作者の新境地というものは読者にとって案外厄介なものだったりします。
例えば伊坂幸太郎。
『オーデュボンの祈り』でデビューして以来、彼は、魅力的なキャラクター、ウィットに富んだ会話、張り巡らされた伏線、鮮やかなドンデン返し、読後感の爽やかさ、そういった特長の作品で読者の支持を得てきました。
しかし、それら支持される要因をすべて封印し、彼は『あるキング』という作品を世に送り出します。
ぶっちゃけ『あるキング』のどこが面白いのか、自分にはよくわかりません。
一言で言うと実験的作品になるのかな。可能な限り娯楽性を排しているので、それまでの作品のように面白い!と手放しで褒められるものじゃないんですよね。
この作品だけで伊坂幸太郎を見限ろうとは思いませんが、こういった作品ばかり続いていたら、自分は伊坂幸太郎のファンを止めざるを得ないでしょうね。
読み終わった後に面白さがわからなかったというならまだマシなんですよ。
辻村深月の最新作『水底フェスタ』に至っては、巻頭から10ページぐらいで挫折して読み進められないでいますからね。
この先面白くなりそうな予感がまったくしない。
おかしいな、辻村深月はこれまでの著作はすべて持っている、お気に入りの作家のはずなんだけど。
まぁ『あるキング』にしろ、『水底フェスタ』にしろ、おそらく作家にとっての新境地なのでしょう。
面白さはわからないにしても、これまでにない作品にしたい、本当に書きたいものを書きたい、という想いは伝わってきますから。
ただ、舵の切り方があまりにも大胆で、読者がそれについていけないというか。
ほんと、作家の新境地というものは厄介です。
さて、中田永一、世間的には乙一の筆名の方が通っているでしょうか、彼の最新作『くちびるに歌を』は間違いなく作家乙一にとっての新境地です。
デビュー以来彼は、よくこんな設定を思いついたものだな、というような、いわゆる“世にも奇妙な”的な物語ばかり発表し続けてきました。
時に残酷で、時にユーモラスで、時に切ない、その世にも奇妙な感が自分にはひどく心地が良かったのです。
しかし最新作『くちびるに歌を』には、そういった要素が一切ありません。
何しろ本作は五島列島を舞台にした、合唱コンクールを目指す中学生たちの爽やかな青春ストーリーなのですから。
あらすじだけを聞いたら、とても乙一の新作だとは思わなかったでしょう(ちなみに乙一の著作はほとんどすべて初版で持っています)。
奇妙な要素のない乙一なんて想像も出来ませんでした。
けれど、読み終わって、これは間違いなく乙一の作品だ、と思いました。
何が彼にこの作品を書かせたのか、それは自分にはわかりません。
話に聞いたところによると、五島列島を舞台にすることも、合唱を題材にすることも、編集者に勧められたからだそうですが、編集者に勧められてこれほどの作品が出来るのであれば、作家は誰も苦労はしないと思います。
プライヴェートでお子さんが出来たことが理由かもしれませんね。
これまでの作品には、あまり老若男女に勧められるようなものはなかったし、中には、とても子供には薦められない、歪な世界観のものもありましたからね。
本作はどうやら本屋大賞にも候補作としてノミネートされたそうです。
他の候補作は知りませんが、何となく取るんじゃないかな、って気がします。
この路線の乙一作品も読んでいきたいです。
例えば伊坂幸太郎。
『オーデュボンの祈り』でデビューして以来、彼は、魅力的なキャラクター、ウィットに富んだ会話、張り巡らされた伏線、鮮やかなドンデン返し、読後感の爽やかさ、そういった特長の作品で読者の支持を得てきました。
しかし、それら支持される要因をすべて封印し、彼は『あるキング』という作品を世に送り出します。
ぶっちゃけ『あるキング』のどこが面白いのか、自分にはよくわかりません。
一言で言うと実験的作品になるのかな。可能な限り娯楽性を排しているので、それまでの作品のように面白い!と手放しで褒められるものじゃないんですよね。
この作品だけで伊坂幸太郎を見限ろうとは思いませんが、こういった作品ばかり続いていたら、自分は伊坂幸太郎のファンを止めざるを得ないでしょうね。
読み終わった後に面白さがわからなかったというならまだマシなんですよ。
辻村深月の最新作『水底フェスタ』に至っては、巻頭から10ページぐらいで挫折して読み進められないでいますからね。
この先面白くなりそうな予感がまったくしない。
おかしいな、辻村深月はこれまでの著作はすべて持っている、お気に入りの作家のはずなんだけど。
まぁ『あるキング』にしろ、『水底フェスタ』にしろ、おそらく作家にとっての新境地なのでしょう。
面白さはわからないにしても、これまでにない作品にしたい、本当に書きたいものを書きたい、という想いは伝わってきますから。
ただ、舵の切り方があまりにも大胆で、読者がそれについていけないというか。
ほんと、作家の新境地というものは厄介です。
さて、中田永一、世間的には乙一の筆名の方が通っているでしょうか、彼の最新作『くちびるに歌を』は間違いなく作家乙一にとっての新境地です。
デビュー以来彼は、よくこんな設定を思いついたものだな、というような、いわゆる“世にも奇妙な”的な物語ばかり発表し続けてきました。
時に残酷で、時にユーモラスで、時に切ない、その世にも奇妙な感が自分にはひどく心地が良かったのです。
しかし最新作『くちびるに歌を』には、そういった要素が一切ありません。
何しろ本作は五島列島を舞台にした、合唱コンクールを目指す中学生たちの爽やかな青春ストーリーなのですから。
あらすじだけを聞いたら、とても乙一の新作だとは思わなかったでしょう(ちなみに乙一の著作はほとんどすべて初版で持っています)。
奇妙な要素のない乙一なんて想像も出来ませんでした。
けれど、読み終わって、これは間違いなく乙一の作品だ、と思いました。
何が彼にこの作品を書かせたのか、それは自分にはわかりません。
話に聞いたところによると、五島列島を舞台にすることも、合唱を題材にすることも、編集者に勧められたからだそうですが、編集者に勧められてこれほどの作品が出来るのであれば、作家は誰も苦労はしないと思います。
プライヴェートでお子さんが出来たことが理由かもしれませんね。
これまでの作品には、あまり老若男女に勧められるようなものはなかったし、中には、とても子供には薦められない、歪な世界観のものもありましたからね。
本作はどうやら本屋大賞にも候補作としてノミネートされたそうです。
他の候補作は知りませんが、何となく取るんじゃないかな、って気がします。
この路線の乙一作品も読んでいきたいです。
>ねこさん
>あっ!!自分の勝手な意見なので聞き流して下さい(汗)
いやいや、ねこさんの意見は鋭いと思いますよ。
たぶん作家は、同じような作品ばかり書いていると、物足りなくなるんでしょうね。
自分はもっといろんな作品を書けるはず!と思って書いたものが読者の求めるものと距離があったりするのでしょう。
作家という職業も大変です。
>YO-SHIさん
YO-SHIさん、はじめまして!
拙ブログへようこそいらっしゃいました。
乙一はデビューからずっと読んでいますが、数少ない贔屓の作家の一人です。
YO-SHIさんがどういった作風の作品を好まれるかわからないので、どの作品を薦めればいいか、わかりかねますが、、、ダークなものでもよいのであれば映画化もされた『GOTH』でしょうか。
タダモノではない、と思わせる作品です。
>「作者の新境地」について、特に伊坂幸太郎さんについて、とても共感しました。
そうですね、自分も初期作品の方が好みではあります。
でもああいった作品は望めないのかもしれませんね。
この本を読んで、ブログに感想を書いたばかりです。
乙一さんの作品を読むのは初めてでした。他の作品は、ちょっと雰囲気が違うのですね。
「作者の新境地」について、特に伊坂幸太郎さんについて、とても共感しました。
私は、以前のような作品をもっともっと書いて欲しいです。
だからこそ新境地とも言うべき今までとは違ったものを書くことで、新しい価値観とか考え方とかを得たり、自分に限界がない事を確かめたりするんじゃないですかね?
あっ!!自分の勝手な意見なので聞き流して下さい(汗)