医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

原発事故で福島県はGale教授の進言を受け入れなかった

2021年03月30日 | 
上の図は2011年9月2日の科学雑誌「ネイチャー」に掲載された、福島とチェルノブイリを同一の縮尺で比較した放射線量の図です。しかも、チェルノブイリの方は事故から10年後の1996年のデータ、福島の方は事故から数ヶ月後のデータです。福島の事故はチェルノブイリと比べて非常に小さいことが分かります。それにチェルノブイリで小児ガンが増えたほとんどの原因は、しばらく政府が事故を隠し、被曝した草を食べたウシの牛乳から内部被曝したものです。福島の場合、水素爆発を私たちはリアルタイムで目の当たりにしましたし、住民はすぐに避難しました。避難の時に爆発を知らずに公園で1日遊んでいた子供などいません。

2012年末、日本小児血液・ガン学会が開かれ、基調講演で、1986年に起こったチェルノブイリ原発事故直後から現地に赴き被ばく者の治療に従事し、福島原発事故の際はデータを収集しアドバイスを行うことで日本政府に協力してきたイギリス、インペリアル・カレッジの実験医学部門血液学科 Gale教授の講演がありました。

後述するように福島の事故の規模はチェルノブイリの10分の1ぐらいで、しかもチェルノブイリでは対応の遅れで子供たちが放射性ヨウ素に汚染されたミルクを急性期に大量に摂取して甲状腺ガンになりました。以前、「チェルノブイリ原発事故後のガンの発症」でお伝えしたように、あのチェルノブイリでガンの発症が増えてくるのは事故後約3年目からです。なぜ「日本チェルノブイリ連帯基金」はこのように早い時期に甲状腺の検査をしたのか、仮に機能障害の発見だけを目的にしていたとしても、予後良好の機能障害をそれほど早期に発見する必要性は何だったのかがわかりません。

さて、私は以前から以下のように、客観的データに基づいて多くのエビデンスをご紹介してきました。

航空会社の乗務員は合計25 mSv以上余分に被ばくしても死亡率も発ガン率も上昇しない

被ばくした親から産まれる子供のガン発症率は上昇しない

慢性被ばくでガンの発症が減る(その1)

慢性被ばくでガンの発症が減る(その2)

慢性被ばくでガンの発症が減る(その3)

子供の被ばくは年間1mSv以下でなければならない あいまいな根拠

被ばく1mSv/年以下でなければならない あいまいな根拠(その2)

被曝で他のガンは増えない、白血病は100ミリシーベルトで約1.2倍

子どもの甲状腺「福島、他県と同様」 環境省が検査結果

さて、前述のGale教授は2012年、現時点までのデータを客観的に分析し、非常に科学的な講演をされ私も100%同感だとお伝えしました。

その講演の要旨(1)~(8)をお伝えします。

(1)大気中に放出された放射性ヨードは、チェルノブイリで1,800ペタベクレル、福島で150ペタベクレルと、福島はチェルノブイリの12分の1であった。

(2)大気中に放出されたセシウムは、チェルノブイリで80ペタベクレル、福島で13ペタベクレルと、福島はチェルノブイリの6分の1であった。

(3)しかも、福島の場合、それらの多くが北西の沖に流され、海洋で薄められた。

(4)チェルノブイリでは福島と違って、事故後の対策の遅れから放射性ヨウ素に汚染されたミルクを大量に摂取した子供が多かった。これがチェルノブイリでの小児における甲状腺ガンの原因である。

(5)内陸に位置するチェルノブイリは、ヨード欠乏地域であり放射性ヨウ素による被害が大きいのに対して、日本は海洋に囲まれた高ヨード摂取地域である。

(6)暫定基準値とされているセシウム500Bq/kgを含む米を毎日0.5kg,、1年間食べ続けても、米国コロラド州デンバーに4ヶ月滞在したときの被ばく量と変わらない。福島原発事故による健康被害はあってもごくわずかである。

(7)不十分な理解によるリスクの過大解釈により、社会的・経済的な影響が大きくなることを防ぐために、小児の血液内科医や腫瘍内科医は、国民に被ばくリスクの正しいデータを伝える必要がある。

(8)私見として、小児に対する甲状腺ガンのスクリーニングは不要と考える。理由は、上述のようにチェルノブイリに比較してリスクが非常に低いこと、一般的に予後良好で進行がきわめて緩徐な甲状腺ガンを早期に検出することが予後を改善するというデータはなく、精神的なダメージやむしろ無用な医療被ばくの影響の懸念があるためである。

Gale先生、非常に冷静で素晴らしいです。

あれから10年、当時のGale教授の進言が全く正しかったのが証明されました。

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「日本チェルノブイリ連帯基金」の見解が誤っていた理由

2021年03月11日 | 
福島原発事故から10年経過しました。
現在、福島県では当時小中学生の全員に行った甲状腺エコー検査のために、ガン細胞ではあるけれど寿命に全く影響しない「潜在ガン」を見つけてしまい、手術になって多くの小中学生が苦悩を抱えています。従来、甲状腺ガンのほとんどは進行が極めて遅く、大きくなってから見つかり、そこで手術するかどうか決めても問題はないのです。

全員検査の問題点にいち早く気づき、全員検査を中止することを主張した福島県立医大のある医者は、全員検査の中止を委員会に訴えたのですが受け入れられず退職しました。その医者は自ら何万人という子供の甲状腺エコー検査を行い、その中で全員検査したことを大変後悔しているそうです。

全員検査の甲状腺エコー検査で、自分の子供にガン細胞が見つかってしまった母親は、現在大きな苦悩のもとに晒されています。

私は事故が起きた当時、こんな記事を書きました。
「日本チェルノブイリ連帯基金」のコメントの誤り
この記事で、「日本チェルノブイリ連帯基金」は、130人のうち数人の子供の甲状腺ホルモンが基準値から外れ、「色々な意見はあるが、被ばくの可能性は捨てきれないと思う」とコメントしましたが、そもそも「基準値」の定義は「正常な人の95%(100%ではなく)がそこに入る範囲」ですから、数人基準値から外れるのはむしろ正常なこと、とお伝えしました。

正常でも基準値から外れる人は必ず5%います。それが「基準値」の定義だからです。これが「健診で肝臓の数値がひっかかったけれど精密検査しても正常だった」原因の1つです。

あの時、「日本チェルノブイリ連帯基金」の人々は、感情的に「ほらみたことか!」と言いたかったのでしょう。科学・統計学のことなど眼中になかったのかもしれませんね。それが原因の1つで、自分の子供にガン細胞が見つかってしまった母親たちは、今も大きな苦悩のもとに晒されてしまっているのです。

具体的なことは以下の論文に書いてあります。0歳~18歳の子供約36万人を全員検査して、一次期間で116人、二次期間で71人の甲状腺ガンが見つかりました。

通常の場合、小児の甲状腺ガンが見つかるのは100万人に2人です。

Lessons from Fukushima: Latest Findings of Thyroid Cancer After the Fukushima Nuclear Power Plant Accident
Tyroid 2018;28:11-22.


論文の中では、「全員調査の功罪は他の地域と比べなければわからない、今後の検討を要する」とお茶を濁していますが、全員調査が良くないことがわかってきた現在、被災地域以外で子供の全員調査をしてくれる地域など、あるはずがありません。そういえば以前、福島の子供の甲状腺がんがやはり多いと騒いでいた岡山大学の教授がいたので、岡山県で全員調査をやってもらいましょうか。

岡山県、ちょうどいいと思います。岡山県の0歳~18歳の子供全員に甲状腺エコー検査を2年に1回やって下さい。お願いします。

福島原発事故から10年経過したシリーズ、これからも続きます。

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放射線と発がんに関しての国連の結論

2013年03月27日 | 
私は以前、「日本チェルノブイリ連帯基金」のコメントの誤りをお伝えしましたら、

「放射能の影響ではないとも言い切れませんよね?Unknown さんのいうとおり 口だけ動かすだけの人と 現場で動く人、必要とされているのはどちらでしょう?やらない善意より、やる偽善だと私は思いますよ。ではあなたは ここで批判して それからどうしますか?」

というコメントをいただきました。コメントありがとうございました。

以前の記事は、まとめますと、一つめは「福島の子どもと例えば西日本の子どもを比較しなければ誤った結果を導き出してしまう」
これについては、最近比較した結果が出て、「子どもの甲状腺「福島、他県と同様」 環境省が検査結果」
「環境省は3月8日、長崎や山梨、青森の子ども約4300人を対象に行った甲状腺検査で、6割に袋状の嚢胞(のうほう)やしこりが見つかったと発表した。東京電力福島第一原発事故の被曝(ひばく)の影響を探るために、福島県が進める子どもの甲状腺検査結果と比較するのを目的に調べていた。福島では4割に嚢胞などが見つかっている。」
とお伝えしました。

二つめは「基準値の定義を理解していないと誤った結果を導き出してしまう」です。

従いまして、「混乱を招くので、誤っているなら発表しない方が良い」という趣旨が、私の言葉が足りないために誤解されてしまったのかもしれませんが、いただいた「やらない善意より、やる偽善だと私は思いますよ」という内容のコメントは、もうなんだか支離滅裂で、感情に基づいて治世を行うことの危うさを証明してしまい、逆に私にとって都合のよいコメントになってしまいました。「ではあなたは ここで批判して それからどうしますか?」というコメントに対しては、「私は、何時間も費やしかなり詳しくリサーチをして、正しいことを出来るだけ多くの人に知っていただくということをしています」とお答えしたいのですが・・

さて、気を取り直して、
最近発表された、「放射線と発がんに関しての国連の結論」をお伝えしたいと思います。
これはJames Conca氏により執筆され、「フォーブス」誌に掲載されたもので、日本経済新聞社が翻訳したものです。少し長いですが、大変ためになります。私が先ほどのコメントに関連して、重要と思ったところは太字でハイライトしました。

↓原盤はこちらです。英語で読みたい方はこちらをどうぞ。
http://www.forbes.com/sites/jamesconca/2013/01/11/like-weve-been-saying-radiation-is-not-a-big-deal/

by James Conca, Contributor (c) 2013 Forbes.com LLC All rights reserved
昨年12月、極めて重要な報告書が粛々と発表された。そこに結論として書かれているのは、原子力科学の専門家が長年にわたり主張してきたことだ。つまり、約0.1シーベルト(Sv)=100ミリシーベルトまたは10 rem以下の放射線の被曝(ひばく)は大した問題ではない。

原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)が提出した。低線量の被曝の影響は非常に不確かなものであるため、UNSCEARとしては「低線量の被曝と大人数を掛け合わせて、自然放射線量と同等以下のレベルで漸増的な被曝によって健康被害を受ける人数を推定することは勧めない」と述べている。

報告書により、世界はようやく正気に戻り、人体に害を与えないことに無駄な時間を費やすのをやめ、実際に悪影響を及ぼす問題、そして本当に注意を必要とする人々に目を向けるようになるかもしれない。例えば津波によって引き起こされたインフラや経済への打撃、あるいは福島周辺の真のホットスポットの除染。さらには、人体に影響を与えない程度の放射線量しか浴びていないのに、被曝の恐怖に怯えて暮らし、まさにそうした不安に心身をさいなまれている何万人という日本人をケアするといったことだ。また、日本政府においては真剣に原発再稼働の準備を始めたり、国際原子力機関(IAEA)や米国政府からの改善案に耳を傾けることだ。この報告書によって、低線量の被曝が個人と大規模な集団の健康に及ぼす影響について言えること、言えないことがはっきりするだろう。

自然放射線量が2.5ミリSv(250 ミリrem)から3.5ミリSv(350 ミリrem)に上昇しても、発がん率は上昇せず、認識できるような公衆衛生上の影響は何も起きない。同じように、自然放射線量が2.5ミリSv(250 ミリrem)から1ミリSv( 100 ミリrem)に低下しても発がん率は低下せず、公衆衛生上の問題に一切影響を与えない。

重要なのは、通常の議論は短期間(一度)に強烈な放射線に被曝することを想定しており、同じ量を1年といった長い期間をかけて被曝した場合、影響はさらに小さくなることだ。つまり毎月0.1Sv(10 rem)を被曝すれば影響はあるかもしれないが、年間で同じ0.1Svを受けた場合は、慢性にせよ、急性にせよ認識できるような影響は一切ない。さらにUNSCEARは、一昨年の福島の原発事故による識別可能な人体への影響はなかったとしている。「影響無し」としている。

「しきい値無し直線仮説(Linear Non-Threshold : LNT仮説)」は0.1Sv(10 rem)以下の被曝には当てはまらないが、世界中の自然放射線量はこの範囲にある。0.1Sv(10 rem)以下の被曝に誤ってLNT仮説を当てはめたことによる経済的・心理的負担は、ただでさえストレスを感じていた日本国民には著しく有害で、今後もそれを続けることは犯罪行為といえる。

LNT仮説を要約すると、あらゆる放射線は命にかかわる有害なもので、被曝線量がどれほど低くても人体に有害な影響を与えるとする考え方だ。被曝量が2倍なら発がん率も2倍になる、と。第二次世界大戦後にヘルマン・マラーが提唱し、UNSCEARを含む国際機関が採用したが、その有効性が最も発揮されたのは冷戦中に核兵器実験を中断させるための交渉の切り札として使われたときだ。

当然ながら、年間0.1Sv(年10 rem)以下では被曝量が2倍になっても発がん率は2倍にならない。人体への影響はまったくない。数百万人にのぼる原子力作業従事者を50年にわたって綿密に調査した結果、一般人の平均と比べて被曝量は数倍から10倍だったが、がんによる死亡率は変わらなかった。米国のニューメキシコ州とワイオミング州の人々の年間被曝量はロサンゼルスの住人の2倍だが、発がん率はむしろ低い。LNT仮説が正しければ、こうしたことは起こりえない。

UNSCEARのウォルフガング・ワイス委員長は、事故のあった原発の周辺地域の住民、労働者、子供たちには、放射能による健康への影響は一切観察されていない、と述べている。これは世界保健機関(WHO)や東京大学が既に発表した研究成果とも一致している。原発周辺地域の住人が被曝した放射線量は非常に低く、識別できるような健康被害が生じることはまったく考えられない。

日本政府は様々な失敗を犯したが、福島県で速やかに避難を実施し、汚染された食品や飲料水が消費されるのを正しく防いだ。これは旧ソ連政府が意図的に市民から情報を隠したチェルノブイリ事故とは対照的だ。

ヨウ素の放射性同位体で半減期の短い「ヨウ素131」の食物摂取は、子供や若者の甲状腺で吸収されると甲状腺がんを引き起こすリスクがあることで知られているが、これがチェルノブイリ事故が一般市民に及ぼした唯一の重大な放射線による健康被害だ。旧ソ当局が情報を公開し、迅速に行動していれば、この被害は防げたはずだったが、もちろん彼らは一般大衆のことなど大して気にしていなかったのだ。日本ではこうしたことは起こらない。半減期がわずか8日のヨウ素131は事故後の数カ月で崩壊してしまい、大量に摂取した例は1人も報告されていない。


報告書によると、福島原発では非常事態に対応していた6人の作業員が0.25Sv(25 rem)を超える放射線を浴び、170人が0.1~0.25Sv(10 ~ 25 rem)を被曝した。このうち健康に悪影響が出た者はなく、おそらく今後も影響は出ないだろう。福島原発で亡くなった6人の死因は、がれきに押しつぶされたり、海に流されるといった事故で、放射能とは一切関係なかった。

確かに0.1Sv (10 rem)を超える放射線の被曝は健康に影響を与え、それは統計的に1Sv (100 rem)に達するまで増加する。ただこの比較的高い線量域についても、十分に大きな母集団でない限り、影響は観察しにくい。それほどの規模の放射能事件、すなわち大勢が0.1~1Sv (10 ~100rem)の放射能を浴びたのは、第二次大戦中の原爆投下だけである。

放射線の影響が明らかになりはじめるのは、1Sv (100 rem)以上の高線量を急激に浴びたときだが、そうした状況ですら、考え得る他の要素を排除しない限り、放射能を明白な原因と断定することはできない、とUNSCEARは説く。こうした見方が放射性廃棄物の処分にどれほど重大な意味を持つかは、別の機会に譲ろう。結局のところ、放射能への恐怖ではなく真実にもとづいて行動するように変わらなければ、われわれは日本、ベラルーシ、ウクライナの人々に責務を果たしたことにならないうえ、今後も見当違いのことに時間とカネを費やすことになるだろう。反核運動家や陰謀説が好きな人々は今回の国連の報告書を受け入れないだろうが、彼らはどのみち国連が嫌いなのだ。
by James Conca, Contributor (c) 2013 Forbes.com LLC All rights reserved

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日本小児血液・ガン学会 福島原発事故について

2013年02月25日 | 
上の図は2011年9月2日の科学雑誌「ネイチャー」に掲載された、福島とチェルノブイリを同一の縮尺で比較した放射線量の図です。チェルノブイリの方は事故から10年後の1996年のデータ、福島の方は事故から数ヶ月後のデータです。

昨年末、日本小児血液・ガン学会が開かれ、基調講演で、1986年に起こったチェルノブイリ原発事故直後から現地に赴き被ばく者の治療に従事し、福島原発事故の際はデータを収集しアドバイスを行うことで日本政府に協力してきたイギリス、インペリアル・カレッジの実験医学部門血液学科 Gale教授の講演がありました。

以前、「日本チェルノブイリ連帯基金のコメントの誤り」をお伝えしましたら、

「私は素人ですが、ちょっと言いたい!
放射能の影響です、と言い切ったわけではありませんし、事故から4~5ヶ月の緊急検査で被曝のない地方の子どもたちと比較してから言えというのは、ただ批判したいだけとしか思えません。口先だけ言ってる人と動いている人とどちらがすばらしいか一目瞭然ですね。
お金が有り余ってると思ってる政府とは違う。
あなたの人間性を疑う。」

というコメントをいただきました。コメントありがとうございました。

私の「誤っているなら発表しない方がよい」という趣旨が、私の言葉が足りないために誤解されてしまったのかもしれませんが、いただいた「行動しているなら、コントロール群と比較せず誤った分析をしても許される」という内容のコメントは、感情に基づいて治世を行うことの危うさを証明してしまい、逆に私にとって都合のよいコメントになってしまいました。また、不都合なことを否定する時のコメントは感情的になってしまうという例にもなりました。

後述するように福島の事故の規模はチェルノブイリの10分の1ぐらいで、しかもチェルノブイリでは対応の遅れで子供たちが放射性ヨウ素に汚染されたミルクを急性期に大量に摂取して甲状腺ガンになりました。以前、「チェルノブイリ原発事故後のガンの発症」でお伝えしたように、あのチェルノブイリでガンの発症が増えてくるのは事故後約3年目からです。なぜ「日本チェルノブイリ連帯基金」はこのように早い時期に甲状腺の検査をしたのか、仮に機能障害の発見だけを目的にしていたとしても、予後良好の機能障害をそれほど早期に発見する必要性は何だったのかがわかりません。

さて、私は以前から以下のように、客観的データに基づいて多くのエビデンスをご紹介してきました。

航空会社の乗務員は合計25 mSv以上余分に被ばくしても死亡率も発ガン率も上昇しない

被ばくした親から産まれる子供のガン発症率は上昇しない

慢性被ばくでガンの発症が減る(その1)

慢性被ばくでガンの発症が減る(その2)

慢性被ばくでガンの発症が減る(その3)

子供の被ばくは年間1mSv以下でなければならない あいまいな根拠

被ばく1mSv/年以下でなければならない あいまいな根拠(その2)

被曝で他のガンは増えない、白血病は100ミリシーベルトで約1.2倍

さて、前述のGale教授は現時点までのデータを客観的に分析し、非常に科学的な講演をされました
その講演の要旨(1)~(8)をお伝えします。

(1)大気中に放出された放射性ヨードは、チェルノブイリで1,800ペタベクレル、福島で150ペタベクレルと、福島はチェルノブイリの12分の1であった。

(2)大気中に放出されたセシウムは、チェルノブイリで80ペタベクレル、福島で13ペタベクレルと、福島はチェルノブイリの6分の1であった。

(3)しかも、福島の場合、それらの多くが北西の沖に流され、海洋で薄められた。

(4)チェルノブイリでは福島と違って、事故後の対策の遅れから放射性ヨウ素に汚染されたミルクを大量に摂取した子供が多かった。これがチェルノブイリでの小児における甲状腺ガンの原因である。

(5)内陸に位置するチェルノブイリは、ヨード欠乏地域であり放射性ヨウ素による被害が大きいのに対して、日本は海洋に囲まれた高ヨード摂取地域である。

(6)暫定基準値とされているセシウム500Bq/kgを含む米を毎日0.5kg,、1年間食べ続けても、米国コロラド州デンバーに4ヶ月滞在したときの被ばく量と変わらない。福島原発事故による健康被害はあってもごくわずかである。

(7)不十分な理解によるリスクの過大解釈により、社会的・経済的な影響が大きくなることを防ぐために、小児の血液内科医や腫瘍内科医は、国民に被ばくリスクの正しいデータを伝える必要がある。

(8)私見として、小児に対する甲状腺ガンのスクリーニングは不要と考える。理由は、上述のようにチェルノブイリに比較してリスクが非常に低いこと、一般的に予後良好で進行がきわめて緩徐な甲状腺ガンを早期に検出することが予後を改善するというデータはなく、精神的なダメージやむしろ無用な医療被ばくの影響の懸念があるためである。

Gale先生、非常に冷静で素晴らしいです。

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CT検査施行率が15年間で3倍になっている

2012年09月02日 | 
久しぶりの医療情報です。そういえば最近、「雑感」ばかりでした。申し訳ありませんでした。

Use of Diagnostic Imaging Studies and Associated Radiation Exposure for Patients Enrolled in Large Integrated Health Care Systems, 1996-2010
JAMA. 2012;307:2400
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)

1996年から2010年までに、CT検査とそれによる被ばくがどれだけ増えたかが調査された結果が今年6月に発表されています。

CT検査による被ばくは、CT検査を受けた患者の上位1%では上左図のように生涯被ばく量が100ミリ・シーベルトぐらいに達しています。これは被ばくにより健康被害が出ると考えられる値です。右上図は上位10%の患者の被ばく量ですが、約20ミリ・シーベルトぐらいに達しています。折れ線が5つあるのは全米の5箇所で調査された結果という意味だそうです。

下左図が示しているのは、各年齢別のCT検査の件数です。1つの棒は1996年から2010年での10年単位を表しています。単位は1000人当たりの件数です。75~84歳の場合、1996年には1000人当たり200件だったのが、2010年には500件に増えています。この年齢の患者の2人に1人がCT検査を受けたということを意味します。

年齢が低いとさすがに被ばくのことが考慮され、件数は低いです。

この論文の著者たちは、その原因として、
1、画像装置の進歩
2、訴訟に対する防御的行為
3、患者の希望
を挙げています。

確かに1996年頃は、1件のCT検査に30分ぐらいかかり、緊急でCT検査をオーダーしようとすると放射線技師の先生方から嫌がられたものですが、今では5分で簡単に撮れてしまいます。

そして、もう一つの訴訟を避けるという意味ですが、教師であった親が自分の子供の監督不行届を特別に恥と考え、医者の責任だと転嫁しようとした「割りばし事件」

総論 vs 各論では議論ができない

のようなことに巻き込まれたくないという医者の考えがあります。私自身もこの理由でのCT検査の施行率はかなり増えました。たとえ最終的には裁判で勝訴しても、裁判に費やされる時間の浪費分は戻ってこないからです。

原発事故で、「子供には10ミリ・シーベルトでなくて1ミリ・シーベルトでなければいけないんです」

子供の被ばくは年間1mSv以下でなければならない あいまいな根拠

とえ~~んと泣いてしまった東大の教授の行為は非科学的ですが、CT検査はそれよりも桁違いの被ばくであることは、意外と知られていません。

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航空会社の乗務員は合計25 mSv以上余分に被ばくしても死亡率も発ガン率も上昇しない

2012年06月25日 | 
以前から、慢性低線量被ばく(100mSv以下)で死亡やガンの発症が上昇するという研究結果はほとんどないことをお伝えしていますが、今月、ドイツの航空会社の乗務員も同様であるという研究報告がなされましたので、お伝えします。


Cosmic radiation and mortality from cancer among male German airline pilots: extended cohort follow-up
Eur J Epidemiol 2012 Jun 8
(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★★★★★)

ドイツの航空会社の乗務員は陸上にいる時に受ける自然被ばく以外に、年間平均2.3mSvの被ばくを余分に受けています。この研究では6,000人の乗務員の死亡や原因が1960年から2004年まで調査され、年齢や環境を一致させた一般の人々と比較されました。

調査中に死亡したのは405人で、そのうち127人がガンによるものでした。全体の死亡率は、パイロットなどが厳格な日常生活を強いられているためもあり、一般の人々よりも低下していました。

個々の結果は、上の図のSMR (Standardized Mortality Rate) 標準化死亡率のところに示されています。全ての死亡率は、被ばくしていない職員で0.45倍、すなわち一般の人々よりも55%も低いです。

さて、被ばくしている職員ですが、被ばく量が0~4.9、5~14.9、15~24.9、25mSv以上と上昇しても標準化死亡率は上昇していませんでした。

そればかりか、5~14.9mSvと25mSv以上被ばくしている職員で有意に発ガン率は低下していました。

やはり、慢性低線量被ばくでは発ガン率は上昇しませんね
残念でした、武田邦彦さん!


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「日本チェルノブイリ連帯基金」のコメントの誤り

2011年12月04日 | 
以前、「日本チェルノブイリ連帯基金」の鎌田実理事長(諏訪中央病院名誉院長)が報道陣に「色々意見はあるが、被ばくの可能性は捨てきれないと思う」などと発言し、マスゴミが「甲状腺機能に変化」などと見出しに付けて報じ、あたかも原発が原因で甲状腺に異常が生じたかのような不安が広がったことをお伝えしました。

誤っている「日本チェルノブイリ連帯基金」の見解

130人の子どもたちの血液検査でどんな結果が出たかというと、
(1)1人の甲状腺ホルモン(遊離サイロキシン)が基準値を下回った。
(2)7人の甲状腺刺激ホルモンが基準値を上回った。
(3)2人は、甲状腺ホルモンの合成に必要なタンパク質「サイログロブリン」が基準値を上回った。
ですが、

今回は、そもそも基準値はどのように定められているかということをお伝えしたいと思います。

十分多くの人々の身長や体重をヒストグラムで表すと、上の図のように正規分布になります。健康な人のほとんどの血液検査値も同様にこのような分布になります。

基準値は健康な人の検査値がこのように分布する時、平均値を挟んで95%の人が示す値の範囲と定められます。上の図で赤線で示した内側の部分です。横軸の数値は標準偏差と呼ばれるばらつきの程度を表すもので、95%が入る範囲は標準偏差の1.96倍の範囲になります。

このように血液検査の基準値は、健康な人の95%がその範囲に入る値ですから、健康な人でも2.5%の人は基準値を下回り、2.5%の人は基準値を上回ることになります。

この「基準値」は「正常値」などと呼ばれることが多いのですが、「正常値」と呼ぶのは、厳密には間違いであることがお分かりいただけたのではないかと思います。


さて、130人の2.5%は約3人です。
(1)1人の甲状腺ホルモン(遊離サイロキシン)が基準値を下回った。
(2)7人の甲状腺刺激ホルモンが基準値を上回った。
(3)2人は、甲状腺ホルモンの合成に必要なタンパク質「サイログロブリン」が基準値を上回った。

ということですが、(1)と(3)は当たり前のことと言えます。(2)は以前お伝えしたように、被ばくしていない子どもたちと比較する必要があります。

「チェルノブイリ連帯基金」のコメントでは、こういう重要な事が考慮されていませんでした。

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病気腎移植、「Science & Technology」

2011年11月17日 | 
学会で発表するために米国オーランドに来ています。「Science & Technology」↑いい響きですねぇ。

ところで皆さんは、先日以下の報道があったのを覚えていますか?

病気腎移植:宇和島徳洲会病院が先進医療に申請
徳洲会グループの宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)などは10月31日、治療のため摘出した腎臓を修復して別の患者に移植する第三者間病気腎(修復腎)移植について、医療保険が一部に適用される「先進医療」として厚生労働省に申請した。会見した同グループの能宗(のうそう)克行事務総長は「修復腎を使えば、救える患者は増える。今後、(全額)保険医療になることを期待している」と述べた。同グループによると、1例400万~500万円(これまでは全額病院側負担)の移植費用が、先進医療に承認されれば、患者負担は約80万円で済むという。同病院は09年12月、慢性的なドナー不足の解消を目指して臨床研究として病気腎移植の1例目を実施し、これまでに第三者間で9例を重ねてきた。先進医療申請は今夏を予定していたが、今年6月に発覚し東京の医師らが逮捕された臓器売買事件で同病院が舞台になったこともあり、申請が遅れていた。会見には移植を受けた宇和島市の主婦、田中早苗さん(64)も出席し、「手術後は一般の人と同じ生活を送れてうれしい。苦しんでいる多くの人が助かってほしい」と訴えた。病気腎移植については、日本移植学会が、移植する腎臓のがん再発について長期的な安全性が確立されていない、などと批判している。
(毎日新聞より引用)

病気腎移植を先進医療に申請 徳洲会「保険適用に」
医療法人「徳洲会」(本部・東京)は10月31日、腎臓がん患者から摘出した腎臓を修復して別の患者に移植する第三者間の病気腎移植について、治療の一部に保険が適用される先進医療として認めるよう、厚生労働省に申請した。徳洲会によると、宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)では2009年12月以降、万波誠医師らの執刀で、国の指針に基づく臨床研究として、親族間でない第三者間の病気腎移植を9例実施。いずれの患者でも、がんの転移は確認されていないという。同会の能宗克行事務総長は「この移植で生活の質が大きく改善し、通常とほとんど変わりなく暮らせるようになった方がいる。一刻も早く保険適用にこぎつけたい」と話した。
(朝日新聞より引用)

私も以前、厚生労働省に先進医療申請をしたことがあるのですが(以前は高度先進医療と称されていました)、なぜそれが先進医療に適するのかという根拠から、価格の設定のために人件費、薬剤費、電気代等、徹底的に調べないといけないなど、とても面倒です。面倒なのは別に構わないのですが、最終的に書類は国会議員が代表を務める個別の委員会にかけられ、その是非が審議されます。ハードルは高いです。

そこで感じるのは、はたして本当に現時点で病気腎移植が、先進医療として認められるのだろうかということです。

病気腎移植は現在、安全性と有効性が臨床研究で調査中のはずです。まだ安全性と有効性が証明されていない段階で(真実性)、先進医療の申請をしているのは、認可されないと知りつつ申請している「確信犯」的「売名行為」ではないかと感じるのです。これは国民の利益・不利益にかかわることなので、とても重要なことです(公共性、公益性)。

朝日新聞の記事を毎日新聞の記事と比べてみると、無作為の前向き試験で安全性や有効性が明らかになっていないのに、「この移植で生活の質が大きく改善し、通常とほとんど変わりなく暮らせるようになった方がいる。一刻も早く保険適用にこぎつけたい」と、まるで、まだ「保険適応」になっていないのが悪いかのような印象を読者が持つように誘導されています。

その点毎日新聞は、「日本移植学会が、移植する腎臓のがん再発について長期的な安全性が確立されていない、などと批判している。」と数行、反対意見を加えていますが、それでも読者の受ける印象は朝日新聞と同じです。

先進医療と認められることはそれほど易しい事ではありません。この過程は私自身も経験している事です。病気腎移植は今の段階では決して「Science & Technology」に値することではありません。こういうことは、認可された時点で報道するべきことです。

また、却下されたら、「徳洲会、病気腎移植、先進医療申請は却下される。未だ安全性と有効性が不明」と必ずそれを記事にする必要があります。

新聞報道というのは、当たり前のことですが、「仮説」だけというか「私的意見」だけというか、私が今置かれている環境(アメリカの学会に参加してScienceにドップリ漬かっている環境)からみれば、まったく「Science & Technology」でもない、「言った者勝ち」の「稚拙」な世界だと感じます。

繰り返しますが、マスゴミの皆さん、こういう大々的な報道は、先進医療を認可された段階で行ってください。申請をしただけの段階では2~3行の記事でいいです。こういうことは医学論文でいうと、「仮説」を書いたイントロダクションだけで10ページぐらいあるようなもので、論文の審査員から笑われてしまいますよ。

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誤っている「日本チェルノブイリ連帯基金」の見解

2011年11月14日 | 
最近、以前以下の事件がありました。

(J CASTニュースより引用)
長野県松本市のNPO法人「日本チェルノブイリ連帯基金」(JCF、鎌田実理事長)がウェブサイト上に公表している資料によると、長野県茅野市などが2011年7月から8月にかけて、福島の子ども達290組813人を招待。事前アンケートで頭痛や腹痛、鼻血を訴える子どもがいたことから、73家族130人が信大病院の診察を受けた。検査項目は問診、尿検査、血液検査。それ以外にも、甲状腺障害も懸念されていたことから、甲状腺ホルモン検査も行った。

この結果、(1)1人の甲状腺ホルモン(遊離サイロキシン)が基準値を下回った(2)7人の甲状腺刺激ホルモンが基準値を上回った(3)2人は、甲状腺ホルモンの合成に必要なタンパク質「サイログロブリン」が基準値を上回った、ことが明らかになった。

JCFでは、10月初旬になって、この結果を公表。発表では、「原発との関係は分からない」とされたが、JCFの鎌田実理事長(諏訪中央病院名誉院長)が報道陣に「色々意見はあるが、被ばくの可能性は捨てきれないと思う」などと発言したこともあって、各紙は「甲状腺機能に変化」などと見出しに付けて報じた。このことから、あたかも原発が原因で甲状腺に異常が生じたかのような不安が広がっていただが、甲状腺の病気を専門とする医師でつくる日本小児内分泌学会は、10月11日になって、この報道内容に反論する声明を発表した。学会では、信州大学から検査の実際のデータを受け取って検討。その結果、今回の検査結果で基準値から外れた幅は、いずれもわずかなものであり、
「一般的な小児の検査値でもときにみられる範囲」、「これらの検査結果を放射線被ばくと結びつけて考慮すべき積極的な理由はない」
と結論づけている。

個別に見ていくと、甲状腺ホルモンについては(1)基準範囲をわずかに下回っているに過ぎない(2)甲状腺刺激ホルモンには異常がないことから、「臨床的に問題すべき(基準値からの)逸脱として扱うことは適切でない」と判断。甲状腺刺激ホルモンについては、甲状腺に病気を持たない子どもにも見られる程度の逸脱なので「再検査し、他の検査とも合わせて総合的に判断」すべきだとした。サイログロブリンについては、基準値から外れた数値が出た2人は、甲状腺ホルモンと甲状腺刺激ホルモンについては基準値に収まっていることから、「甲状腺機能異常とは言えない」と判断。その上で、「時間をあけて再検査するなどをしないと病的なものかどうかの判断はできない」とした。
(引用ここまで)

NPO法人「日本チェルノブイリ連帯基金」のコメントは、科学的(それは明らかであるという点に関して)に誤りです。

そのように結論づけるなら、例えば西日本の被ばくしていない頭痛や腹痛、鼻血を訴える子どもたちも同人数だけ血液検査をして、それと比較しなければいけません。

今ごろはきっとそうしていると思いますが、公表前の段階でそれを行わず誤った解釈で国民を混乱させてしまったのは「日本チェルノブイリ連帯基金」の科学的リテラシーの欠如だといえます。

一方、日本小児内分泌学会の見解は、科学的であり正しいと言えます。

↓こちらもどうぞ
http://blog.goo.ne.jp/secondopinion/e/63ca20cbfc0193f287c686d437a3751c

http://blog.goo.ne.jp/secondopinion/e/82a60ae8683827e33109490b6376edf2

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被ばく1mSv/年以下でなければならない あいまいな根拠(その2)

2011年11月11日 | 
以前、被ばく量が1mSv/年以下でなければならない根拠が、とてもあいまいだということをお伝えしました。

今回はその根拠の2つめです。これもとてもあいまい、というか私には理解できません。感情論的な「原発・放射能 子どもが危ない」に書かれてあることですが、国民の利益(公益性と公共性)と、真実は一体なにか(真実性)ということに関わることですから、あえてそのまま引用いたします。


「このグラフは、同じだけの放射能を浴びたときに癌で死ぬ人数を年齢別に表したものです。ひと目見ただけでわかっていただけると思うのですが、たとえば0歳児は、全年齢の平均の3~4倍、大人だけとくらべれば4~5倍も危険性が高いわけです。10歳の子供でもかなり高い。15歳を超えると、ようやく平均値に近づいてきます。逆に、45歳、50歳以上の人は子どもにくらべれば影響はとても少なくてすみます。また「1万人・Sv」というのは、もしも1万人が1Svずつ被曝したらということですが、全員で1万人なのにグラフの中にそれを超える人数があるのはおかしい、と思うかもしれません。これは多くの人が被曝した場合の影響を表すための方法で、人数 x 被曝量の合計が1万シーベルトであれば10万人が100ミリシーベルトずつ被曝した場合でも、100万人が10ミリシーベルトずつ被曝した場合でも結果は同じになるということです。また、1万人が1シーベルト被曝すると癌で死ぬ人の数が3731人、ということから、1万人が1ミリシーベルトずつ被曝した場合も計算することができます。1ミリシーベルト=1000分の1シーベルトですから、約4人ということになります。もちろん被曝をしなくても癌で死ぬことは大勢います。しかし、この4人は、本来なら死ななくても良かった人たちなのです。文部科学省は福島県の子どもたちを年間20ミリシーベルトまでなら被曝させてもいいと、言い続けました。福島県の人口は約200万人ですから、そこで、もし全員が20ミリシーベルトずつ被曝したとするとグラフの数字は4倍になります。本来であれば年齢構成比を計算に入れなければなりませんが、単純に全年齢の平均値で計算すると、3731x4=1万5000人が癌で亡くなることになり、中でも赤ちゃんや小さい子どもの犠牲者が最も高くなるのです。」

この内容が論文にされたとして、私がこの論文の審査員だったらコメントすることをまとめたいと思います。

「もしも1万人が1Svずつ被曝したらということですが、全員で1万人なのにグラフの中にそれを超える人数があるのはおかしい、と思うかもしれません」
→はい、そのとおりおかしいです。全員で1万人なのにそれを超える人数があるのは机上の空論だからです。

「1万人が1シーベルト被曝すると癌で死ぬ人の数が3731人、ということから、1万人が1ミリシーベルトずつ被曝した場合も計算することができます。1ミリシーベルト=1000分の1シーベルトですから、約4人ということになります」
→おいおい、ちょっと待ってくれ、これはGoffmanの仮説だけれど、それでは1万人がユンケル黄帝液を30mL飲んで1000人が元気になったら、10万人が3mL飲んでも1000人が元気になるのか?100万人がユンケル黄帝液を0.3mL飲んだら同じように1000人が元気になるのか?1000万人が0.03mL飲んだら1000人が元気になるのか?あくまでもユンケル黄帝液は30mL飲んでナンボ。まったく科学でない。

「1万人が1シーベルト被曝すると癌で死ぬ人の数が3731人」
→アホか!まず、被曝していない1万人では癌で死ぬ人は何人か調べ、それと比べる必要がある。

「1万人が1シーベルト被曝すると癌で死ぬ人の数が3731人、ということから、1万人が1ミリシーベルトずつ被曝した場合も計算することができます。1ミリシーベルト=1000分の1シーベルトですから、約4人ということになります」
→でました、1000倍の点とゼロ点を結んで、1倍の時を推測する馬鹿げた理論。

長年私のブログをご覧頂いている方には、その下のセンテンスも、つっこみ所満載であることがお分かりいただけると思います。

こんな理論で、「被ばく量は1mSv/年以下でなければならない」と言われているのなら、まったく話になりません。

それに、これはまだ「仮説」です。「仮説」は「科学」ではありません。それを「信じる」という段階はまだ「科学」ではありません。「科学」は真実なのですから「信じる」必要はなく「事実」だからです。この場合、この「仮説」を「信じて」話をしているわけですから、まったく「科学」ではないわけです。


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被曝で他のガンは増えない、白血病は100ミリシーベルトで約1.2倍

2011年10月31日 | 
以前、「慢性被ばくでガンの発症が減る」の中で、誤ってコバルト60が混入した鉄筋を使って建てられたアパートの住民およそ1万人の人々が、これらの建物に9~20年間居住し、平均約400mSvの放射線を被曝したが、むしろガンの発症率は減少したことをお伝えしました。

この結果があまりにも衝撃的だったので、その後、被曝量の推定因子を細かくしたりして詳細で綿密な再調査が行われました。

その結果はこのサイトで公表されています。

http://www.denken.or.jp/jp/ldrc/study/topics/cobalt_apartment.html

サイトが変更されてしまうといけないので、内容を引用いたします。

(以下引用)
2004年3月21日から25日に行われた第14回環太平洋国際会議(PBNC)で、台湾の研究者から、誤ってコバルト60が混入した鉄筋を使って建てられたアパートの住民に対する健康影響調査の結果が報告されました。約20年前(1982~1984年)、廃棄されたコバルト60線源が偶然リサイクル鉄鋼に混入し、それが、台北市とその近郊のアパートを含む約1700の建物の鉄筋に使われてしまいました。およそ1万人の人々が、これらの建物に9~20年間居住し、平均約400mSvの放射線を被曝しました。

調査結果によると、アパートの居住者のがん死亡率は、台湾の一般公衆の3パーセントにまで大幅に低下しました。 また、先天性奇形の発生率も、一般人の発生率のおよそ7パーセントに減少しました。この発表は、同会議において大いに議論を呼び、米国エネルギー省(DOE)の仲介でカナダの疫学調査の専門家が研究に加わり、さらに詳しい調査が行われることになりました。

その後2008年に台湾国立陽明大学による詳細な調査の結果が公表されました。まず、一人ひとりの行動パターンから個人線量を求めた結果、平均の被ばく量は約48mGyでした(中央値6.3mGy、最大2,363mGy)。

被ばく量がわかった6,242人の中から、128人が追跡期間(1983~2005年)中にがんと診断されました(台湾の国家がん登録で確認)。性別や年齢を考慮に入れてその放射線による影響を調査した結果、全てのがんの発症についてのリスクの上昇は観察されませんでしたが、以前の報告にあったような減少の傾向も観察されませんでした。さらに個々のがんを詳しく見たところ、白血病で100mGyあたり約1.2倍の有意なリスクの増加が観察されました。女性の乳がんでも有意ではありませんでしたが、100mGyあたり約1.1倍の増加傾向が観察されました。甲状腺がんの増加は観察されませんでした。

現段階ではまだ集団が若く(調査終了時点で平均36±18歳)、がんの症例数が少ないためはっきりした結果は得られていませんが、調査は現在も継続されていることから、今後、低線量・低線量率の放射線影響についての情報源となることが期待されます。(最終更新日:2011年6月8日)
(ここまで引用)

通常の被曝はX線、ガンマ線が主ですのでGy = シーベルトと扱ってかまわないとされています.

以前の報告にあったような減少の傾向も観察されませんでしたが、全てのがんの発症についてのリスクの上昇は観察されませんでした。ただし、白血病は100ミリシーベルトあたり約1.2倍の増加が観察されました。

この調査は調査終了時点で平均36±18歳と比較的若い人を対象としています。平均値と標準偏差から計算すると調査終了時に対象の16%は18歳以下、調査開始時ではそれらのほとんどが小児です。追跡期間も22年間あります。

チェルノブイリの「急性被ばく」で小児の甲状腺癌が増えた場合とは、ちょっと違うことがわかります。

100ミリシーベルト以上では問題があるかもしれないけれど、以前、東大の教授がめそめそと泣いていた、「子供には1ミリシーベルト以下でないといけないんです」という根拠がここでもはっきりしないわけです。

↓さあ、東大教授の皆さん、原発推進派も反対派もこれで一緒に踊りましょう!
原発推進音頭

この調査結果からは、100ミリシーベルト以上の被ばくで白血病や乳ガンに注意しないといけないけれど、他のガンや100ミリシーベルト未満では問題ない」といえます。

http://takedanet.com/2011/10/post_a554.html

武田邦彦氏のブログです。話の骨子は解らなくもないけれど、この考えは「年間1ミリシーベルト被ばくすると1億人のうち5000人が余分にガンを発症すること」が本当に正しい場合ですね。でもそのようなデータは、前回お伝えしたように推論に推論を重ねた論理だけで、それを実際に証明できているデータはありません。


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子供の被ばくは年間1mSv以下でなければならない あいまいな根拠

2011年10月24日 | 
以前、東大の教授が「子供の被ばくは年間1mSv/年以下でないとだめなんです」と泣いていました(泣き虫です)が、既に自然界からの被ばくが約1mSv/年あるのに、なぜ子供には被ばくが年間20mSv以下ではだめで、原発からの被ばくが年間1mSv以下でなければならないか、なぜ泣く必要があるのか、という疑問がどうしても払拭されず、私は原発事故に関する書籍を10冊以上読んでみました。

その中で一番科学的でわかりやすかったのが、「2時間でいまがわかる 放射能の真実!」です。

一方、「原発・放射能 子どもが危ない」はかなり感情論に近い感じでした。子供には1mSv/年以下でなければならない根拠は「国」が法律でそう定めているからという理由らしく、その一方で、国の発表することは信用できないと、全くの論理矛盾でした。「国」が法律で決めた事というなら、妊娠可能な女子の腹部には3カ月で13ミリ・シーベルト以下にしなさい、妊娠中の女子の腹部に対して妊娠と診断された日から出産までの間に対しては10ミリ・シーベルト以下にしなさいと定めた医療法施行規則第30条の27(許容線量)では、年間1mSv以下にしなさいとは定められていません。


「2時間でいまがわかる 放射能の真実!」を読んでわかった「原発からの被ばくが1mSv/年以下でなければならない」という主張の「根拠」をご紹介したいと思います。少し頭を使いますので、落ち着いてお願いします。

(1) 1945年に広島・長崎で1Sv=1000mSv被爆した人の「ガン発症率」は、被爆しなかった人に比較して50%増えた。ただし、このデータでは125mSv以下の被爆量では「ガン発症率」は増えていなかった。
(Preston et al. Rad Res 2003;160:381)

(2) 1000mSvの被爆で50%の増加ということは、100mSvでは5%の増加と推測する。

(3) 日本人の30歳の生涯「ガン死亡率」は20%なので、20%の5%は1%。つまり、100mSvの被ばくで生涯「ガン死亡率」は1%増えると推測する。

(4) 動物実験の結果では、慢性被ばくの場合の発ガン率は急性被ばくの発ガン率の2分の1~10分の1である。安全を考えて高い方の2分の1と仮定する。

(5) 原発事故による住民の被ばくは慢性被ばくであり、(4)により100mSvで1%増加の2分の1、つまり100mSvで0.5%増と推測する。

(6) 100mSvで0.5%%増加なら、1mSvでは0.005%増加、つまり10万人で5人増えると推測する。(この辺りが交通事故で死亡する確率と同等)

(7) 以上により、子供の場合は感受性が高いと推測されるから、被ばくが1mSv/年以下でなければならない。

こんな感じの論理のようですが、以下の疑問が生じるのではないでしょうか。

まずは、わかっている事は(1)だけということ、ここからのみ推測している事実を知って私自身驚きました。図左の丸で囲んだ事のみがわかっているだけなのです。

それに、(1)では「ガン発症率」なのに、いつの間にか(3)で「ガン死亡率」にすり替わっています。

さらに、(1)のデータでは125mSv以下の被爆量では「ガン発症率」は増えていないのです。

この論理の最大の欠点は、前回お伝えしたように、生命科学では2つのパラメーターは必ずしも一次関数の関係があると限りらないということです。(2)で10分の1のことをそのまま直線的に推測し、(6)で100分の1のことを直線的に推測しています。合計1000分の1のことを一次関数的に推測しています。(図左)

「1000倍の点と0点を直線で結び、1倍の時の結論を導き出す」、これはとても乱暴な科学だと思います。

図右をご覧下さい。イチローの年収がいくらなのか詳しくは知りませんが、10億円とします。野球に熱中している私の息子は、イチローの100分の1ぐらいの技量は持っていると思うのですが、それなら1000万円もらえるかということです。

あたりまえのことですが、野球の技量と報酬は一次関数的に比例するはずもなく、ある技量に達してやっと報酬が生まれる。つまり、点線で示された直線ではなく、実線で示された曲線の関係です。

以前、どれだけ運動すれば動脈硬化性疾患を予防できるかという記事の中で、毎日1時間歩くと、心筋梗塞の発症率0.074%を0.047%に、36%減少させるデータを載せました。生命科学を直線的に考えると、毎日2時間歩くと72%、毎日3時間歩くと心筋梗塞は発症しないことになってしまいます。こんな推測が間違いであることは誰にでもわかるはずです。

このような例を挙げればきりがありません。生命科学では2つのパラメーターは必ずしも一次関数の関係があると限りらない。むしろそうでないことの方が多いのです。

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禁煙の広がりとともに肺ガンは減少している

2011年09月28日 | 
最近テレビで(フジテレビではないです)、武田邦彦という人が「喫煙は肺ガンのリスクでない!その証拠に喫煙者は減ったのに肺ガンは減っていない!」と言っていたので、本当かなぁと思い調べてみました。

ちょうど今月米国のCenters for Disease Control and Prevention (CDC)という公的機関が発表したデータがありました。

State-specific trends in lung cancer incidence and smoking --- United States, 1999--2008

左の図は10万人あたりの肺ガンの発症数の推移です。これをみるとこの10年間に女性は微増している地方があるけれど、全体としてはこの10年で肺ガンの発症率は15%ぐらい減少しています。

そもそも喫煙と肺ガン発症の関連は、明日から1年間喫煙するから再来年には肺ガンになるとか、今日から禁煙するからもう肺ガンを発症することはない、という関連ではなく、長年にわたる喫煙の悪影響が肺ガン発症と関連するのですから、最近の喫煙率が減っても肺ガンの発症が減らないからといって、両者は関係ないとは言えないです。

厳密には、こういう1つの因子対1つの因子の比較から結論づけてはいけないのですが、証拠は他にもたくさんありますから、今回はこれぐらいでご容赦願います。

武田邦彦という人、以前、「地球温暖化は二酸化炭素のせいではない!」と言っていた頃は、「この人、なかなかするどいなぁ」と思って見ていたのですが、最近は何か話題作りや売名行為に走りパッとしません。

原発事故による被ばくの件でも、「年間5ミリシーベルトでも労働災害と認められる例があるのですよ。5ミリシーベルトといえばレントゲン写真800枚分ですよ!」と、年間5ミリシーベルトの被ばくはとても危険で福島県の作物など到底食べられないという旨の発言をしていました。

しかし、5ミリシーベルトの被ばくで発ガン率が上昇するというデータはどこにもありません。

医学(科学)では証明できないことは、「そうだ」と言ってはいけないというのが基本で、国の救済では「そうだ」と証明できないことでも、怪しければ救済しようとするから、国が5ミリシーベルトの被ばく者を労災と認めたからといって、それが医学的に5ミリシーベルトはガンを発生させることにはなりませんね。

それに「5ミリシーベルトといえばレントゲン写真800枚分ですよ!」というのも、この人本当に科学している人なのかと思えるような発言です。

「このクリスマスケーキは厚さが5cmあって、画用紙800枚分にも相当する」という場合、①クリスマスケーキが厚い、②そもそも画用紙が薄い ①でも②でもどちらの可能性もあります。それを①と決めつけているわけです。この例ではどちらかというと②でしょう。レントゲン写真の例も、レントゲン写真1枚の被ばくが非常に少ないにすぎません。

この人、頭が切れると思っていたのにガッカリです。


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被ばくした親から産まれる子供のガン発症率は上昇しない

2011年09月07日 | 
テレビでは、福島の子どもたちに「私たちの子供はガンにならないの?」などとコメントさせ、根拠もなく不安を煽っていますが、「それは大丈夫だ」という根拠を1つ紹介したいと思います。

Malignant Tumors during the First 2 Decades of Life in the Offspring of Atomic Bomb Survivors
Am. J. Hum. Genet. 1990; 46:1041.
(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★★★★★)

この研究は広島と長崎で被爆した大人がその後出産した子供のガンの発症率を20年間にわたり調査したものです。被曝量は被爆者の状況によりDS86という計算式で推測されました。そして、被爆していない大人の場合と比較されました。

上の図はこの論文に掲載されているものです。スマートフォンでご覧になっている方には見にくくて申し訳ないですが、そういう方はPCで見直してください。

一番上にあるのは被曝量で、.01-.09 Svは0.01シーベルトから0.09シーベルトということですから、10~90ミリシーベルトということです。それだけ被爆した親から産まれた子供が広島と長崎の合計で10,642人調査されたという意味です。

1.00-2.49 Svすなわち1000ミリシーベルトから2490ミリシーベルト被爆した親が2295人いたりして、福島原発事故での被ばく量とは桁違いに高いです。子供を産んだ後は死亡しているのかもしれません。

下の図は、いろいろなガンの発症数ですが、一番下が合計です。親の被曝量がたとえ1000ミリシーベルトから2490ミリシーベルトであっても、発症数を親の人数で割った発症割合は変わらないという結論の論文です。

子供の被ばくとガンの発症率を調べるには、チェルノブイリか長崎か広島しかなく限定的ですが、福島原発事故程度の被ばくが子供のガンの発症にほとんど影響を与えないという論文は、その他にもたくさんあります。今後折を見てご紹介したいと思います。

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慢性被ばくでガンの発症が減る(その3)

2011年08月26日 | 
被ばくにより発ガン率が減少すること「放射線ホルミシス」を耳にした方は多いと思いますが、そのデータがどの医学雑誌の何ページに記載されているか知っている方は多くないと思いますので、お伝えするシリーズです。

Background radiation and cancer incidence in Kerala, India-Karunagappally Cohort Study.
Nair RRK, Rajan B, Akiba A, et al.
Health Phys 2009;96:55.
(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★★★★★)

この論文は入手するのに苦労しました。

インドのケララ地方は、トリウムという放射性金属を含む鉱石が多く存在し自然界からの被ばくが多いことで有名です。住民は皆、年間平均70ミリシーベルトの被ばくをしています。

この調査は1990年から始められ、173,067人(30~84歳)の住民の被ばく量を訪問による聞き取り調査と住所によって推測し、2005年まで1人につき平均10.5年調査されました。

データは、性別、年齢、教育レベル、職業、タバコの使用(この地方では通常のタバコは高価であまり使用されず、噛みタバコだそうです)の有無により補正されました。

上の表7に示されているように、調査期間の被ばく量合計は0~49ミリシーベルトの年間調査のべ人数211,968人から、500ミリシーベルト以上の6,355人までさまざまでしたが、合計被ばく量が0~49ミリシーベルトの人のガンによる死亡率を1とした場合、500ミリシーベルト以上まで差はなく、被ばくによるガン(白血病の場合も)による死亡のリスクは合計被ばく量500ミリシーベルト以上でも上昇しませんでした。

すでにお気づきのように、以前お伝えした下記の調査では被ばくにより「ガンによる死亡」は減っていましたが、この調査では減っていませんでした。

慢性被ばくでガンの発症が減る(その1)

慢性被ばくでガンの発症が減る(その2)

その理由の1つとして、私個人の推測ですが、インドの医療水準がアメリカや台湾ほど高くないことが挙げられると思います。本当にガンによる死亡なのかが明らかでないケースがあり、その検出力の弱さも、結果に影響したのだと考えられます。この論文では「ガンによる死亡」が調査されていますが、実際は「明らかにガンを原因としない死亡を除く死亡数」と表現したほうが正しいのかもしれません。

いずれにしても、生涯の慢性全身被ばく量が500ミリシーベルトではガンによる死亡は増えないことは明らかです。

従って、成人の場合被ばくが年間5ミリシーベルトだ、10ミリシーベルトだと騒ぐのはあまり的を射ていないと言えます。

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