ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

読書ノート 脇坂紀行著 「欧州のエネルギーシフト」 岩波新書

2013年05月19日 | 書評
脱原発と脱化石燃料に取り組む欧州の21世紀エネルギー政策 第3回

序(3)
福島第1原発事故以来、脱原発のためのエネルギーシフトは識者らによって様々に議論されてきた。日本のエネルギーシフトの第1人者環境エネルギー政策研究所飯田哲也氏は、石橋克彦編 「原発を終らせる」 (岩波新書2011年7月)のなかで、「エネルギーシフトの戦略」において「欧州のエコロジー近代化」を紹介した。 飯田氏は「世界の自然エネルギーへの投資額は2010年には20兆円規模と拡大している。しかしその市場はほとんどが日本の外にある。地球温暖化の実施により国内経済GDPがどれだけ低下するかという経済モデルでは国民一世帯当たり36万円の負担増となるといった、分りやすい誤りに陥ったままである。過去の公害規制が産業界にイノベーションを引き起こし、経済成長をもたらしたという「ポーター仮説」が重要である。大規模企業やエネルギー多消費産業が蒙る損害ばかりを計算し、省エネ家電・電気自動車・太陽光発電といったエコロジー近代化側面を見ていないのである。欧州では2000年以降、風力・太陽光・天然ガスといったクリーン御三家へのシフトが加速した。1990年から2007年のGDPの増加と炭酸ガスの増減を見ると、日本は炭酸ガスは10%増加してGDPの増加が20%に留まっている。それに対して欧州各国の炭酸ガス減少率は10%-20%で、GDPは30%ー50%も増加している。欧州の電力構成は天然ガス・風力・太陽光の順であり、日本は石炭・石油・原子力・天然ガスという順である。エコロジー近代化とは環境政策に経済原理を活用し、経済政策に環境要素をとりいれるということである。1990年より欧州はエネルギーシフトを成し遂げたが、日本は短期的に低コストであった石炭発電を復活させ、石油から石炭にシフトしただけであった。ドイツでは自然エネルギー発電を6%から17%に増やし、今後の10年で25%を目指している。」という。長谷川公一著 「脱原子力社会へー電力をグリーン化する」(岩波新書2011年9月)において長谷川公一氏は、グリーン電力への転換の世界の動きを紹介している。「電力を再生可能なエネルギー技術によって置き換える事をグリーン電力と呼ぶ。グリーン化を進める政策には、再生可能エネルギーによって発電された電力を固定価格で買い取る事を電力会社に義務つける「固定価格制」か、販売電力量に占めるグリーン電力の一定比率を義務付ける「固定比率制RPS、割当制」とがある。固定価格制を実施したドイツ、スペイン、デンマークでは風力発電が急増し、割当制を実施したイギリスでは20%を目標としたが占有率が伸びなかった。投資家にとって固定価格制が有利に働き、割当制では電力会社に不当に安く買い叩かれるため投資家は敬遠するのである。日本では2003年度より「新エネルギー特別措置法」により割当制を実施し、しかも占有率の目標を1.3%と著しく低い目標で、従来の電力会社の利益を損なわない範囲で実施する意図が露骨である。」という。
(つづく)

文芸散歩 大畑末吉訳 「アンデルセン童話集」 岩波文庫

2013年05月19日 | 書評
デンマークの童話の父が語る創作童話集 156話 第9回

11) ヒナギク
雛菊とは野に咲く小さな花で可憐な姿を見て雲雀が愛でます。ひなぎくは喜んで精一杯美しく咲き誇り、ひばりが来るのを待ちました。ところがひばりは子供たちに捕えられ鳥かごに入れられていたのです。そしてひなぎくの花も籠の中に入れました。ひなぎくはひばりに会えて嬉しかったのですが、子供らは鳥に水を与えるのを忘れていましたので、ひばりは衰えて死んでしまいました。ひなぎくを愛でたひばりとひなぎくは共に亡くなりました。可憐ないかにも悲しいお話です。

12) しっかり者の兵隊
ある家のテーブルの上に12人の鈴で出来た兵隊さんの人形がありました。鋳物型に鈴の湯を流し込んで作ったので、皆同じ兵隊さんの格好をしていましたが、ひとりだけ片足がありません。それは錫が途中でなくなってしまったからです。この話の主人公は可愛そうな片足の兵隊さんです。テーブルの上には12人の兵隊さんのほかに、紙で出来たお城がありました。お城の窓をのぞくと踊り子の娘さんが片足を高く上げて踊っていました。兵隊さんにはこの娘さんも片足しかないと見えましたので、自分と同じなのですっかりこの娘さんに恋をしましたが何もいえません。夜12時にビックリ箱の蓋がぱちりと開いて、中から小さな黒鬼がいて兵隊さんを睨みつけました。翌朝窓から風が入って兵隊さんは4回から下に庭に真っ逆さまに落ちました。坊ちゃんらは庭を探しましたが見つかりません。そこへ腕白小僧が2人通りかかり、兵隊さんを見つけて紙のボートに乗せて溝に流しました。兵隊さんは大変な目にあって、どんどん流されついには大きな掘割にボートごと沈没しました。水の中に投げ出された兵隊さんをお魚がぱっくり飲み込みました。それからは闇の中で暫くいましたが、突然明るくなって魚の腹から出られました。なんというめぐり合わせでしょうか。漁師がこの魚を釣って買った女中さんがお料理する為に腹を割いたら兵隊さんが出てきました。その家は兵隊さんが元いた家のテーブルの上でした。兵隊さんは娘さんに再会できて嬉しいのですが何もいえません。二人はじっと見つめあうだけでした。するといらず小僧が兵隊さんを掴んで燃え盛るストーブの中へ放り込みましたので錫の兵隊さんは溶けてしまいました。そして紙で作った踊り子の娘も風に飛ばされてストーブの口にはいり燃え尽きました。幸せにも2人はストーブの中で一緒になりました。
(つづく)