医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

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動脈硬化性心臓病のリスク計算ツール

2009年01月24日 | 生活習慣病
以前、悪玉コレステロールであるLDLコレステロールの値はどれぐらいでなければいけないかという議論をしましたが、コレステロールの値などにより、今後5年間の動脈硬化性心臓病の発症リスクを計算できるツールが最近発表されましたのでお伝えします。

これまで、このようなツールはあることはあったのですが、コレステロールの悪玉と善玉を別けていない、悪玉コレステロール低下薬(スタチン)を内服している場合のみが評価できるなど問題がありました。

ただし、最初にお断りしておきますが、これはこれまで動脈硬化性心臓病にかかっていない方の最初の発症のリスクを予測するもので、既にかかった方の再発のリスクには適応できません。私の筆が立たないため、時々、私が詳細をわかっていないという前提でコメントをいただく場合がありますので、今回、最初にお断りしておきます。

以下は、正しく考える努力として(それが達成できているとは思いませんが)私が読んできた本の中でお勧めのものです。

「正しく」考える方法

論理学がわかる事典

論理的で正しい日本語を使うための技術とトレーニング

考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則


Practical Risk Prediction Tools for Coronary Heart Disease in Mild to Moderate Hypercholesterolemia in Japan Originated From the MEGA Study Data
Circ J 2008;72:1569.
(インパクトファクター★☆☆☆☆、研究対象人数★★★★★)

この研究は約8,200人の日本人を悪玉コレステロール低下薬(スタチン)の内服群と非内服群に別けて、研究開始時の状態によりその後5年間の動脈硬化性心臓病の発症の有無を追跡調査したもので、それらの結果からリスクが計算されています。

現在の状況で点数を加算して下さい。
①(性別)
女性 0点
男性 7点

②(年齢)
55歳未満   0点
55歳~59歳 2点
60歳~64歳 5点
65歳以上   8点

③(LDLコレステロール(悪玉コレステロール)の値)
140mg/dl未満 0点
140mg/dl以上 2点

④(HDLコレステロール(善玉コレステロール)の値)
60mg/dl以上 0点
60mg/dl未満 6点

⑤(喫煙)
なし 0点
あり 3点

⑥(糖尿病か空腹時の血糖が110mg/dl以上、高血圧の有無)
両方ともなし                                    0点
高血圧(+)、 糖尿病か空腹時の血糖が110mg/dl以上(―)の場合 9点
高血圧(―)、 糖尿病か空腹時の血糖が110mg/dl以上(+)の場合 14点
高血圧(+)、 糖尿病か空腹時の血糖が110mg/dl以上(+)の場合 17点

以上、6カ所の点数を合計してください。

上の図(小さくてすみません)に示されるように、
合計点から、今後5年間にあなたが動脈硬化性心臓病(致死性心筋梗塞・非致死性心筋梗塞・狭心症・動脈硬化性心臓病による突然死・風船治療の対象)になる確率を、スタチンという悪玉コレステロールを低下させる薬を内服しない場合と内服した場合に別けて知ることができます。

        スタチンを内服しない場合   スタチンを内服する場合
10点未満         0.3%         0.2%
10~15点        0.6%         0.4%
16~21点        1.2%         0.9%
22~26点        2.5%         1.8%
27点以上         6.4%         4.5%

いかがでしょうか、いろいろとシミュレーションしていただくとお分かりになると思いますが、日本人でこれまで動脈硬化性心臓病にかかっていない人の最初の発症のリスクは、悪玉コレステロールのレベルよりも、性別や高血圧と糖尿病の有無に大きく左右されています。

また、悪玉コレステロールのレベルよりも善玉コレステロールのレベルの方が重い因子であることも興味深いですし、悪玉コレステロールの境界が100mg/dlとか120mg/dlといった低いレベルではなく140mg/dlであることも興味深いです。

ちなみに私のリスクは、男性であるという7点だけで、スタチンを内服しない場合のリスクは0.3%、内服した場合のリスクは0.2%ですが、私のように高血圧も糖尿病もない中年の場合、仮に悪玉コレステロールが160mg/dlで脂質異常症(140mg/dl以上)と診断され、善玉コレステロールが60mg/dl未満の場合、合計は15点で、スタチンを内服しない場合のリスクは0.6%、内服した場合のリスクは0.4%です。

このことから、たとえ脂質異常症と診断されても、0.2%リスクを下げるのに毎日150円の薬代を支払ってスタチンを内服する必要があるのか?という問題点が浮き彫りになると思います。

製薬会社のコマーシャリズムのために、今の日本ではこのような無益(0.2%とか0.3%の差でも有益であると考える人は別ですが)な処方が増えてきています。

点数の重みを見ていただくとお分かりのように、糖尿病や高血圧があり点数が22点以上の方は、おそらくスタチンの内服は必要になると思います。

私は最近、このツールで求めたリスクを患者さんに提示して、スタチンの内服をするかどうかを患者さん自身に決めていただいています。

是非、このリスク計算ツールを活用しましょう!
原文はこちらからダウンロードできます



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コメント (1)
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