ブログ 「ごまめの歯軋り」

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東日本大震災と医療問題: 放射線防塵対策を

2011年04月15日 | 時事問題
医療に関する提言・レポートfrom MRIC by 医療ガバナンス学会(2011年4月13日) 「耳鼻科医として、内部被爆と防塵対策」 山野辺滋晴 共立耳鼻咽喉科(長崎)より

 低線量の外部被爆には原爆放射線量評価体系(DS80,DS02)にそって空間放射線量の積算でリスクが論じられているが、飲食や呼吸による内部被爆の影響については考慮されているとはいいにくい。原子炉建屋の爆発やドライベントによる放射性プルームの放出拡散については行政は風下域への警報を出すべきでしょう。セシウム・プルトニウム・ストロンチウムなどの放射性降下物は風によって運ばれ、地上に落ちてもまた舞い上がることが予想される。したがって原発作業者(自衛隊・東電・消防署・警察・作業下請け企業ら)のみならず、ボランティア・一般市民も粉塵による内部被爆を考慮しなければなりません。とくにストロンチウムは半減期が50年と長く、カルシウムとともに骨に取り込まれると造血細胞を侵して白血病の原因となる。鼻咽喉粘膜に付着し嚥下されて体内に取り込まれるので、関係者の放射線防護マスクや防塵マスクの着用は必須となる。密閉型N99マスクは漏れが少ないといわれている。マスクは使い捨て、作業衣服も脱ぎ捨て、手洗いを厳守されるようお願いしたい。

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4月15日午前8時 茨城県空間線量率データ(茨城県放射線テレメータより)
http://www.houshasen-pref-ibaraki.jp/present/result01.html
測定局    NaI線量率nGy/h  風向    風速m/s
日立市大沼     264      南西    2.7
東海村石神     194      西     1.5
水戸市吉沢     112      南西    1.1
鉾田市徳宿     162      西南西   2.6
殆ど変化は無い。(22年度測定値の統計はほぼ30-50nGy/hの範囲にあった。1年間の総量被爆線量は0.43mSv以下であった)


読書ノート 小田部雄次著 「皇 族」 中公新書

2011年04月15日 | 書評
明治以来の皇族の歴史を知ろう 第4回

 古代より天皇の血族として存在した皇族、近親結婚を繰り返して支配者の血を誇る一族、明治維新後最も近親で天皇を支える階級として、軍人の義務と多くの特典を享受した一族である。本書は近代以降成立した15宮家、皇族軍人を中心に戦前の歴史を総括し、新たな位置づけを模索した戦後の「皇室」の全貌を見て行こうというとする。本書は新書版としては400頁を超える厚い本となっている。資料を豊富にいれているので厚くなってしまったのであるが、その内容は必ずしも的を得ているとか真実に逼るとかいうような史書では無い気がする。戦争と天皇をめぐる史実という点では、細川日記、牧野伸顕文書、原敬日記、木戸幸一日記、入江相政日記、西園寺公一や近衛文麿の文書など第1級資料の重要性には較べることは出来ない。しかし歴史に書かれることが少なかった皇族を書いた点でその功績は大きいのではないだろうか。

 著者小田部雄次氏のプロフィールも簡単である。1952年生まれ、1985年立教大学文学部卒業で、現在は静岡福祉大学教授、専攻は日本近現代史であるという。本書あとがきから本書が生まれたいきさつを記そう。昭和天皇の病状が悪化した1988年、共同通信社に「昭和天皇班」が組織され、筆者が「美貌の皇族」として知られる梨本宮伊都子の日記の全文解読を任されたことから始まった。旧皇族の梨本徳彦氏を度々訪問することから、筆者は皇室研究者になっていったという。その中で旧皇族や法制度の調査も始まり、近代上流階級の華族をまとめた「華族」(中公新書)、「皇室辞典」などの編集にたずさわった。主な著書には、「梨本伊都子の日記」(小学館 1991年)、「ミカドと女官」(恒文社 2001年)、「雅子妃とミカドの世界」(小学館 2001年)、「四代の天皇と女性たち」(文春新書 2002年)、「家宝の行方」(小学館 2004年)、「華族」(中公新書 2006年)、「華族家の女性たち」(小学館 2007年)、「李万子」(ミネルヴァ書房 2007年)、「天皇・皇室を知る辞典」(東京堂出版 2007年)、「皇族に嫁いだ女性たち」(角川選書 2009年)などである。

著者自身が述べる本書の特徴は次の3点である。
① 維新後の皇族の特徴を明確にする前提として、古代から現代までの皇族を総覧した。
② 天皇と皇族の確執を描いた点である。昭和天皇と参謀総長閑院宮戴仁親王、軍令部長伏見宮博恭王の三巨頭体制の齟齬。
③ 戦後和解の問題で、昭和天皇と高松宮との亀裂は明白である。戦後和解は現在の皇室に綿々と受け継がれている。
皇族という「美称」を一方的に崇め奉るのではなく、過去にどのような皇族が存在し、どのような行動をとったかぐらいは知っておきたいという意図で本書が書かれている。
(つづく)

読書ノート 吉田武著 「オイラーの贈り物」 東海大出版会

2011年04月15日 | 書評
「博士が愛した数式」オイラーの公式を理解するために 第6回

 著者吉田武氏のプロフィールを紹介する。といっても吉田武氏に関する記事はなかなか見つからない。本書の末尾には「京都大学工学博士(数理工学)」」と書いてあるだけで、わかっていることは著者は京都大学教授であることだけである。経歴や業績の詮索はやめて、著書だけを紹介したい。稀に見る分厚い本を好んで書くユニークな先生で、本の読者は中学生を対象とすることが多いのが特徴である。しかしこんな難しい数学の本を並の中学生が理解できるとは思えないので、中学生でも理解できるように書いたという著者の試みは良しとしておこう。そして私の頭も中学生並みである事を白状しておこう。著者はかって「専門書の文庫化」ということを試みられたそうである。私は見たことが無いので、あまり普及しなかったようだが。
1999年 「ケプラーー天空の旋律」 (共立出版)
2000年 「マックスウエルー場と粒子の舞踏」 (共立出版)
2000年 「虚数の情緒ー中学生からの全方位独学法」 (東海大学出版会)
2002年 「はじめまして数学1、2、3」 (幻冬社)
2002年 「あの無限、この無限、どの無限?」 (日本経済新聞社)
2003年 「ノーベル物理学劇場ー仁科から小柴までー中学生の素粒子の世界」 (東海大出版会)
2005年 「私の速水御舟ー中学生からの日本画鑑賞」 (東海大出版会)
2006年 「はやぶさー不死身の探査機と宇宙研の物語」 (幻冬社)
2010年 「オイラーの贈り物ー人類の至宝eiπ=1を学ぶ」 (東海大出版会)
である。「虚数の情緒」については松岡正剛氏の「千夜千冊」に評論が出ているの、参考までに挙げる。
(つづく)

筑波子 月次絶句集 「雨余湖浜」

2011年04月15日 | 漢詩・自由詩
湖南水暖碧江浜     湖南水暖む 碧江の浜

橋北雨余垂釣綸     橋北雨余 釣綸を垂る

桃李夭夭千樹発     桃李夭夭 千樹発し
 
柳楊細細満條新     柳楊細細 満條新たなり


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(韻:十一真 七言絶句平起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)
(平仄規則は2・4不同、2・6対、1・3・5不論、4字目孤平不許、下三連不許、同字相侵)

CD 今日の一枚 サラサーテ 「カルメン幻想曲」ほか

2011年04月15日 | 音楽
①サラサーテ「カルメン幻想曲」作品25 ②サンサーンス「ハバネラ」作品83 
③ショーソン「詩曲」作品25 ④ラベル「ツィガーヌ」
⑤サンサーンス「序曲とロンド・カプリチオーソ」作品28
ヴァイオリン:イツァーク・パールマン
ズビン・メータ指揮 ニューヨークフィルハーモニー
DDD 1986 ドイチェ・グラモフォン