ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

東日本大震災と医療問題: 避難所の健康問題

2011年04月16日 | 時事問題
医療に関する提言・レポートfrom MRIC by 医療ガバナンス学会(2011年4月13日) 「気仙沼仮設診療所体験記」 宮坂政紀 都立墨東病院 救急科医師より

 3月25日より災害派遣医療チームDMATに参加して、震災後2週間経ってから気仙沼市に4日間診療業務に携わった。気仙沼では墨東病院の元看護師を中心に4-6人の小さな医療チームが結成されており、そこに参加した。墨東病院から二人の若い医師が加わった。場所は気仙沼市役所の避難所で100名ほどの避難民がおり、外来診療と往診をおこなった。外来は風邪か高血圧などの慢性疾患が中心で、外科患者は少なかった。市役所の職員60人ほどの健康診断も行ったが、発熱者と抑うつ状態の人を発見した。ボランティアに対する地元の人の親切さは身にしみて分ったが、本人は睡眠薬なしでは余震が怖くて寝られない状況であった。医療状況は刻々と変わっているが、重症患者の搬送は終り、米中心の援助物質では栄養状態が懸念され、慢性疾患の薬切れや精神科医の診察が必要とされるが、市役所でも全体像を把握できる人は誰もいなかった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
4月16日午前8時 茨城県空間線量率データ(茨城県放射線テレメータより)
http://www.houshasen-pref-ibaraki.jp/present/result01.html
測定局    NaI線量率nGy/h 風向    風速m/s
日立市大沼     233      西南西   4.6
東海村石神     188      北西     1.7
水戸市吉沢     107      南西    4.9
鉾田市徳宿     157      西南西   4.4
少し下がってきた。(22年度測定値の統計はほぼ30-50nGy/hの範囲にあった。1年間の総量被爆線量は0.43mSv以下であった)


読書ノート 小田部雄次著 「皇 族」 中公新書

2011年04月16日 | 書評
明治以来の皇族の歴史を知ろう 第5回

第1部 明治・大正時代 欽定憲法と皇室典範 立憲君主制時代の皇室 (1)

 戦前には皇族として15宮家があったことを知る人も少なくなっている。当然ながら私も知らなかった。伏見宮、閑院宮、山階宮、北白川宮、梨本宮、久邇宮、賀陽宮、東伏見宮、竹田宮、朝香宮、東久邇宮、桂宮、有栖川宮、華頂宮、小松宮の15家であった。このなかで桂宮と有栖川宮の2家を除いては、13家の始祖は室町南北朝時代に遡る伏見家の流れに属していた。戦後皇室は昭和皇后と皇太后とその実子(明人親王、正仁親王、和子、厚子、貴子内親王)と、昭和天皇の実弟である秩父宮、高松宮、三笠宮の三宮家を残して、伏見宮から東久邇宮の11宮家の皇籍を離脱させた。この伏見宮系皇族は明治維新以来の近代皇族を考える上で重要な存在であった。そもそも皇族とは時代により法令により定義や構成が異なってきた。現在皇族とは「平成天皇」の家族22名を意味する。女子配偶者を皇族とみなすかどうかは近代とそれ以前を別つ大きな指標であった。古代大宝令(701年)が制定される以前には天皇の後胤という漠然とした範囲で把握されていた。大宝令が定まった奈良時代以降明治憲法までの時代(つまり近代以前)は「継嗣令」で皇親の範囲を「5世未満」と明確に規定している。1世の皇子を親王とし、皇孫、皇曾孫、皇玄孫を王とした。賜姓降下、親王宣下、臣籍降下などで、皇族が過剰にならないよう、親王不足にならないよう調整をしてきた。鎌倉時代以降、宮号を賜って代々世襲する「世襲親王家」が誕生した。室町時代に伏見宮が生まれ、安土桃山時代に桂宮、江戸初期に有栖川宮、江戸中期に閑院宮がそれぞれ創設されて四親王家となった。徳川時代の御三家(水戸、尾張、紀伊)とか吉宗以降の新御三卿(一橋、田安、清水)を思い浮かべれば事情はわかる。
(つづく)

読書ノート 吉田武著 「オイラーの贈り物」 東海大出版会

2011年04月16日 | 書評
「博士が愛した数式」オイラーの公式を理解するために 第7回

第1部 基礎理論

 第1部の基礎編では、「パスカルの3角形」で2項定理と数列の面白さを、「方程式と関数」では2次方程式の解と虚数の登場と関数の性質を知るためのグラフの活用を、微分積分の定義と基礎公式を概説する。2,3の初歩的事項をあくまで丁寧に分るように具体的に説明する。これでは本のページ数が多くなるのはやむをえない。専門書のような、理解できない人には大きな壁を感じるような冷たさは無い。素数を求める「エラトステネスの篩」という方法を知った。連続という概念、循環小数を分数で表す方法は面白かった。これはもうビンゴゲームを超えるパズルといってもよい面白さがある。(a+b)のn乗を展開する2項定理の係数が、相異なるn個のものからr個をとる順列組み合わせから求められる。上の二つの項の和であるパスカルの3角形の数列と前の2つの項の和で決まるフィボナッチの数列が、同じ数表の斜め読みでつながっていたのは、確かに当然である。数列が収束する条件と、等比級数、等差級数の和の公式はまさに天才技(奇想天外)である。2次方程式の解法で初めて虚数が登場する。関数とグラフ、微分積分は普通の高校の教科書と同じなので割愛する。又計算機で数値的に方程式の解をもとめるニュートンラプソン法は随分お世話になったので、その重要性はいうまでも無い。そしてこれが√の開法にもなっていたのだ。
(つづく)

筑波子 月次絶句集 「桃杏満開」

2011年04月16日 | 漢詩・自由詩
暖日春風花欲飛     暖日春風 花飛ばんと欲し

杏桃灼灼満林緋     杏桃灼灼と 満林緋なり

徘徊墨水埋吟屐     墨水を徘徊して 吟屐を埋め

登上江楼飃客衣     江楼に登上して 客衣を飃がす


●●○○○●◎
●○●●●○◎
○○●●○○●
○●○○●●◎
(韻:五微 七言絶句仄起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)
(平仄規則は2・4不同、2・6対、1・3・5不論、4字目孤平不許、下三連不許、同字相侵)