この世界の憂鬱と気紛れ

タイトルに深い意味はありません。スガシカオの歌に似たようなフレーズがあったかな。日々の雑事と趣味と偏見のブログです。

『横道世之介』、最高に面白かった!だけど、、、

2013-03-09 23:12:57 | 新作映画
 吉田修一原作、沖田修一監督、高良健吾主演、『横道世之介』、3/9、ユナイテッド・シネマトリアス久山にて鑑賞。2013年12本目。


 三月に公開される新作映画の中で個人的に一番期待しているのは三月九日に公開される『キャビン』というホラー映画です。こういう外連に充ちた作品って好きなんですよね。
 じゃ公開日の三月九日に『キャビン』を観に行ったかというと、観に行きませんでした。
 なぜかというと三月九日はユナイテッド・シネマトリアス久山がグランドオープンで、映画一本の鑑賞料金が千円だったんです。
 こちらの方を優先して、『キャビン』の鑑賞は翌週に回すことにしました。公開一週で打ち切りってことにならなきゃいいんだけど。笑。
 もちろんいくら鑑賞料金が千円でも観たい映画がなければ話にならないわけですが、ちょうどこの『横道世之介』が観たかったんですよね。

 この日体調は最悪でした。
 体調っていうか、前日WBCの日本対台湾戦を遅くまで見て、そのせいか眠れなくなって(そんなに熱烈な野球ファンってわけじゃないのに!)ほとんど一睡もせずに朝を迎えたんです。
 ユナイテッド・シネマトリアス久山へは車で行ったんですけど、そこに着くまでの小一時間、マジで意識が朦朧として事故りそうになりました。

 これで観た映画がつまらなかったら「最悪!」ってことになるんですけど、幸いにして『横道世之介』は最高に面白かったです。
 去年公開された映画で、自分はベストワンに『沙漠でサーモンフィッシング』を選んだんですけど、あれを選んだのには「まぁこれを一位に選ぶのは自分ぐらいだろう」という計算もあってのことで、実質的な一位はアカデミー賞で三冠に輝いた『桐島、部活やめるってよ』でした。
 『横道世之介』は『桐島』と同じぐらい面白かったです。

 ただ、具体的にこの映画のどこが面白かったのか、説明するのは難しいです(それは『桐島』も同じですが)。
 作中、飛行機が墜落したり、テロリストと死闘を繰り広げたりといった、劇的な何かが起こるわけではないので。
 「横道世之介」というインパクトのある名前を持つ主人公が大学生活を送るだけの物語です。
 でも、ワンシーン、ワンカット、一つの台詞でさえ面白く、鑑賞中、幾度となくクスッと笑わさせてもらいました。

 最近の邦画ってバカを相手にした作品が多いじゃないですか。バカを相手にしたという言い方に語弊があれば、鑑賞者はバカであると決めつけていると言い換えてもいいですが。
 例えば登場人物の心の声をナレーションで語らせたり、やたら説明過多な台詞が多かったりetc。
 この『横道世之介』はその対極にあると言ってもいいです。
 作品は1987年の過去と2003年の現在という二つのパートから成り立っているのだけれど、その転換が明確には示されない。
 もちろん注意して観ていれば、というか注意して観てなくても普通に観ていれば、今見ているシーンはどちらのパートなのか、わかるような画作りはされているのだけれど、「1987年春」といったような親切なテロップは出てきません。

 そして何より驚くべきことに、作中、非常に重要なある事柄が語られないんです。
 『桐島、部活やめるってよ』でも「なぜ桐島は部活をやめたのか」、その理由が作品の中では触れられず、それが作品をより深いものにしていたと思うのですが、本作ではそれ以上に大胆な省略が為されていて、観ていて本当に驚きました。
 もちろんその省略は作品の欠陥とはなってなくて、むしろ観る者に作中に出てこない登場人物の行動を想像させ、作品をより深く、考えさせるものにしています。
 何が語られないのかは実際観に行って確認してください。

 キャストも本当に演技巧者な役者ばかりで、本作では過去パートと現在パートを同じ役者が演じているのですが、そこに違和感がないんですよ。
 普通だったらメイクをしようが、似た俳優を連れてこようが、時の流れを表現することは難しいと思うのですが、本作はそれが上手く成功しています。
 特にヒロイン役の吉高由里子は十八才と三十四才の演じ分けが本当に見事で、、、来年のアカデミー賞の助演女優賞は彼女にあげたいですね。

 本作は本当にべた褒めすることしかなく、間違いなく2013年に観た映画の中でトップ3に入ると思うのですが、公開二週目に観に行ったせいか、九時十五分からの初回上映を観た観客は自分を含めてわずかに二人!!
 それもこの日は鑑賞料金が千円のサービスデーだったにもかかわらずです。
 上映終了もそんなに先のことではないと思うので、一人でも多くの人に観に行って欲しいですね。


 お気に入り度は★★★★★、お薦め度は★★★★★(★は五つで満点、☆は★の半分)です。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする