ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

東日本大震災と医療問題:内部被ばく線量の記録を

2011年05月27日 | 時事問題
医療に関する提言・レポートfrom MRIC by 医療ガバナンス学会(2011年5月26日) 「内部被爆による晩発性障害を見極めるため毛髪などの試料保存を」 山野辺滋晴 共立耳鼻咽喉科より

 福島第1原発事故の発生後、人体の被爆量測定に関してなぜか「移動式ホールボディカウンター」(日本原子力研究開発機構が3台保有)が使われなかった。将来被爆と発病の因果関係を問題とするとき、原爆症訴訟でも長年因果関係が証明できずに争われてきました。今回の年間100mSv以下の低線量被爆で白血病やガンや先天性疾患が発病するかどうか、因果関係を統計的に正しく判定するためには、今のうちに体内被曝状況を正確に記録する必要がある。直後のホールボディカウンターが行なわれなかった今の次善の策としては、原子力技術安全センターのバイオアッセイ(生体測定)の項目に書かれている様に「汗、血液、呼気、体液、毛髪を採取し放射線量を測定することにより体内の放射能を評価する」必要がある。これを実行していただきたい。それと土壌中の核種放射性物質の測定も行なえれば精度は上がるであろう。原子力安全防災関係各位にお願いするところである。

読書ノート 天野郁夫著 「大学の誕生」 中公新書

2011年05月27日 | 書評
帝国時代の高等教育システムの歴史 第3回

 著者天野郁夫氏のプロフィールを紹介する。天野 郁夫氏(1936年1月7日 生まれ )は教育学者。専門は教育社会学。東京大学名誉教授。元日本学術会議会員。元日本教育社会学会会長。元日本高等教育学会会長(初代)。 神奈川県足柄下郡真鶴町の魚屋の父、助産婦の母の下に、5人兄弟の次男として生まれる。1958年一橋大学卒業後富士通に約1年勤務。1959年同社を退職、高校教師を志し東京大学教育学部3年に編入した。東京大学教育学部の大学院に進み、1966年 国立教育研究所教育計画研究室研究員となり、1971年 名古屋大学教育学部助教授になり、1979年 東京大学教育学部教育社会学研究室助教授になった。その後は東京大学教育学部の教授 を続け、1996年 東京大学を定年退官する。2006年まで独立行政法人国立大学財務・経営センター教授であった。それから独立行政法人となった国立大学の業務財務評価を仕事とし、神戸大学、一橋大学、横浜国立大学、京都大学、九州大学の経営協議会外部委員や外部評価委員を歴任した。主な著書には本書のほかに、『日本の高等教育システム』(2003年、東京大学出版会) 、『大学改革のゆくえ』(2001年、玉川大学出版部) 、『試験の社会史』(1983年、東京大学出版会)などがある。一般読者向けの本であるよりは教育関係者向けの専門書が多いようだ。大学改革論議の毎日にやる気が失せたというか、最近になってわが国の大学組織や高等教育システムの基本的な構造に興味が移って本書が生まれたという。
(つづく)

環境書評 原科幸彦著 「環境アセスメントとは何か」 岩波新書

2011年05月27日 | 書評
持続可能な社会を作るために必須のツール 第5回

1)日本の環境アセスメント (2)

 1972年のストックホルムにおける国連人間環境会議にあわせて、「各種公共事業に係る環境保全対策について」の閣議了解を行い、ストックホルム会議において大石長官は「環境アセスメントの手法を取り入れる事を宣言した。発足したばかりの環境庁がアセスメントの制度化に取り組んだが、大規模事業を所管する省庁(通産、建設,運輸など)は個別にアセスメントを行なうとして、統一的な法制度化には強く反対した。所轄官庁の権限と権益を守るため審議会などを公開せず、情報公開と住民参加はないがしろにされた。また環境庁の関与は弱く、準備書がアセスメント調査が終ってから発表されるなど問題点が多かった。先進的な地方自治体でアセスメント条例が作られたが要綱どまりの自治が多かった。環境庁は1974年に中公審にアセスメント運用指針をまとめさせアセス法案化に意欲を示した。ところがオイルショックによって経団連を初め産業界の反対が強く、1976年の第1回法案提出は流産した。(事務次官会議は全員一致を原則としていたから) 1981年に都市計画と電力事業などを対象外とする骨抜き法案が6回目の正直でまとまった。それでも1983年には審議未了で廃案となった。1984年閣議決定で大規模事業(電力事業は除く)を対象にアセスメントを行なう事を決定したが、法規制力がなくかつ環境庁官の意見は要請がなければ出せなかった。その結果1999年までの閣議アセスメントの448件のうち環境庁長官のコメントは僅か23件にしか求められていなかった。各省庁の思い通りにアセスメントが行なわれた。これでは全く評価にチェックが入っていないのと同然であった。
(つづく)

筑波子 月次絶句集 「初夏渓行」

2011年05月27日 | 漢詩・自由詩
乱山五月踏青行     乱山五月 青を踏んで行く

花落游魂又一聲     花落ち游魂 又一聲

流水遶渓涼気漲     流水渓を遶りて 涼気漲り
  
蘚苔石瀬緑陰清     蘚苔石瀬 緑陰清し


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(韻:八庚 七言絶句平起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)
(平仄規則は2・4不同、2・6対、1・3・5不論、4字目孤平不許、下三連不許、同字相侵)