前回、「インフルエンザワクチンはあまり効いていない」で昨年のインフルエンザワクチンが有効であったかどうかの情報をほとんど聞いたことがないから、国や機関は情報を伝えてほしいとお伝えしました。実はこのような調査を行い正確なデータを出すのは難しいという点もあります。
以前、九州大学 廣田良夫先生は、「インフルエンザ疫学研究の原理と方法:特にワクチン有効性の評価との関連で」という論文の中で、以下のように述べています。
自然流行によるウイルス暴露を通じて行われる通常の研究は,以下に示すような問題を常に抱えている。
(1)流行期を的確に予測することが困難
(2)ワクチン株と流行株の抗原性の差
(3)インフルエンザの臨床診断が困難、そのため非インフルエンザによって生ずる結果の希釈
(4)自然感染により既に十分な抗体価を有する者の存在
(5)ワクチン接種で生じた集団免疫により非接種者が受ける間接的効果
(6)接種群と非接種群でのウイルス暴露機会の差
(7)接種者と非接種者との特性の差
(1)と(2)は研究の環境に関わる項目であり、(3)~(7)は研究のデザイン,結果及びその解釈に関わる項目である。特に(3)が疫学研究の妥当性に影響を与える最大の問題点である。また小学校を対象集団とする意義は(4)及び(6)の影響をある程度克服できるところにある。
(以上引用)
感染症のワクチンの効果を現す指標の代表的なものはVE(ワクチン・エフィカシー)で、以下のように計算されます。
VE(%)=(ARU−ARV)÷ARU×100
ARU=attack rate in unvaccinated=ワクチン非接種群における発病率
ARV=attack rate in vaccinated=ワクチン接種群における発病率
しかし、これは薬による治療の効果を現す「相対的効果」と同じで、
ワクチン非接種群100人のうち、その感染症にかかったのが50人
ワクチン接種群100人のうち、その感染症にかかったのが25人
の場合は(50 – 25) ÷ 50 = 0.5で、50%と計算できますが、
ワクチン非接種群100人のうち、その感染症にかかったのが2人
ワクチン接種群100人のうち、その感染症にかかったのが1人
の場合も(2 – 1) ÷ 1 = 0.5で50%と計算されます。
下のケースの場合、あまり有用と感じることはできません。 と予習をしたところで、
国際医学情報センターが発表したデータをご紹介します。アメリカの調査ですので日本にそのまま当てはめることはできないという限界はあります。
MMWR62(7): 119-123
Interim Adjusted Estimates of Seasonal Influenza Vaccine Effectiveness - United States, February 2013
2012年12月3日~2013年1月19日にU.S. Influenza Vaccine Effectiveness(Flu VE)ネットワークに登録された咳を伴う急性呼吸器疾患により医療機関を受診した2,697例(男1,582女1,115)を対象に、A型およびB型インフルエンザウイルス感染症に対するワクチンの有効性(VE)を分析した。ここでは5ヵ所 [シアトル(ワシントン州)、マーシュフィールド(ウィスコンシン州)、アナーバーおよびデトロイト(ミシガン州)、ピッツバーグ(ペンシルバニア州)、テンプル(テキサス州)] のネットワークデータを使用した。2,697例のうちインフルエンザ陽性例(rRT-PCR法)は1,115例(41%)であり、うちワクチン接種例は367例(33%)、インフルエンザ陰性例(1,582例)では793例(50%)であり、全体での接種率は1,160/2,697例(43%)であった。男女別では男性:435/1,092例(40%)、女性:725/1,605例(45%)、年齢別では65歳以上の高齢者にて高かった(205/290例、71%)。インフルエンザAおよびB型ウイルスに対するVE(年齢、地域、人種/民族、健康状態および発症からネットワーク登録までの日数により補正)は全体で56%と算出され、A(H3N2)ウイルス感染例(n=546)におけるVEは47%(95%CI=35-58%)であり、年齢別では6ヵ月~17歳:58%、18~49歳:46%、50~64歳:50%、65歳以上:9%と65歳以上の高齢者にて有意に低値であった。B型ウイルス感染例(n=366)におけるVEは67%(95%CI=51-78%)であり、年齢による有意な相違は認めなかった。以上、インフルエンザA(H3N2)およびインフルエンザBに対するワクチンの有効性は65歳以上の高齢者にてA(H3N2)に対して低く、高齢者ではワクチン接種の有無にかかわらず抗ウイルス薬の投与が推奨される
(国際医学情報センターより引用)
65歳以上のVEはたった9%です。
ここに書いてあることを斜め後ろから解釈すると、健康な高齢者はインフルエンザワクチンの接種よりも、かかったかなと思ったら早めに診察・検査をして、可能性がありそうなら抗インフルエンザウイルス薬を早めに内服する方がいい、という事ですね。
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以前、九州大学 廣田良夫先生は、「インフルエンザ疫学研究の原理と方法:特にワクチン有効性の評価との関連で」という論文の中で、以下のように述べています。
自然流行によるウイルス暴露を通じて行われる通常の研究は,以下に示すような問題を常に抱えている。
(1)流行期を的確に予測することが困難
(2)ワクチン株と流行株の抗原性の差
(3)インフルエンザの臨床診断が困難、そのため非インフルエンザによって生ずる結果の希釈
(4)自然感染により既に十分な抗体価を有する者の存在
(5)ワクチン接種で生じた集団免疫により非接種者が受ける間接的効果
(6)接種群と非接種群でのウイルス暴露機会の差
(7)接種者と非接種者との特性の差
(1)と(2)は研究の環境に関わる項目であり、(3)~(7)は研究のデザイン,結果及びその解釈に関わる項目である。特に(3)が疫学研究の妥当性に影響を与える最大の問題点である。また小学校を対象集団とする意義は(4)及び(6)の影響をある程度克服できるところにある。
(以上引用)
感染症のワクチンの効果を現す指標の代表的なものはVE(ワクチン・エフィカシー)で、以下のように計算されます。
VE(%)=(ARU−ARV)÷ARU×100
ARU=attack rate in unvaccinated=ワクチン非接種群における発病率
ARV=attack rate in vaccinated=ワクチン接種群における発病率
しかし、これは薬による治療の効果を現す「相対的効果」と同じで、
ワクチン非接種群100人のうち、その感染症にかかったのが50人
ワクチン接種群100人のうち、その感染症にかかったのが25人
の場合は(50 – 25) ÷ 50 = 0.5で、50%と計算できますが、
ワクチン非接種群100人のうち、その感染症にかかったのが2人
ワクチン接種群100人のうち、その感染症にかかったのが1人
の場合も(2 – 1) ÷ 1 = 0.5で50%と計算されます。
下のケースの場合、あまり有用と感じることはできません。 と予習をしたところで、
国際医学情報センターが発表したデータをご紹介します。アメリカの調査ですので日本にそのまま当てはめることはできないという限界はあります。
MMWR62(7): 119-123
Interim Adjusted Estimates of Seasonal Influenza Vaccine Effectiveness - United States, February 2013
2012年12月3日~2013年1月19日にU.S. Influenza Vaccine Effectiveness(Flu VE)ネットワークに登録された咳を伴う急性呼吸器疾患により医療機関を受診した2,697例(男1,582女1,115)を対象に、A型およびB型インフルエンザウイルス感染症に対するワクチンの有効性(VE)を分析した。ここでは5ヵ所 [シアトル(ワシントン州)、マーシュフィールド(ウィスコンシン州)、アナーバーおよびデトロイト(ミシガン州)、ピッツバーグ(ペンシルバニア州)、テンプル(テキサス州)] のネットワークデータを使用した。2,697例のうちインフルエンザ陽性例(rRT-PCR法)は1,115例(41%)であり、うちワクチン接種例は367例(33%)、インフルエンザ陰性例(1,582例)では793例(50%)であり、全体での接種率は1,160/2,697例(43%)であった。男女別では男性:435/1,092例(40%)、女性:725/1,605例(45%)、年齢別では65歳以上の高齢者にて高かった(205/290例、71%)。インフルエンザAおよびB型ウイルスに対するVE(年齢、地域、人種/民族、健康状態および発症からネットワーク登録までの日数により補正)は全体で56%と算出され、A(H3N2)ウイルス感染例(n=546)におけるVEは47%(95%CI=35-58%)であり、年齢別では6ヵ月~17歳:58%、18~49歳:46%、50~64歳:50%、65歳以上:9%と65歳以上の高齢者にて有意に低値であった。B型ウイルス感染例(n=366)におけるVEは67%(95%CI=51-78%)であり、年齢による有意な相違は認めなかった。以上、インフルエンザA(H3N2)およびインフルエンザBに対するワクチンの有効性は65歳以上の高齢者にてA(H3N2)に対して低く、高齢者ではワクチン接種の有無にかかわらず抗ウイルス薬の投与が推奨される
(国際医学情報センターより引用)
65歳以上のVEはたった9%です。
ここに書いてあることを斜め後ろから解釈すると、健康な高齢者はインフルエンザワクチンの接種よりも、かかったかなと思ったら早めに診察・検査をして、可能性がありそうなら抗インフルエンザウイルス薬を早めに内服する方がいい、という事ですね。
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