ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

読書ノート 町田徹 著 「東電国有化の罠」 ちくま新書

2013年05月14日 | 書評
東電の法的整理をせずに、背負いきれないツケを国民に回す官僚のたくらみ 第7回

1) 誰が東電を守ろうとしたのか (4)
 政府(官僚機構)による東電破綻回避のための支援約束が行なわれたのもかかわらず、政府(内閣)の東電支援策を法律に落とし込む作業がこれほどまでに遅れた理由の一つには、5月2日の参議院予算院会の審議において枝野官房長官の「東京電力の賠償には上限は無い」という見解を示し、東電の無限責任を追及する姿勢が内閣に強かったことと、福山哲郎著 「原発危機ー官邸からの証言」(ちくま新書 2012年8月)で述べられているように、東電の福島第1原発事故対応のまずさと内閣との意思疎通による菅総理の東電不信感が響いているようであった。支援機構に参加する電力会社は負担金を支払うということが、東電以外の電力会社がなぜ東電のために負担金を負うのかという不満から株主代表訴訟を起こされる可能性があったので、財務省と経産省は電力会社が機構に納める負担金を児童的に電気料金に転嫁する(サーチャージャー部分)仕組みを採用することで各電力会社の了解を取り付け、内閣法制局に法案を認めるよう働きかけた。こうして電気料金値上げという国民負担の道を開いた。機構案の問題は、東電の持つ利益の貯金である内部留保をまず吐き出させる努力を全く講じていない。東電のバランスシートをみると、内部留保とは株主総会の了解で取り崩せる資本剰余金6800億円、利益剰余金1兆8300億円、経産省の了解で転用できる使用済み核燃料再処理引当金1兆2100億円、同準備金360億円、原発解体引当金5100億円などが含まれる。機構案で救済されたのは東電だけでなく、銀行が問われるべき貸し手責任、株主が果たすべき出資責任もそろって不問にされた。昔の「徳政令」みたいなものである。新聞各紙は政府案の「新たな機構が東電を公的管理下におく」と高く評価したが、権限も能力も人材も何もない新設機構の公的管理が機能しないこともわかるはずである。5月20日東電は監査法人から「破綻宣告」されてもおかしくない決算を乗越え(監査法人の共犯性は今さらいうまでもないが)、最終赤字1兆2473億円とし清水社長の辞任と西澤伸社長の就任を発表した。しかしそこには少なく見ても20兆円といわれる福島第1原発事故賠償費用は織り込まれていない。さて誰が払うのでしょうか、東電は知らぬ顔をしているのである。東電は身を切ることはせず政府からの支援の範囲内でしか賠償する意志はないらしい。収益の急速な悪化を尻目になんとバランスシートに記載された「現金と預金」は1兆円以上膨らんでいた。これは銀行による緊急融資のおかげである。バランスは赤字でもキャッシュフローがある限り企業は生きてゆける。アメリカの貿易と財政事情と同じである。
(つづく)

文芸散歩 大畑末吉訳 「アンデルセン童話集」 岩波文庫

2013年05月14日 | 書評
デンマークの童話の父が語る創作童話集 156話 第4回

3) エンドウ豆の上に寝たお姫様
王子が本当のお姫様を見つけようと、何枚もの敷布団の下に小さなえんどう豆をおいて、そこに寝せたお姫様がこの豆に気がつくほど繊細かどうかを調べたという話。本当の深窓の令嬢の条件だそうです。

4) 小さいイーダ-の花
夢見る少女イーダ-の花とおもちゃに囲まれた生活です。「おもちゃのチャチャチャ」という歌はこの話から連想を得たものと思われます。イーダーは学生さんから、窓に置いたお花が萎れてしまうのは毎晩舞踏会を開いて楽しく踊って疲れているからだと教えられました。こうしてイーダーはお花とおもちゃの舞踏会を空想します。その光景がお話の内容です。そして死んだお花を庭に埋めてお葬式をしましたとさ。
(つづく)