力歩行できるので、ベットサイドにセンサーマットを置いていた。病棟で毎日会っても、「お久しぶりです」と言われる。
外来の検査で貧血を認めて、胃切除術後としての鉄欠乏性貧血とビタミンB12欠乏性貧血だった。小球性(鉄)+大球性(ビタミンb12)=正球性という典型的な症例だった。鉄剤内服を断続的にしていて、ビタミンB12は定期的は筋注にしていた。
このたびめでたく施設入所が決まった。施設での処方になるので、その旨を診療情報提供書に記載した。こまめな血液検査や筋注は施設の負担になるし、嘱託医は引退した高齢の先生なので、そのまま処方継続すれば悪化しない無難な処方にした。 鉄剤は少なめ量で継続にして、ビタミンB12は経口投与とした。
エーザイで出している小冊子に、ビタミンb12経口投与の記事があった。 「ビタミンB12の非経口投与(筋注)が原則とされてきました。しかし筋注には疼痛や通院などの患者負担が伴う上に、出血傾向のある例などでは、軽視できない合併症につながる可能性もあり得ます。また経口投与に比べれば、医療スタッフの負担も大きくなります。ビタミンB12は内因子との結合がなくても、単体で受動的にある程度吸収され、総吸収量の1~2%がこの受動的吸収によるもので、この吸収は内因子欠乏状態でも保たれています。そこで経口投与でB12を補充するという試みが行われており、現在までに経口投与の効果を示唆する複数の臨床成績が出されています。一般的に投与量は1000〜2000㎍/日が推奨されています。」 なるほど。