大学病院呼吸器内科から74歳女性が紹介されてき来た。通院が大変なので当院で処方してほしいという。紹介状にも処方をお願いしますとだけあって、どう対応していいのかわからず、患者さんに大学病院で何と言われているのか聞いてみた。3年前から肺癌の抗癌剤治療と放射線治療を受けたが、すでに癌に対する治療はこれ以上無理と判断されていた。大学病院の緩和ケア病棟に申し込んでいて、空いたら連絡が来るそうだ。在宅酸素が導入されているが、医療用麻薬の処方はなく、デカドロンが入っていた。
この患者さんは先月の祝日に呼吸困難で当院に救急外来に搬入されていた。当番は循環器科医で、当然当院は初診になり、情報がない。通院している大学の呼吸器科に連絡するとベットがないので受けられないと断られた。救急部に連絡すると、呼吸器内科の患者さんは診れないと、やはり断られた。大学近くの市立病院か医療センターに頼んでみてはとだけ言われた。市立病院でも最初受け入れないと言われたが、大学病院から貴院に頼むよう言われたと伝えて粘ったところ引き受けてくれた。そこから、大学病院に転院して、癌性胸膜炎・心膜炎かと思われたが、肺炎の併発で悪化した(その時の胸部X線を見ると、かなりすごい)らしく治療に反応して病状は安定した。
これまではどうだったかというと、大学病院あるいはがんセンターで癌の治療してきて、もうこれ以上癌に対する治療はできない、緩和ケアのみ(BSCと名前はすばらしい)となると、紹介していいですかと電話で問い合わせが来て(紹介状だけのこともある)、全部こちらで引き受ける、という経緯が多かった。患者さんの希望や家族事情(一人暮らしだと比較的早期に入院)によるが、外来で診ていって、タイミングよく入院で診るという形をとる。
今回の患者さんは、できるだけ自宅で過ごしたいという。どうも緩和ケア病棟入院は呼吸困難で動けなくなってから入院するものと思っていたらしい(それでは数日で終わってしまう)。それでは緩和ケア病棟の意味がない。ある程度は身の回りのことができる状態で1~2か月過ごして最期を迎えるものだろう。できるだけ、ぎりぎりまで自宅で過ごして、動けなくなった時に数日入院することが、大学病院でできるとは思えない。実際、緩和ケア病棟は空いた時に連絡が来るというもので、緊急で入院はできない。
これまでの紹介患者さんの例をあげて、たぶん最期は当院に入院することになる可能性が高いが、当院の癌終末期のBSCの方針(DNRを含む)を説明した。半年持つといいが、そこまでは無理だろう。最期のお正月を自宅迎えることになる。